第2話 寝る場所がない
なんの当てもなく地元から飛び出してきた。頼りは、テレアポのアルバイトで稼いできた金だけだった。当時は、どこに移り住もうがテレアポでも何でも、アルバイトをすればどうにか暮らせるだろう、とテキトーに高をくくっていたのである。
しかし、、、16歳当時の僕の世間知は限りなく低かった。中野に来て、早々に取り組み始めたのは、プロのホームレスになることだった。
そういえば、小学生の頃、授業参観のときに「僕の夢はホームレスになることです」という作文を読んで親を泣かせたことがあったっけ。雨風がしのげる場所を求め、中野周辺を徹底的に練り歩きだした。
思い出したらキリがないが、とにかく壁と屋根のある空間を、あちこちを探し回っていた。中野の住宅街、サンプラザ周辺、東中野方面や、、、中野~高円寺駅のガードレール、途中で見つけた「たかはら公園」、内部の一部がむき出しになった一棟の架空の建造物、、、
その間は、先に述べたアパートを秘密基地にしていたが、3日目に住人に見つかってしまい、通報される前に出ざるを得なくなった。ウロウロしてたら東中野方面の中野図書館より先に、とりあえずは寝泊りができそうな公園があったので、そこのアスレチックで寝泊まりした。「パークマンション」と勝手に名づけたのを憶えている。とにかく自分のハウスが見つかるまで、雨が降らないことを祈った。
、、、結局、その数日間の間に、解決策を見出したのである。それが漫画喫茶である。そんなもの地元にはなかった。というか、インターネットすら使ったことのない田舎の人間だったので、僕が受けた衝撃たるや、筆舌に尽くしがたい。寝泊まりも出来て、ネットもしたい放題!(そのころは、まだ「ネットカフェ難民」という言葉もなかった)しかもゼロ年代前半のネットその他動画コンテンツ業界の無法地帯っぷりは、今の若い子には想像ができないと思う。
ときどきネットのスレにゲリラ的に貼り出されている ‘見るな危険‘系のハードコア映像にはいつもうんざり させられるが、当時の僕は何も知らない田舎者だったのである。
それまでの人生で見たこともないような、超衝撃映像を目撃した。それはサブインシジョンと呼ばれるずばりペニスの切断で、直に形状のリフォーム及び性感帯を強化たらしめる
一種の人体改造である。海外では一部に熱狂的ファンがいるのだとさ。 本来ならすぐに消してしまうのが身のためなのだろうが臭いものには蓋をせずにむしろもっと嗅いでしまうのが 青春16歳である、、、というか僕の性分らしく、右手の指はクリックせずに静止していた。 そんな複雑な心情も意に介さず、映像は進行していく。 最初はまだビギナーな‘ミートトミー‘なる亀頭部分の切開手術が数パターン、矢継ぎ早に映し出されていく
。これでも十分気持ち悪い。
その次は'パシャルサブインシジョン'―竿部分の切開― 'ジェニタルバイセクション'―これは完全真っ二つ ―等々、次第に加速度に陰惨ぶりが増していく。
しかもこの連中、みんなohoooとかいって喘いでいるのである。もはや完全にラリッている。 ここらで完全にグロッキーになりギブアップした。それでもまだ動画の半分ほどしか見ていないのでこの後どう いう展開をみせたのか、想像するだけでも空恐ろしい。
いやはや、こういった有害極まりない下劣URLは見ても一文の得にもならないと痛感したのであった。
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