第2話 吝嗇家レシピ

その前に、1つ昔話をしよう。彼女が吝嗇家になった原因の話だ。


彼女は昔から吝嗇家だったわけではない。むしろ、散財してしまうタイプの人間であった。正月に貰ったお年玉もひと月もすればなくなっていた。お菓子、おもちゃ、可愛らしい文房具。彼女の部屋はファンシーな雑貨とお菓子で溢れていた。


そんな彼女に転機が訪れたのは、彼女が中学一年生の時である。


彼女はその年、はじめてゲームセンターの面白さを知った。小学生の時は学校から禁止されていたためゲームセンターに行く機会がなかったからである。そして彼女はUFOキャッチャーにハマった。UFOキャッチャーの中にいた可愛らしいウサギのぬいぐるみが欲しくて堪らなかったのである。


彼女はウサギのぬいぐるみをゲットすることができた。しかしこれが不幸の始まりだった。同じシリーズのぬいぐるみが別のUFOキャッチャーで取れることを知った彼女は、ウサギのぬいぐるみを集めはじめてしまったのである。


気がつけば彼女の部屋にはぬいぐるみが溢れていた。彼女はぬいぐるみに囲まれた生活を送ることになる。


そんなある日のことだ。


ある1つの夢を見た。大量のウサギのぬいぐるみが彼女に迫ってくる夢である。

「よくも無駄なことにお金を使ったわね。」

なぜこんな夢を見たのかはわからない。しかし、彼女は恐怖した。ぬいぐるみの色のない目が恐ろしかった。


次の朝、彼女は部屋にあるぬいぐるみを全てフリーマーケットにだした。そして、それからというものの、節約・倹約を心がけてきたのである。吝嗇家・笠川茜の出来上がりである。

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