「チャンスはあったのに、なんで進歩ないの?恵太が勇気ないの?それとも優香が……」


 美子が私の顔を覗き込む。


「な……なに?」


「やっぱり、原因は机の上のウルフ?」


「へっ……」


 美子に心を見透かされているようで、頬が火照る。


「まだ矢吹君のこと想ってるの?」


 バスが急停車し、体が左右に大きく揺れる。


「今年は、誕生日プレゼントなかったんでしょう?」


「……うん」


「もう一年だよ。矢吹君はかっこいいし、きっともう彼女がいるよ。海外の女性は同世代でも大人っぽくてセクシーだし、若い男性は誘惑に勝てないでしょう。優香のこと、もう忘れてるよ」


 厳しいな……。

 美子の言葉が、グサグサと心に突き刺さる。


「……そんなこと、わかってるよ」


 美子の言う通り……

 あれからもう一年以上経ったんだ。


 矢吹君に恋人がいないとは思えない。


 だって……

 矢吹君はイケメンで爽やかで、世界一かっこいいから。


 キスだって……

 すごく……上手くて……。


 あんなキスをされたら、外国の女性もきっとイチコロだ。


 私のことは、矢吹君にとってもう過去に違いない。


 私の誕生日だって忘れてるんだから。


 でもね……矢吹君。


 一年たっても、私は……


 あなたのキスを……


 忘れることなんて、出来ないんだよ。

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