216 真打! 変態ヴァンパイア

 さて、一息ついたし、あの露出狂のヴァンパイアを追い詰めに行くかね。


 ミイラだらけの牢屋を通り抜け、最奥の部屋の前に来た。



「ここがボス部屋か」


「ヴァンパイアだな」


「このメンバーなら余裕じゃないかな?」


「殺さないと駄目なんだよなぁ。俺の嫁候補が……」


「儂とデルタ殿は静観じゃて、気を抜くでないぞ」


「噛まれるとヴァンパイアになるにゃか?」


「なるのではないか?」


「ニャンパイア? ケットパイアなのかしら?」


「……(???)……」


「キュピィ……」



 最終決戦だというに、なんか気が抜ける。意外とこいつら余裕だな。若干、一人……一匹を除いてだが。


 まあいいさ、ちょっとだけ策を弄しましょうかね。さくらちょっとお願いが……ごにょごにょ。



「ミャッ!」



 よろしくね。



「準備はいいか? じゃあ行くぞ!」



 セイさんが扉を開けた。



「ホーホッホッホッ! よくここまでたどり着きましたわ。褒めて差し上げましてよ!」



 ライトアローは放つ。露出狂のヴァンパイアはとっさにダークシールドを張り防ぎやがった。レベルは百四十オーバー、今までで最高レベルだ。ボスなのでスキルが見えないが、今の瞬時にダークシールドを張るところを見るに相当スキルレベルも高そうだ。



「ちょ、ちょっとあなた! 人が話してるのに、なにしますの!」


「変態に興味はない。それにお前、人じゃないだろう?」


「へ、変態ですって! た、確かに人ではなく、ヴァンパイアですけど、変態呼ばわりは許せませんわ!」


「自分は変態でも、痴女でも、女王様でもウェルカムです!」


「「「……」」」



 露出狂のヴァンパイアまで引いてるぞダイチ。誰かコッコ呼んできてこいつ引き取ってもらえ!



「と、取りあえず、今までのようにはいかないことを教えて差し上げますわ! 私が本気をって、えぇー!」



 露出狂のヴァンパイアが奇声を上げて、後ろの棚を凝視して固まっている。



「け、献上品の血が……なくなっているのは……なぜ?」


「ミャー」


「さくら、ご苦労様。後はゆっくりしてていいよ」


「ミャー」



 さくらはトコトコとみんなの足元を抜け、レイアの胸にピョンと飛び着いた。何度見ても羨ましいよ。俺も飛び込んでみたい。



「き、貴様らぁかぁ~。この盗人ど~も~がぁ~」


「また、ルークか……」


「弁護できんな……」


「盗賊が師匠って、どうよ?」


「怪盗第魔王ルークにゃんにゃ!」


「まあ、効果的ではあるがのう……ちと、やり方がのう?」



 あんたたちねぇ。相手の弱点を突くのは戦いの基本だぞ。何か? 俺が間違った事をしてるとでも言うのか? えぇ!



「セアリアス、デクス。飲め」



 二人にビンを投げる。二人は受け取り中身を確認し、笑みを浮かべ一気に呷る。



「そ、それは……ま、まさか……飲んだの、飲んじゃたの? イヤァー!」



 セアリアスのステータスがグングンあがる。そして種族名が点滅している。進化のようだ。進化先はヴァンパイアしかない。進化させよう。



「!?」



 セアリアスは驚いた顔をしてこちらを見ている。デクスはまだなのかな?



「うそ……進化してるじゃない……レッサーヴァンパイア如きが……」



 露出狂のヴァンパイアの言葉で、みんながセアリアスを見た。



「進化したのかい?」


「デクスはまだですか?」


「まだのようだね」



 でも、遠からず進化するだろうな。



「もう、本当に許しませんわ! 貴方たちの血で我慢して差し上げますわ!」



 怨念汝をたまに死す……もとい、艱難かんなん汝を玉にすってな。あんたもっと苦労したほうがいいよ。まあ、もう終わりだけどな。


 全員が戦闘体制に入り、聖、光持ちが魔法を掛けていく。このメンバーだと俺は後衛でいいだろう。光属性付加のクロスボウで攻撃だ。


 早速、ダイチがアーツを使いヘイトを稼ぐ。セアリアスがダイチに攻撃するヴァンパイアの攻撃を受けニヤリと笑った。進化したうえ、ドーピング状態だ、余裕があるな。ダイチとは違い、いい意味でヘイトを稼いでいるな。


 右からセイさんたちにユウが混ざり連携攻撃、左からにゃんこ共にムウちゃんが混ざり連携攻撃を仕掛けている。即席だが、いつも一緒に朝練してるだけあって形になっている。


 残りは魔法での攻撃や補助それに回復に回っている。


 正直、相手が可哀そうな位、ボコボコにされている。もうすぐHPが半分を切りそうだ。余裕だなと思った時、ヴァンパイアが吠えた。



「このゴミ虫どもがぁー! 許さぬ、許さぬぞぉ!」



 お、鬼婆に変身した……。HPが完全回復してるし、体がマッチョになっている。女性の美しさが皆無になってしまった。おねぇみたいだな。目の保養が……冗談です。


 ヴァンパイアの目がルビーのように輝やきを増す。腕を振るったと思うと、トラの巨体が宙に舞っていた。マジすっか!? ガードしたようだが片腕が変な方向に曲がっている。レイアとチロが駆け寄り回復魔法を掛けていく。


 にゃんこ共とムウちゃんは完全に逃げ腰になってるな。ファル師匠が首を振っている。


 更にヴァンパイアが腕振るうと、甲高い音と共にユウが吹き飛んで行った。一応盾でガードできたようだが、半端ねぇパワーだ。リンネが駆け寄っていく。


 こちらの魔法もダークシールドに阻まれる。一気に強くなった。反則じゃね?



「トルネード!」



 おぉー。大技を出してきやがったよ。



「ライトシールド×2」



 こちらもとっておきの技を出す。日頃の修行の成果で左右両方の手で、魔法を出せるようになったんだよ。まだ、同じ魔法しか出せないけど、更に研鑽して別々の魔法を出せるようになりたいと思う。


 ライトシールドを二つ並べて広範囲をカバーする。ぐぬぬ……これはきついぞ。


 その隙にセイさんとニンエイさんが仕掛けた。ヴァンパイアはいつの間にか出した二本の剣を駆使して、二人の攻撃を受けている。ほんとに強いぞ、この変態ヴァンパイア。


 この変態ヴァンパイア攻撃を受けながらも、何かを狙っているように見える。あれか?



「そいつ、毒の霧を吐くぞ!」



 ギリギリ、俺の声が間に合い、セイさんたちが距離を取ったことで事なきを得た。



「クッ、いまいましいゴミ虫め!」



 ハァ……なんか、さすがに疲れてきた。


 ファル師匠にデルタ、そろそろ手伝って。




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