第2話
大きな不満も充実感もない日々。
小さなトラブル、小さな落ち込みはたまにあるけれど、やはり小さなフォローや気持ちの切り替えで過ぎていく日々。
自分の存在を持て余す、などといった感傷も数年前からなくなった。
平凡が一番の幸福という、何度も聞かされた言葉を肯定できるようになったのも最近だった。
何をもって平凡なのかもわからないし、自分がはたして平凡な人生を送っているのかどうかもわからなかったが、少なくとも客観的にはそうに違いない。
医療技術系の短大を出た後、都内の病院に勤めた。始めは実家から通っていたが、兄が結婚し義姉が実家で暮らすようになったのを機に、一人暮らしをするようになった。どこにでもある話だろう。
少し前まで両親は、結婚せずにいる娘を心配して口うるさくあったが、孫が生まれてからはそちらに夢中だった。これもよくある話だった。
舞子はふと鏡を見た。
(でも私には誰にも言えない秘密がある)
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Subject Re3: 七夕の夜に
日時設定が違うのはあなたの方だと思うけれど?
日時と言っても、月と日は合っているわね。西暦がちょうど2年ずれている。時間はわからないわ。
それともあなたは本当に未来の人なのかしら。だとしたら面白いのに。でもそんなことがあるわけないわね。
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Subject Re4: 七夕の夜に
そんなことがあるわけない、なんてロマンのないことを言わないでくれ。
少なくとも俺は嘘はついていない。君もだろ?
俺は未来の世界の住人。時の管理人の気まぐれで、君とめぐり合った。
時を越えた文通をしてみないかい?
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Subject Re5: 七夕の夜に
そうね。楽しいかもしれないわね。
改めて自己紹介をするわ。
私のことはユカって呼んでね。
二十代最後の一年を迎えたところ。
病院で検査の仕事をしているわ。
趣味は映画鑑賞と旅行。そのわりに出不精で、映画はレンタルDVDばかり。ショッピングにも滅多に行かないの。旅行は地図やガイドを見ながら計画を立てるのが楽しくて。実際に行くのは年に一度くらいなのよ。
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本名を書く必要はないだろう。でも今後の話題に必要かも知れないので、年齢と仕事は本当のことを書くことにした。でも正直あまり期待はしていなかった。
名前も顔も知らない相手とのメール交換など、数回で自然消滅してしまうに違いない。
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