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 矢吹君のバスルーム。

 脱衣所からそっと覗く。白いタイルが宝石みたいにピカピカ輝いて綺麗。


 白のタイルに黒いバスタブ。

 一面だけ壁が黒いタイルになっていて、シンプルでかっこいい。


 脱衣所も綺麗に整頓されていて、脱衣用の籐の籠があり、棚には白いバスローブと黒いバスローブ。白いタオルと黒いタオル。


 二着のバスローブ……。

 これはどうとらえたらいいのだろう。


 矢吹君のバスローブを借りるのならわかるけど。明らかにペアだよね。誰かが頻繁にこの浴室を使うのかな。


 服を脱ぎながら、そんなことばかり考えてる私。の私。だけど矢吹君は初めてじゃない。


 シャワーを使ったあと、私はどうすればいいの?


 裸にバスタオル?

 裸にバスローブ?


 裸に……

 裸に…………!?


 うお――……やだ……な。

 死んでもやだ。


 だったら、下着だけ?

 下着だけつけて、リビングに戻るの?

 今日の下着は勝負下着じゃないし。

 それも、絶対にやだ。


 どーしよう!?どーしよう!?


 考えれば考えるほど、どうすればいいのかわからない。


 こんなことになるなら、経験者である美子に手順を教えてもらうべきだった。


 ここから美子に電話する?

 まさかね、そんなことするおバカさんはいない。


 Webで検索?

 ナイナイ、そんなことするおバカさんもいない。


 ――散々悩んだ挙げ句、シャワーのあと、私はまた洋服を着た。


 リビングに戻ると、洋服を着ている私を見て、矢吹君は首を傾げる。


「シャワーの使い方わかんなかった?」


「……ううん、ちゃんとわかったよ」


「もしかして?また服着たの?」


「……うん」


「嘘?バスローブ棚にあっただろ?」


「……それはあったけど」


 もじもじしてる私を見て、矢吹君が優しく抱きしめた。


「どうせ、すぐ脱がすのに」


 鼓膜を揺らす、意地悪な声。

 お風呂で温まった体から、ドワッと汗が噴き出す。


「ベッドで待ってて、シャワー浴びてくるから」


 ――ベッドで待ってて!?


 これもまた、女子には難題だ。


 私、ベッドの上で正座して待っていればいいの?干物みたいに大の字とか?


 それとも、布団の中に入って待ってるべき?


 布団の中で、洋服着てたらおかしいよね?


 それって、今着た洋服を自分で脱ぐの?


 裸でベッド?

 下着でベッド?


 きゃあっ……!?

 や、やだ、やだ。


 どーすればいいのよ!?


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