212 どMをテイム!?

 少し進むと早速、モンスターと遭遇。


 レイアがセイさんとニンエイさんに聖属性を付与する。ダイチは盾役に徹するようだ。セイさんとニンエイさんが両脇から攻撃を仕掛け、更紗さんとパンくんがファイアアローで攻撃を加える。


 いい連携だ。流石、トッププレイヤーたちだ。即席パーティーだというのに流れに淀みがないな。


 レイアもホーリーバレットで攻撃に参加する。俺とさくらは見てるだけだ。たまにダイチにヒールを掛ける位しかやることがない。


 最後に残ったレッサーヴァンパイアもセイさんに止めを刺された。



「ふぅ。確かに厄介な相手だ」


「まさかスケルトンを盾に使うとはな……」


「パワーも侮れなかったなぜ」


「モンスターというより、プレイヤーと戦っているようだ」


「さすがみなさん、お強いですね」



 そんなに苦労したようには見えなかったが、初戦だからかな? さあ、ドンドン行こうぜ。


 二戦目ともなると慣れたもので、余裕さえ窺える。更にすることがなくなった。やってることといえば、レイアから魔倉の指輪を受け取りさくらがチャージして、またレイアに返すくらいのことしかやっていない。正直、暇だ。



「更紗さん。レッサーヴァンパイアをテイムしますか?」


「うーん。正直悩んでる。あんな戦いしかできないのかい? それに意思の疎通は言葉なのだろうか?」



 確かに、更紗さんのいうとおりなんだよな。クレバーな戦い方は嫌いじゃないが、盾にされるのが自分だと考えるとちょっとなぁ。それに迷宮の通路で出てくるレッサーヴァンパイアって、喋ってるのを見たことがない。言葉を理解してるかも怪しいところだ。



「中ボスの所にいるレッサーヴァンパイアは、ちゃんと喋れたんですけどねぇ」


「ん? 喋れるのがいるのかい?」


「普通に喋ってましたね。でもヴァンパイアの直の眷属なのかも?」


「ふむぅ。でもここは迷宮だろう。それはおかしいんじゃないかい?」



 言われて見ればそうだ。ここは迷宮だ。過去に来たハンターが眷属にされた? あのメイドさんたちが? ありえない。



「更紗さんのいうとおりかもしれませんね。あっちで試してみますか」


「そうだね。駄目もとだからね」



 なん度か戦いを続けながら、探索を続けると洋館を発見。



「これか?」


「これですね」



 リンネにチャットで連絡して場所を説明。すぐにこちらに向かうそうだ。



「一旦、昼食にでもしましょう。その間に来るでしょう」



 パンくんが女性陣に囲まれて、もふもふされながらサンドイッチを食べさせてもらっている。可愛いは正義か……。


 昼食を取っているとファル師匠たちもやって来た。



「ウニャッ! 我々のアイドルの座を狙う者がいるでござるにゃ!」


「何か愛着を感じるのだが」


「猫なんじゃなくて」


「……(???)……」



 確かにレッサーパンダは小熊猫と言うけど、厳密にいうとイタチ科らしいぞ。


 それよりムウちゃんは何故、涙目でリンネに抱きついている?



「どうしたんだ? ムウちゃんは」


「駄目じゃ……この小僧は、お主の所の小娘とは全く逆の意味での問題児じゃ」



 どうやらいつもの如く、逃げ回っていたようだ。唯我独尊的なうさ子に唯我独慄的なムウちゃん、確かに対照的だな。どっちも可愛らしいけどね。


 こればかりは何とも言えないな。ムウちゃん自身が乗り越える壁だ。頑張れ。


 ファル師匠達も昼食に入った。



「どういった風に戦う?」


「最初はストーリーを進めながら倒しました。二回目は面倒なので一網打尽にしました」


「一網打尽にって……」


「どうやるんだ?」


「光属性で建物を包み込み、入り口を塞ぎました。今回もやります?」


「た、試しにやってみるか?」



 みんなの昼食が済んだので、戦闘準備をする。


 洋館の前にエターナと進み、魔法を掛けようとした時、玄関が開きレッサーヴァンパイアが多数飛び出して来た。



「そう何度も上手くいくとは思わないことね! ホーホッホッホッ!」



 変な高笑いの聞こえるほうを見ると、バルコニーに露出狂の女のヴァンパイアがいた。恥ずかしくないのか? いや、そうか痴女か。



「お、お友達になりたいです!」



 どうぞ、血を吸われて呪われ死に戻れ。ダイチくん。



「既にお前たちの手はお見通しよ!」



 後ろに倒れんばかりに体を反って、こちらに指差している。なんとも眼福な光景……嘘です。そんなこと一切思っておりません。だからそのジト目やめて、レイアさん……。


 我々の前には重武装したレッサーヴァンパイアがいる。やるしかないみたいだな。



「残念ながら、柳の下にドジョウは二匹いなかったようです」


「フッ。ならるだけのこと」



 セイさん。なんて男らしいお言葉。ならっちゃいましょうか。


 レイアとエターナ、ミケが前衛に魔法を掛けていく。間違ってもデルタに掛けるなよ。敵にやられる前にデルタに切られるぞ。


 俺はレッサーヴァンパイアを鑑定していく。更紗さんも鑑定しているようだ。どうやら同じ考えのようだな。



「あの盾持ちのメイドが狙い目かな」


「なら、私はあの槍を持った奴にしてみよう」



 お互い狙いが決まったので、行動を開始する。


 盾持ちのメイドのレッサーヴァンパイアは、この中で一番スキルを保有している。それにうちのメンバーには盾役いないから丁度いい。それに名持ちだ。更紗さんの狙ってる奴も名持ちだ。珍しい。



「セアリアス、お前を消すには惜しい。俺に降れ」


「何を馬鹿なことを、我らは選ばれた種族。下等なヒューマンに仕えるわけがない」


「言っておくが、俺はヒューマンじゃないぞ。レア種族なんだけどな」


「ならば、私が仕えてもいいと思えるほどの力を見せてみよ!」


「いいだろう。で、どうすればいいんだ?」


「ふんっ! 私をひれ伏させればいいではないか!」



 盾を構え攻撃を仕掛けてきた。教本を見ているかのような、洗練された攻防一体の動きだ。隙がないな。攻撃も鋭く速いうえ、深追いもしない。いい腕だ、ますます欲しくなる。


 魔鋼装備に魔力を流し、全身に氣を纏わせる。


 セアリアスも雰囲気が変ったことに気づいたようだ。攻撃をやめて、こちらを窺っている。瞬動術で間を詰めて、剣を持った側の脇腹を狙う。



「グッ……」



 何とか反応して盾で防いだようだが力を逃がせず、盾ごとくの字になった。それでも踏ん張って立っているのは、根性がある。


 ヒビが入り曲がった盾を捨て剣を構える。まだやる気のようだ。防御を棄て攻撃に重心をおいた戦いに変えてきた。が、既に満身創痍の状態、動きが鈍くなる一方。剣撃を躱しつつ、狙いを定めて剣の腹に拳を叩きつける。パッキーンの音と共に剣が折れ、そのままの勢いで鳩尾を突く。



「グッハッ……」



 折れた剣を落としその場にうずくまる。これで勝負ありかな。



「ひれ伏してるようだが。降る気になったか?」


「ま、まだだ!」



 うずくまった状態からウォーターバレットを放ってきた。すんでのところで相殺できた。あ、危ねぇーよ! 気を取り直すため、深呼吸して完全に戦意喪失したセアリアスに話しかける。



「どうかな、まだやるか?」


「クッ、ひと思いに殺せ!」



 ふん。ひき肉前の子豚……もとい、引かれ者の小唄にしか聞こえんわ。それに潔くないぞ! そんなお前にはこうだ!


 両手を広げてひれ伏してるセアリアスの背中を踏んずけて



「さあ、ひれ伏させてやったぞ。俺に従え!」


「あぁ~ん♪ こ、これわぁ~ん♪ クッ……仕方ないんだから、仕方ないから従ってやるんだからな! ご褒美に屈したわけじゃないんだからな!」



 テイムが成功した……。


 あるぇ~? もしかして地雷踏んだ……気がする。




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