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獣族軍の兵士を蝋人形に変えられてしまったエジソン大元帥が、このまま黙って引き下がるとは思えなかった。
「ナギ!ナギ起きろ!」
「……タカ、どうしてここに?」
ナギは直ぐさまセガに縋り付く。
「セガ……、大丈夫だよ。僕がこの傷を治してあげる」
「そんなにフラフラで、この傷が治せるわけねぇだろう。これしきの傷で、死んだりしねぇよ。それより、ナギ。こいつらを要塞の牢に閉じ込めるんだ」
「……そうだね。ずっと蝋人形のままではいられない。二十四時間経つと、この魔術は解けてしまうんだ」
ナギは虹色のステッキを大きく回転させる。蝋人形となった兵士達が空中を飛び、次々と牢の中に収容された。
ナギは残った力を振り絞り、セガの傷口に手を翳す。ナギの手のひらから黄金の光が放たれ、大きく裂けていた傷口は閉じ傷痕さえも消えてなくなった。
「……これで……いいよね。ふぅ……」
ナギは再び意識を失い、その場に倒れた。
「ナギ!ナギ!だから、無理するなって言っただろう。しょうがねぇな」
すっかり傷の治ったセガが、ナギを背負った。
「タカ、急いでホワイトメイディ城に戻ろう!」
「わかった!」
俺達は険しい岩山を降りる。
森に辿り着いた俺は、木に繋いでいた馬に跨がる。セガは自分達の馬を探したが、縄を切った形跡があり、馬の姿は忽然と消えていた。
「俺とナギの白馬がいねぇ。エジソン大元帥とレオン大佐に盗まれたんだ。タカ、ナギを連れて先に行け。俺は走って追いかける」
「セガ……!わかった!ナギを連れて先に城に戻る。必ず、迎えに来るからな。森で迷子になるなよ」
「バーカ、誰が迷子になるか」
獣族軍の生き残りが潜んでいるかもしれない森にセガを残し、俺はナギを乗せ馬を走らせた。
どうか……
ギダ殿下とアリシアが無事でありますように。
◇
―ホワイトメイディ城―
城に戻ると、城内からは悲痛な叫びが聞こえた。
手綱を強く引き白馬の歩みを止める。胸騒ぎがし気を失っているナギを揺り起こした。
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