213 迷宮管理部現る!?

 と、取りあえず、立たせた。



「俺の名はルーク。これから、残りのレッサーヴァンパイアを排除する。できるか? セアリアス」


「正直、力が出ません。血を補給したい」



 セアリアスはそう言って、首の辺りをチラチラ見ている。まさか、俺の血を吸う気か?



「どれ位必要なんだ?」


「コップ一杯程度あれば、問題ないかと」



 ストレージから血の入ったビンを取り出して投げ渡す。



「それでは駄目か?」



 ビンを開け匂いを嗅いだ後、少し指に落とし舐めている。な、艶めかしいな……。



「すべて頂いても宜しいか?」


「毎回はやれんが、今回は特別だ」



 セアリアスは怪しく光る赤目を、更に燃え盛るかのように輝かせて血を飲み始めた。みるみるHPが回復し、ステータスが上がっていく。



「武器を」



 ストレージから適当な剣と盾を与えると、颯爽と戦いに加わっていった。


 更紗さんのほうを見ると、あちらも決着がつきそうだ。あちこち焼け焦げたレッサーヴァンパイアがひざまついている。



「うまくいったようですね。これ使ってください」


「これは何かな?」


「血ですよ」



 更紗さんはビックリした顔をしたが、受け取りテイムしたレッサーヴァンパイアに半分与えた。


 残りのレッサーヴァンパイアとの戦いも終盤に差し掛かっている。手伝う必要もないな。


 ユウはダイチと並んで盾役をこなしている。リンネはチロと一緒に後方で魔法攻撃に回復魔法を使って援護。ミケ、タマ、トラの連携はいつ見ても圧巻だ。ムウちゃんは……ファル師匠にお尻を蹴られながら嫌々戦っている。頑張れ。



「な、なんであなたたち裏切ってるのよ! レッサーヴァンパイアの分際で!」


「「強き者に使えるが我らが運命さだめ」」


「それってわたくしが弱いってこと! キィーッ!」



 そう言って露出狂のヴァンパイアは建物に消えていった。地下に行くんだろうな。きっと。


 最後の一体も砂になってここでの戦いは終了。



「こっちの二人はテイムしたのか?」


「俺と更紗さんです」


「私はセアリアス」


「デクスと申します」



 二人共、軽くお辞儀をした。



「これからどうするんじゃ?」


「ヴァンパイアが地下に逃げましたので追いますが、ちょっと休憩しましょう」



 みんなが休憩している間に、エターナとセアリアスを連れて宝箱の回収に行く。宝箱の場所はセアリアスが知っていたので、罠解除だけエターナに頼んだ。


 宝箱は六つ、血鮮錠が二つ、吸血剣、影縫いダガー、シルバーシールド、水の聖衣だ。


 吸血剣 相手の血を吸う度に切れ味がよくなる


 影縫いダガー 投擲武器で、相手の影に刺さると一時的に身動きできなくなる。拘束時間は相手の能力によって変動。


 シルバーシールド 鋼鉄の盾に聖銀メッキされたもの。異常状態軽減(微)


 水の聖衣 装備すると火耐性が付く反面、夏涼しく冬寒くなる。



 影縫いダガーはニンエイさん、シルバーシールドはダイチ、水の聖衣は更紗さんが取得した。ユウはダイチのおさがりで漆黒の盾を貰ったようだ。血鮮錠と吸血剣は誰も欲しがらなかったので、血鮮錠は俺が貰い吸血剣はセアリアスに渡しておいた。


 さてと、さくら出番ですよ。パッパっとやっちゃいましょう。



「ミャッ!」



 建物を回収。ポッカリと地下に降りる階段が現れた。



「申し訳ありませんが建物をお返し願えないでしょうか?」



 何処からともなくハイドールが現れた。一瞬のことで驚いたようだが、すぐに全員が身構えた。



「なに奴!」


「あー、この迷宮の管理してる奴だ。おそらくは」


「これは失礼致しました。わたくし、迷宮管理部のものでございます」


「迷宮管理部だと……」



 みんな驚いている。


 しかし、管理部って……部ってことは、ほかの部署もあるのか?



「それで、お返し頂けますか?」


「やだ」


「やだ、でございますか……」


「何故、返さないといけない?」



 迷宮で手に入れたものは、手に入れた者の所有物になる。それがルール。



「迷宮の備品でございますので」


「そんなの知らないし、どこに書いてある?」


「貴方様もダンジョンマスターならおわかりだと思われますが?」


「何を勘違いしてるか知らないが、俺はダンジョンマスターじゃないぞ」



 ハイドールはこちらを見つめて、チッラっとさくらを見て考え込んでいる。さくらはハイドールに睨まれたと勘違いしたのだろ。レイアの胸にピョンと飛んで隠れてしまった。



「なるほど、そういうことでございますか……」



 何か知らないが、納得したようだ。さくらが魔王だとバレたわけではないだろうが、何かを感じ取ったのかも知れない。



「できれば、返して頂きたいのですが……」


「見返りは? 俺たちはほかのパーティーと違ってバンバン魔法使ってるし、元は取れてるんだろう?」


「そんなことはございません。館を持って行かれたら大赤字でございます」


「またまた~。そういう言い方するってのが、嘘くさいんだよ」


「……」



 本当に困ったような表情をしているので、ひとつ助け船を出す。



「そうだな、ダンジョンマスターに会わせてくれるなら返してもいいかな」


「それは無理と申し上げておきます」



 あら、残念。



「そうか。残念だ。中ボスはあと二体いるな」


「何を仰りたいのですか?」


「いや、別に」



 フフフ……。さくらだけに、そぎだぜ。



「ダンジョンマスターに喧嘩売ってるし……」


「我が弟子ながら非常識すぎるじゃろうて」


「師匠ですから」


「ルークにゃんなら、そんなもんにゃ」


「別に驚く事ではないな」


「大魔王ですしね」


「……(コクコク)……」



 葉を取るより蜜を取れ……もとい、名を取るより実を取れ派なんだよ。


 何とでも言いやがれ!




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る