7
「チャンスはあったのに、なんで進歩ないの?恵太が勇気ないの?それとも優香が……」
美子が私の顔を覗き込む。
「な……なに?」
「やっぱり、原因は机の上のウルフ?」
「へっ……」
美子に心を見透かされているようで、頬が火照る。
「まだ矢吹君のこと想ってるの?」
バスが急停車し、体が左右に大きく揺れる。
「今年は、誕生日プレゼントなかったんでしょう?」
「……うん」
「もう一年だよ。矢吹君はかっこいいし、きっともう彼女がいるよ。海外の女性は同世代でも大人っぽくてセクシーだし、若い男性は誘惑に勝てないでしょう。優香のこと、もう忘れてるよ」
厳しいな……。
美子の言葉が、グサグサと心に突き刺さる。
「……そんなこと、わかってるよ」
美子の言う通り……
あれからもう一年以上経ったんだ。
矢吹君に恋人がいないとは思えない。
だって……
矢吹君はイケメンで爽やかで、世界一かっこいいから。
キスだって……
すごく……上手くて……。
あんなキスをされたら、外国の女性もきっとイチコロだ。
私のことは、矢吹君にとってもう過去に違いない。
私の誕生日だって忘れてるんだから。
でもね……矢吹君。
一年たっても、私は……
あなたのキスを……
忘れることなんて、出来ないんだよ。
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