217 ヴァンパイア討伐完了

 セイさんとニンエイとの連携でも何とかってとこだ。


 俺も攻撃に加わるか迷ったがやめた。どうせ、俺は連携などできない。下手すりゃ邪魔なだけだ。にゃんこ共も使いものにならない。完全に接近戦を諦めたようだ。


 デルタ先生出番ですよ。



「……しかたあるまい」



 デルタが前衛に参加するが、全くと言っていいほど本気を出していない。朝練で使っている予備装備のままだ。まあ、本気モードでやられても困るんだけどね。おそらく、半分以上のメンバーが動けなくなるだろうし。


 それでも、形勢がこちらに傾く。マッチョヴァンパイアが、捌ききれなくなっている。さすがッス、デルタ先生。


 どうやらほかのメンバーも息を吹き返したようだ。


 デルタがヴァンパイアの攻撃を全て捌いている隙に、ダイチとセアリアス、デクス、ユウも周りを囲み攻撃に参加し始めた。ヴァンパイアに焦りの色が見える。流石にこれ以上の奥の手はないだろう。


 しかし、これに更に血を飲まれていたら、もっと苦戦していたのかもな。やはり俺は間違っていなかったと、証明されたな。


 俺の放ったボウガンのボルトがヴァンパイアの眉間に突き刺さり、クリティカルのエフェクトが出てHPがゼロになった。



「口惜しきは最高の状態で戦えなかったこと、パーフェクトな私であればゴミ虫などに負けなかったものを……」



 ふん。所詮は、まけてもらったオーボエ……もとい、負け犬の遠吠えだぜ。何とでも言うがいい。ヴァンパイアは砂となって消えていった。



「さすが、デルタ先生。腕前、感服致しました」


「……みなもいい動きだった」


「おぉー。デルタ師匠に褒められたぜ!」


「調子に乗るなよ。ゆう」



 にゃんこ共とムウちゃんはファル師匠の前に正座して反省会。



「あんなの無理でござるにゃ……」


「トラが吹っ飛ぶ相手では……」


「みんなよくやってましたわ」


「……(コクコク)……」


「キュピ……」



 ファル師匠は首を横に振っている。みんな、頑張れ。


 エターナが宝箱からアイテムを回収してきた。ギャルソンの服、深紅のメイド服、吸魔のブレストアーマー、魔倉の腕輪、エナジーキューブだった。


 ギャルソンの服と深紅のメイド服は防御が高く、どちらも火耐性付き。


 吸魔のブレストアーマー 受けた魔法を少しだけMPに変換される優れものだ。


 魔倉の腕輪 魔倉の指輪の上位版だな。MPを八百貯めることができる。


 そのほかに、俺はヴァンパイアから魅惑のレオタード、レイアが紅玉の杖、セイさんが流水の剣をドロップした。。


 ギャルソンの服と深紅のメイド服はセアリアスとデクスに渡して、吸魔のブレストアーマーはニンエイさんが受け取った。魔倉の腕輪は俺が欲しかったので、紅玉の杖を更紗さんに、魅惑のレオタードをダイチが欲しがったので渡した。流水の剣はユウが貰ったようだ。


 さすがに疲れた。帰りますか? それとも続ける? にゃんこ共が嫌な顔をしている。ハイハイ、帰りますよ。イノセントハーツの砦に転移魔法で飛んだ。



「セイさん。満足しました?」


「ハァ……ルークと一緒に行くと心臓によくないな。だが、面白かったぞ。また連れてけ」


「……やだ」


「お、お前という奴は……」



 逃げるように降魔神殿に転移で飛んだ。


 みなさん解散ですよ。俺はニーニャとミーニャを迎えに行ってくる。


 また、転移でケットシーの里まで飛んだ。


 中央の広場に行くと、長のクロジさんに呼び止められた。



「これはルーク殿、ちょうどよいところに来られました」


「どうしました?」


「先程までコボルト族のポチが来ておりまして、大神殿が我々に条件付きで協力してもよいと仰ってくれましたそうですぞ」


「条件付き?」


「ウミャ~」



 ミーニャが飛びついて来た。どうして来たのがわかったのかな? まあいっか。可愛いからうにうにしてやれ~。ミーニャはくすぐったそうにするが、しっかり抱きついてきてスリスリしてくる。お返しにほっぺにチュッチュッしてあげた。



「おっほん。ルーク殿、よろしいかな?」



 すみません完全に、アウトオブ眼中でした……。



「そ、それで条件とは?」


「猪共の排除に協力して欲しいそうです」


「猪の排除?」


「はい。どうやら北東から大森林中央部に、猪のモンスター共が入りこんでるようでして」


「大神殿だけでは対処できないと?」


「違いますな、おそらく我々の力を確認するのが目的かと」


「なるほど」



 猪のモンスターが暴れているのは本当らしい。それが魔王と関係あるかは不明だ。しかし、大神殿の一族なら十分に対応できると長は言っている。



「いいでしょう。一軍を派遣しましょう」


「そう言っていただけると思っておりました。大神殿が我らに協力してくれれば、心強い味方となりますからな」



 シルト辺りをスケルトン部隊と派遣しよう。いい訓練になるだろう。第八魔王が攻めて来るまでまだ少し時間はある。少しでも味方を確保したほうがいい。今回の戦いに参加はしなくとも、北方連合の国盗りや第八魔王討伐には力を借りたい。猪の排除の手伝いくらいで味方になってくれるなら安いもんだ。


「ほかの種族にも声を掛けておりますが、なにぶん冬なのでいい返事が貰えておりません。ですが春になれば話は変わりましょう」


「引き続きよろしくお願いします。我々にできることであれば多少の苦労は厭いません」


「承知しました。我々も全力であたりますので」



 協力してくれるようになったら、ニーニャとミーニャを連れて遊びに行きたいな。もふもふ、もふもふ、もふもふ。


 ハッ!? またしても欲望の世界に行ってしまった。もふもふ感があったのはミーニャをもふもふしていたからか……。


 長、そんな目で見るのやめて、反省はしてないけど……。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る