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な、なに?なに?
二階から男の人の声がする。しかも一人や二人ではない複数の声だ。
う、嘘っ……?
この病院に、男性は一人だけ。
二階には入院患者の犬と猫。他には誰もいなかった……。
周りを見渡す。
私と入れ違いに、誰かが二階に上がったのかな?キャットフードで見えなかったのかな?
もしかして、エアコンの定期点検?
作業員にイチゴのパンツを見られた!?
「あの……誰か二階に上がりました?」
「なに言ってるの?誰もいないわよ。患者さんが来院される前に、早く掃除しなさい。野元さんは髪を束ねなさい」
越谷婦長に注意され、野元先輩は慌てて髪をひとつに束ねる。
私は階段を見上げた。入院室のドアは開いている。
ずらりと並ぶゲージから、たくさんの目が私を見下ろしていた。
――まさか……
まさか、まさか……!?
嘘っ……!?
私、また聞こえてるの?
今度はかめなしさんだけじゃなくて動物達……全部!?
そんなこと、ありえないよ……
嘘だよね……?
「上原さん、早くしなさい」
「す……みません!」
慌てて立ち上がり、袋が破れて散らばったキャットフードを箒で掃く。
『だっせぇ。掃除してるぜ。まさか、あのキャットフードを、俺達に食わせる気じゃねぇだろうな』
『まじかよ……。サイテーだぜ。俺、朝ごはんいらねぇ』
や、やだ。
聞こえてる。
やっぱ、聞こえてるよ。
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