【8】幸せと危険は紙一重? 摩訶不思議。

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 結局、その夜、両親からも説教をされ、風船みたいに膨らんでいた幸せな気持ちが、パチンと弾けた。


 社会人になっても、ちょっと帰宅時間が遅くなっただけで目くじらを立てるんだから、いつまで子供扱いすれば気が済むんだろう。


 一人娘って、やっぱり損だ。


「遅くなる時は事前に電話くらいしなさい。いいわね」


 父だって、深夜ベロベロに酔っ払って帰宅することはあるのに。午後十一時だよ。まだ日にちが変わったわけじゃないのに、説教のお蔭で深夜零時を過ぎ日にちが変わってしまったんだから。


 明日は仕事なのに。

 勘弁して欲しい。


「以後気をつけます。ごめんなさい」


 私が謝ったことで、やっと説教から解放された。


 両親には……

 かめなしさんのように、全てを見抜かれてはいないはず……。


 さすがに気恥ずかしくて、両親と目を合わせることが出来なかった。


 ◇


 翌朝、かめなしさんはまだ不機嫌だった。


『今日は早く帰るんだろうな。帰ったら詳しい話を聞かせてもらうからな』


 詳しい話?

 やだよ。


 かめなしさんに話すことなんてない。


「行ってきます」


『優香、聞いてんのかよ!誰と付き合ってんのか、ちゃんと聞かせろよ!俺がタイマン勝負してやる』


 何がタイマン勝負なのよ。

 かめなしさんも恵太みたいに、猫パンチでしょう。矢吹君に勝てっこないんだから。


 不機嫌なかめなしさんを残し、私はいつものように仕事に出掛けた。


 動物病院に着くとすぐにロッカールームで着替える。肌身離さず身につけて欲しいと矢吹君に言われたサファイヤのリングは、職場には相応しくないのでバッグの中に収めた。


 二階ではすでに動物達の元気な声がする。でもその声は、『ワンワン』『ニャーニャー』ではない。


『優香、おはよ〜』


「おはよう。みんな、元気だった?調子はどう?」


『休日は先生がずっと世話してくれるし、絶好調だぞ!優香も絶好調だな。いい事でもあったのか?』


「うふ、ちょっとね。うふふっ……」


『なんだよ?キモイな』


「……えへへへっ」


 矢吹君との甘い再会を思い出し、顔がデレデレと緩む。


『チョコ、優香が壊れた!』


『うわ、でも俺、今日退院なんだ。豆太、あとは頼んだかんな』


『えー!?僕には無理だよ。一人でニヤニヤ笑ってるし。まじでキモい』


 ミニチュアダックスとチワワが顔を歪め、私を見つめた。

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