224 ヴァンパイア兄弟の最期

 オールが炎属性の広範囲魔法を放つ。のたうち回るレッサーヴァンパイアに追撃を加える。ライトゾーンから出てきた者たちは、ファル師匠、デルタ、セアリアスが各々倒していく。


 あんなにいたレッサーヴァンパイアも見る影もない。ブラックオーガもファル師匠によって止めを刺され、ハーピークイーンもデルタの飛ぶ斬撃と俺の光属性付加のボウガンで羽をやられ落下したところを、エターナ、ほーちゃん、セアリアスにボコボコにされ砂になった。



「ぐぬぬ……やるではないか」


「兄上~♪ 流石に不味いのでは~♪」


「任せておけ、とっておきを出してやる」



 また、魔法陣が浮き上がり何かが召喚されるようだ。


 なんかボロボロの巨大な物体が魔方陣から浮き上がってくるな。ドラゴンゾンビだ。



「つまらん。芸がないと思わんか」


「ははは……オール。大好きなドラゴンゾンビだぞ」


あるじ殿。いじめんでくだされのう……」



 確かに芸がないな。これだけアンデットの弱点属性を使っているというのに、まだアンデットを召喚するなんて、やはり残念ヴァンパイア兄弟のようだ。


 オールが魔法(炎)で攻撃し、俺たちも魔法攻撃で追撃する。ドラゴンゾンビがポイズンブレスを吐いてきた。が、デルタの一振りで霧散する。そこに出来た隙に、ファル師匠の一撃が入る。


 はっきり言ってたいしたことない、なにせ上位種のデスドラゴンと一度やりあっているのだ。イェーイ、ユーを黙らせている……もとい、煮え湯を飲まされる。それに比べれば攻撃も遅く単調、俺たちにとっては格下だ。



「ば、馬鹿な! ドラゴンゾンビがこうもあっさりとやられるとは……」


「兄上~♪ どうやら我々が出る必要がありそうです~♪」



 弟の方がビンを取り出し、兄に渡す。



「エターナ!」



 ボウガンを構え、狙いを定めて放つ。一瞬遅れエターナからもボルトが放たれた。



「なに!?」



 パリンッ! と音と共にビンが砕ける。呆然とした顔がそこにはあった。ざまぁ。



「き、貴様らぁー!」


「兄上~♪ まだあります~♪」



 流石に今度は、隠れて飲んでいる。



「セアリアス!」



 セアリアスにも血の入ったビンを渡す。ニヤリと笑いながらビンから血を飲む姿は、紛れもなくヴァンパイアのそれだ。最後の一滴を舌に落とし唇を舐める姿は、何とも卑猥だ。お子ちゃまには見せられないな。


 ファル師匠がドラゴンゾンビに止めを刺せば、周りには既に敵はいない。残すはヴァンパイア兄弟のみ。


 砦の上から飛び降りてきて俺たちの前に立つ姿は、先ほどと変わりムキムキマッチョ。



「セアリアス。頼むから、ああはならないでくれよ……あまりにも醜い」


「はぁ……」


「ほれ、来るぞ」



 兄ヴァンパイアはグレードアックス、弟はハルバートを振り回し向かってくる。強力な一撃を放てそうだ。ファル師匠にデルタ、セアリアスが前に出る。俺は後衛だ。


 セアリアスがアーツを使いヘイトを稼ぐ、その隙にファル師匠とデルタが仕掛ける。俺とエターナは光属性付加のボウガンで援護に回る。ほーちゃんは上空から法術を使用してセアリアスの幻影を作った。セアリアスが三人いるように見える。


 ヴァンパイア兄弟はファル師匠とデルタの攻撃を受けながらも、セアリアスに攻撃を加えるが、幻影に阻まれセアリアスには届かない。しかし、ヴァンパイア兄弟の攻撃により幻影は消えてしまった。



「ほーちゃん!」


「もう。無理です~」



 MP切れだ。俺のボウガンをほーちゃんに投げる。ほーちゃんはボウガンをキャッチして上空からの狙撃。


 兄ヴァンパイアの攻撃で、セアリアスが盾ごと吹き飛ばされた。なんてパワーだよ。


 だが、デルタはその隙を見逃さず、兄ヴァンパイアの片腕を切り落とした。



「ガッ!」



 勝負ありだ。片手ではグレードアックスを持てない。デルタが止めを刺すかという時、ファル師匠を突き飛ばした弟ヴァンパイアが、兄の前に飛び出しデルタの剣を己の体で受け剣を両手で掴む。



「兄上! 今だ!」



 弟ヴァンパイアは己を犠牲にして、デルタの剣を奪いチャンスを作った。兄ヴァンパイアもこの隙を逃さずと、残った片腕に剣を出現させデルタに突きだした。



「……その気概はよし」



 デルタはいつの間にか剣を離し、黒夜叉の大剣を振り降ろしていた。いつの間に……まったく見えなかった。


 兄ヴァンパイアの剣はデルタに届かず、ヴァンパイア兄弟諸共真っ二つ。真っ二つになってもピクピク動いている。いやぁー気持ち悪いの一言。HPがゼロにならないなんて、なんて生命力だ。エターナと二人で魔法(光)を掛け続けやっと砂に変えた。



「終わったようじゃな」


「まだやることが残ってますけどね」



 砦の中を探索する。十を超える宝箱に、金貨、銀貨を多数見つけた。エナジーキューブも二つ手に入れている。しかし、頼まれた実のなる木が見つからない。



「マスターあれでは?」



 セアリアスが指差すのは中庭に生える木だ。近くに行くと木の下に、石で出来た台がありくぼみが五個ある。


 クエストアイテムのエナジーキューブが嵌りそうだな。試しに嵌めてみると、葉のひとつもなかった木が青々と茂り一つの花を咲かせ、真っ赤に輝く実をつけた。


 真っ赤な実は、まるで血で出来たかのような鮮やかさ。ちょっと不気味。


 その実を取った瞬間、全員が転移された。


 転移された場所は、最初に訪れた街だった。




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