「ねぇ優香。今度の日曜日に、久々にカラオケ行かない?」


「えっ?いいけど。美子はデートじゃないの?」


「彼、友達と旅行なの。だから暇なんだ」


「おかしいと思った。毎週日曜日はデートだもんね」


「うふふっ、彼の誕生日近いし一緒にプレゼント選んでよ」


「仕方ないな。付き合ってあげるよ。どーせ、私は日曜日暇ですから」


 私の職場は女性ばかり。男性は先生と入院患者の動物しかいない。


 動物病院の前にあるバス停に、バスはゆっくり止まる。


「じゃあね、優香、頑張って」


「美子も。バイバイ」


 美子より一足先にバスを降りた私。

 目の前の動物病院に向かう。


『北川動物クリニック』ここが、私の職場。従業員入口から入り、女子ロッカールームでピンク色のナース服に着替えた。みんなはもう開院準備を始めている。


 私が待合室に入ると、朝のミーティングが始まった。


 女性は十名の内、動物看護士四名。受付二名。看護助手四名。


 そして唯一の男性が獣医師。合計十一名。アットホームな動物病院。


 北川先生は三十歳独身。

 男らしい太い眉、大きな目にスッと鼻筋の通った高い鼻、イケメン獣医師のお陰で病院は常に混み合っている。


 先生を狙っているのは患者の家族だけではなく、独身の女性看護士も先生を狙っているみたい。


 無理もないよね。

 だって、この病院には他に男の人がいないのだから。


 ミーティングが終わり、私は越谷婦長こしがやふちょうの指示を受ける。

四十歳独身、眼鏡をかけ髪はショートヘア、最近は体形を気にしダイエットに励んでいる。


「ごめん上原さん、ダイエット用のキャットフード持って降りてくれる?二階の食品倉庫にあるから。二キロ入り、五袋頼むわ」


「はい。わかりました」


 病院に勤務して、まだ一年五ヶ月の私は、看護助手とは名ばかりで、雑用係りと言っても過言ではない。


 未だに仕事は中途半端だし、専門学校を出て動物看護士になったわけではないので、それも仕方がない。


 今は全力で仕事に邁進するのみだ。

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