【6】偽りの婚約……? 摩訶不思議。

貴side ~回想~

32

◇◇


 ―二千十七年五月二十日―


 ―ホワイトメイディ王国―


「……ナギ。ありがとう。セガ、行くぞ!」


「おう!ナギ、地球で待ってるからな!」


 俺達はナギを残し、深い森へと走る。


 森は獣族の領地だが、地球に通じる異次元ポータルが存在している。獣族が周囲にいないことを確認し、異次元ポータルの下に立つ。


「ナギ、大丈夫かな」


「セガ、ナギなら大丈夫さ。エルフ王の王子なんだから」


 俺達は右手を高く上げ、赤く光る指先で円を描く。空中に丸い穴が開き、次の瞬間、地面から体が浮き、俺達は異次元ポータルに吸い込まれた。


 ポータルの中は夜空に星が散りばめられたような、美しい異次元空間が広がっている。


 広い宇宙の中で見つけた……

 運命の人……。


 ――優香……


 待っていてくれ。


 必ず……君に逢いに行くよ。


 ――運命の扉が開き……


 視界に、太陽の光が飛び込む。


 ――これから始まる……


 新たな未来……。


 俺達は背筋を伸ばし、その地を踏みしめた。



 ◇◇


 あの日、俺はすぐに優香に逢いに行くつもりだった。自分の気持ちを伝えることも大事だが、ナイトを説得し王国に戻す。そうすることで、囚われたナギを助けることが出来ると考えたからだ。


 だが、俺達が地球に転移し数分後、背後に凄まじい殺気を感じた。


 全神経を集中し、聴覚を研ぎ澄ませると耳に飛び込んだのは……


『エジソン大元帥だいげんすい。やはりあの異次元ポータルは地球に通じていました。タカ王子とセガ公子を発見、射殺しますか』


『待て。暫く泳がせておけ。我らの敵は、我が王国を支配している国王とギダ殿下。二人の暗殺が先だ。万が一、タカ王子が我らを脅かす存在となったならば、仲間共々拉致し暗殺する』


『畏まりました』


 俺達しか知らない異次元ポータルを、獣族の軍に知られてしまったのだ。


 獣族が……

 国王とギダ殿下の命を狙っている……。


 俺が直ぐさま優香に接触すれば、優香の命をも危険に曝すことになる。


「セガ、聞こえたか」


「ああ、獣族が反乱を起こすらしいな」

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