219 後顧の憂いがなくなる

 翌朝のニーニャとミーニャ爆弾は、セアリアスに鹵獲されムニュムニュされていた……。


 二人を抱きしめて頬をスリスリしている、セアリアス。そんな姿をゼータが睨んでるのが怖いです……。


 朝食後、今日こそ三姉妹の可愛い姿をコリンさんに見てもらうため、ルグージュに行くことにした。また、周りを囲まれる恐れがあるので、直接コリンさんの家の前に転移魔法で飛ぶ。



「あらあらまあまあ。なんて可愛らしいお嬢さんたちなのかしら」


「ばぁー」



 ニーニャはもじもじして、ミーニャはコリンさんに飛び着いた。エターナなにクネクネしてるんだ? コリンさんの言ったお嬢さんたちの中に、お前は含まれてないぞ。たぶん。



「ばーばぁ」



 ニーニャもコリンさんに抱きついていく。ついでににゃんこ共もだ。


 あとはゆっくりしていてとレイアに言って、俺は情報ギルドに行くと言ってコリンさんの家を出た。


 表通りに出て歩いていると、お子ちゃまたちがエターナを見つけて集まって来る。お子ちゃまホイホイだな。情報ギルドの前に着く頃には、お子ちゃまだけでなく大人の女性陣もついて来ていた。よく見ればプレイヤーも混じってるよ。欲しいのか?


 お子ちゃまたちにアメ玉を配り、エターナとほーちゃんを人身御供に置いていき、さくらと建物の中に入った。


 入るとすぐにレミカさんがやって来た。



「これはルーク様。如何なさいました? さくらちゃん、とってもチャーミングね」


「ミャー」


「ガレディアいる?」


「ご案内します」



 レミカさんはさくらをもふもふしながら、ギルド長室に案内してくれた。



「レミカ。なぜ、こいつを連れてきた?」


「おいおい、約束はどうなったのよ?」


「ぐぬっ……。話は付けてある何時でも行ける」



 なんだ、やることはやってるんだな。



「で、いつ行くんだ?」


「その前に、あるお方に会ってもらう。その方が認めない限り長には会えん」


「で、いつ会うんだ?」


「頼めば何時でも来てくださるそうだ。何時がいい?」


「じゃあ、明日で」


「わかった。明日の昼過ぎにここに来い」


「了解」



 思ったより、すんなりといったな。ガレディアのことだから、もっとごねるかと思っていた。



「ひとつ聞いていいか?」


「なんだ?」


「なんでこんなにあっさりと決まったんだ?」


「エルフとて独自の情報網を持っている。そのなかにはプレイヤーや魔王のことの情報もある。興味を持つのは不思議ではあるまい」


「ふーん。エルフってもっと閉鎖的な種族だと思っていたが、そうでもないんだな」


「エルフとて単独種族だけでは生きてはいけぬ。そのための情報だ」


「その情報網のひとつがガレディアなんだ」


「そういうことだ」



 ギルドの表に出ると、ほーちゃんが皿回しをやって、エターナが踊っていた……。君たちは多芸だね。で、なにやってるのかな? 置いてくよ。見物人が投げ銭をしてきた。お前ら大道芸人っか!? お子ちゃまたちは残念そうな顔をしているな。ごめんよ、見世物じゃないんだよ。


 エターナがプレイヤーに紙切れを渡している。もしかして、先行販売チケットなのか!? 鯵を〆て……もとい、味を占めて芸人にクラスチェンジするつもりか!?


 渡している紙を見せてもらうと、食い倒れ屋の場所とウサギスーツ絶賛販売中! と書いてあった……。君たち、実はチンドン屋だったのね。いくらで引き受けた? 言い出したのは舞姫さんだろうな……。


 コリンさん宅に帰る前に、野菜おばさんの所に寄って野菜を買って帰った。うさ子ちゃんは何時帰って来るのかと散々聞かれたが、残念ながらわからないとだけ言っておいた。うさ子の奴、どこで何してるんだかねぇ。人様にご迷惑をかけてないといいけど。


 コリンさんの所に戻ると、ちょうどお昼の時間帯。


 香草のよい香りが漂ってくる。トラ、涎がポタポタ落ちてるぞ。ほら、ハンカチで拭け。


 メニューは鶏肉の香草焼き二羽分と野菜のスープにパンだ。二羽分なのはにゃんこ共の分だろうな。申し訳ないです。はい。


 鳥皮に何度も溶かしバターをかけて、飴色になってパリパリになっている。お腹の中には香草と野菜が入っていて、とても食欲をそそる香りが漂う。味を見なくとも美味いのがわかってしまうな。


 野菜スープはあっさりでお腹に優しい味だ。


 ちょっとはしたないが、パンに鳥のソースを付けて食べると絶品だった。


 いやぁ、満腹、満腹。ご馳走様でした。


 食後にお茶を飲みながら、前々から考えていたことを話そうと思った。



「コリンさん。不躾な話ですが、私たちと一緒に住みませんか?」


「えっ!?」


「ルーク!?」


「いや、前々から考えていたんだ。ニーニャがコリンさんを本当の祖母のように慕っている。今はミーニャもいる。これから俺たちは忙しくなる。ニーニャとミーニャの傍にずっといてやれないこともでてくるだろう。うちにいるメンバーはみんな良い奴だが、ニーニャとミーニャを家族として見ることは難しいだろう」


「そうですね……。おば様さえよければ、私からもお願いします。この子たちもそのほうが安心できますし、正直、おば様一人がここに住んでいるのが心配でした。一緒に住んでいただけませんか?」


「心配だなんて……まだまだ元気ですよ。私は」


「ばーばぁ」


「ばぁー」



 ニーニャとミーニャがウルウル顔で、コリンさんを見つめている。そんな顔をされたら、俺なら即決だな。この顔に抗うのは無理だ。何でも言うことを聞いちゃう自信がある。



「こんなおばあちゃんでいいの? 何もできないわよ」


「大丈夫です。うちには無駄にメイドが多いですから、こき使ってください。それのほうが喜びますし」


「あらあら」


「ニーニャとミーニャと一緒にいてくれるなら、何をしてもらっても構いません」


「部屋は私と一緒でいいかしら?」


「あい!」


「ウミャ!」


「フフフ……みんな気が早くてよ。わかりました。あなたたちのお世話にならせてもらうわ」



 ニーニャとミーニャがコリンさんに抱きつく。


 よかった。本当によかった。これで安心できる。戦いになれば、レイアの力を借りなければならなくなる。そんな時、ニーニャとミーニャのことが心配になると思っていた。


 二人共に本当の親を亡くしている。ゼータやメイド隊もいるが二人は寂しがるだろう。コリンさんなら二人を本当の孫のように扱ってくれるはずだ。二人も安心感が違うと思う。


 ある意味、後顧の憂いはなくなった。


 これで心置きなく第八魔王と戦える。





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