「優香!早くしないともう知らないよ!」


 母の叫び声で、ハッと我に返る。


「ヤバい。まだ、メイクもしてないよ。大変だぁ」


 慌てて部屋を飛び出し、階段を駆け降りる。洗面所でザバザバ顔を洗い、タオルでゴシゴシ顔を拭き、洗面所を飛び出した。


 冷蔵庫から野菜ジュースを取り出し、コップに注ぎ一気飲み。キッチンでかめなしさんを見つけ声を掛ける。


「おはよう、かめなしさん。野菜ジュース飲む?」


「ニャア〜」


「飲むわけないよね。はい、ミルク」


 かめなしさんの器にミルクを注ぎ、私は二階へ駆け上がる。


「優香!朝ご飯は?」


「時間ないからいらない。メイク優先だよ」


「……まったく。女の美しさは内面から滲み出るのよ。メイクより、バランスの取れた朝食の方が大事だってことわかんないのかな」


 内面から滲み出ないから、メイクで誤魔化してるんだよ。母親なのにそんなこともわかんないのかな。


 ドレッサーの前で、超スピード五分間メイク。ピンクの口紅を塗って出来上がり。


「わっ!バスの時間だよ。間に合わないよ。大変だ」


 慌てて一階へ駆け降りる。


「毎朝、毎朝、騒々しいわね。また階段から落ちても知らないからね」


 階段から落ちるか……。


 階下で寝転がっていたかめなしさんと目が合った。かめなしさんは大きなあくびをし前足を伸ばす。


「ママ、行ってきまーす。かめなしさんも行ってきまーす」


「行ってらっしゃい」


「ニャア〜」


 パンプスに足を突っ込み、玄関を開け勢いよく外へ飛び出した。

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