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 病院のドアが開く。


「おはようございます」


 患者である動物達の飼い主さんに笑顔で挨拶をする。


「おはようございます。比留間様、アダムス君どうされました?」


「おはようございます。今日は予防接種に来ましたのよ」


『ウッス!ねぇちゃん。綺麗な脚してんなぁ~。ゾクゾクするぜ』


 ね……ねぇちゃん!?


 上品な女性に連れられたダルメシアンの姿が、瞬時にヤンキーへと変わる。鋭い目、尖った獣耳。彼は待合室のソファーにふんぞり返り、私を舐め回すように見ている。


 あのダルメシアンが、ヤンキーだったなんて。


 背筋がゾクッとし、思わず目を逸らす。


「おはようございます。足利様、モンローちゃん」


「おはようございます」


『あら、新人さん。おはよう。またミスをしたの?キャットフードをばらまくなんて、お下品ね。やだ、何見てるの。ダーリンに色目使わないでね』


 う、うそっ……!?


 年配の男性に抱かれたペルシャ猫がセクシーな猫目女性へと変わる。色っぽい眼差し、ふくよかな唇。ロングヘアからはクリーム色の耳が飛び出している。


 かめなしさんと異なるのは、みんな顔にも毛が生えていて、動物のマスクを被っているように見える。ていうか、動物の顔をした獣が洋服を身につけ二足歩行していると言った方が正しい。


 その後、次々入ってくる患者(動物達)の声が全部聞こえ、頭の中は許容範囲をオーバーしパニックになった。


「上原さん、フロアの掃除が終わったら、今日は二階の入院室をお願いね」


「……は、はい」


 越谷婦長に指示され、慌てて二階へ駆け上がった。


『なんだ。ねぇちゃんもう行っちゃうの?つまんねぇなぁ。ここに座りなよ。俺とイイコトして遊ばね?』


 思わず振り返ると、アダムスが私を見てニヤッと笑った。


 飼い主が赤いリボンを取り出し、アダムスの頭に結ぶ。


「まあ可愛いこと。アダムスにはリボンがよく似合うわね。オホホ」


 ……っ、どこがだよ。

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