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「彼女に逢いに行くのはやめだ。少し様子を見よう」


「そうだな。獣族の反乱を諫めるには、ナイトの力が必要だ。ギダ殿下とアリシアの婚約が公表されれば、獣族の反乱も収まるかもしれない。どうする?タカ」


「……俺がナイトと逢って話をする。彼女の家に行くのは危険だ。ナイトを呼び出してくれないか」


「ナイトが俺達の呼び出しに素直に応じるかな。とりあえずやってみるよ。王国に獣族の陰謀を伝えなくていいのか?」


「国王やギダ殿下がこのことを知れば、獣族の反乱軍を捕らえ処刑しかねない。そうなれば、ますます獣族は国王に対して不信感と憎しみを募らせるだろう」


「だけどこのまま見逃せば、国王やギダ殿下の命が危ない。人族が獣族の軍に皆殺しにされかねないぞ。ナイトを呼び出したあと、俺が王国に戻り様子を窺う」


「セガ、頼めるか……」


「俺に任せろ。タカよりも腕力には自信があるからな」


 セガの頼もしい言葉に、俺は深く頷いた。


 ◇


 ―二千十七年五月二十五日―


 深夜零時、優香の住む住宅街の小さな公園でナイトを待つ。


 カサカサと草を踏む音がし、ナイトが姿を現した。


『タカ、何の用だ』


「ナイト……。久しぶりだな。お前、まだ猫なのか」


『ああ、お前のせいでな。だが、一生猫でも構わないと思っている。優香と一緒に暮らせるなら、それも本望だ』


「……優香は元気なのか?」


『お前のせいで、優香は傷付いている。本気で愛せないくせに、どうして彼女に近付いた。俺達は住む世界が違うんだ。そんなこともわかんねーのかよ』


「わかってるさ。だから、別れるつもりだった。でも……」


『お前は優香を捨てたんだ。二度と彼女に近付くな』


「ナイト、獣族の軍が反乱を起こすつもりだ。国王とギダ殿下の命を狙っている」


『だからどうした。俺には関係ねぇ』


「ギダ殿下はアリシアと結婚するつもりだ」


『アリシアがギダ殿下と?まさか、アリシアには婚約者がいるんだ』


「……婚約者?」


『獣族軍のエジソン大元帥だ』


「……エジソン大元帥。総司令官か」

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