214 ダンジョンマスターの悪意
迷宮管理部のハイドールは更に困った顔をして、
「また来ますので……」
と言って消えていった。また来てどうするつもりよ? 知らんがな。
「おい。よかったのか? あれで」
「セイさん……よかったのか? って、迷宮のものを持って帰って何が悪いんです? 持ってかれるのが嫌なら、入り口塞げってんですよ!」
「いや、そうなんだが……俺、変なこと言ってるか?」
全員が首を横に振っている。じゃあ、俺が悪いのかよ。ふん。
そもそも迷宮は、人に来てもらってなんぼのもん。この迷宮の範囲はどのくらいなんだ? 街のほうは範囲に入っていないのだろうか? 迷宮単独だと確かに厳しいのか?
だが、それは無能なダンジョンマスターの責任であって、こちらの責任じゃない。
さあ、休憩は終わりだ。ヴァンパイア倒しに行きますよ。
階段を降りて地下に到着。作りはやはり同じのようだ。先に進むとキメラが出てきたが、みながキャッキャッと遠足気分で騒いで戦っている。緊張感の欠片もないな。
「な、なんにゃ。これはにゃー!」
「馬か? いや、トカゲ?」
「気持ち悪いですわ」
「……(コクコク)……」
「ゆう! しっかり盾役をしろ! それでは脇を抜けられるぞ!」
「わ、わかってるよ! 里香姉ぇ、煩い!」
「ゆうちゃん! 右!」
楽しそうで何より。
更に進むとお約束通り闘技場のような広い場所に出た。当然、全員が入ると後ろの入り口が閉じられる。
「ホーホッホッホッ! 混んでる日に居る暑苦し人ですわ!」
「「「……???……」」」
それをいうなら、飛んで火にいる夏の虫だろう!? ちっ、俺のお株を奪いやがって! 許すまじ!
「ここに入った以上、出られると思わないことですわ!」
露出狂のヴァンパイアが二階席から何やら喚いているな。両脇の鉄格子が開きモンスターが現れる。グレートオウルベアとエキドナと鑑定で出た。
グレートオウルベアは体長三メートルを超た、顔がフクロウ体がクマのモンスターだ。ファル師匠たちが相手をするようだ。
「デルタ殿。なるべく手出し無用で頼む。この者たちのよい訓練になろう」
「……承知した」
ファル師匠パーティーのメンバーが、顔を引きつらせている。頑張れ。
エキドナは下半身蛇、上半身裸の美人な女性だ。背中にコウモリの羽みたいのがあるが、飛べるようには見えない。注意はしておこう。ダイチがエキドナを凝視している。いっそ喰われちまえよ!
「セアリアス。前衛で盾役に徹しろ」
「承知した」
「おぉー。セアリアスさんみたいな美しい女性と、ご一緒できるなんて光栄ですよ。今度、二人っきりでお茶でもどうですかぁ?」
ダ、ダイチ……己と言う奴はブレねぇなぁ。逆に関心してしまう。なので、セアリアスに血を吸われて死に戻りする権利を進呈しよう。美女に殺されるなら本望だろう? ヴァンパイアに血を吸われている間は快楽を得られるって聞いたことがある。何度でも思う存分吸われるがいい!
エキドナが毒のブレスを吐いてきたが、レイアがすかさずブレッシングの魔法を唱えた。ブレッシングは異常状態軽減の祝福をパーティーに与える魔法だ。更紗さんたちが魔法を放ち始めると同時にセイさんたちが攻撃を仕掛ける。
エキドナは上半身で特殊攻撃と魔法を使い、下半身の蛇の尻尾でも攻撃してくる。パワーもあるようで下半身の攻撃を、盾で受けたダイチがのけ反っている。
セイさんたちも素早い下半身の攻撃と特殊攻撃に阻まれて、思うように攻撃できていない。なので手を貸すことにした。さくらがダークアロー、俺は雷属性付加でクロスボウを放つ。レイアは弓を使わず回復専門に徹している。
エキドナに徐々にダメージが入り始めた時、エキドナの動きが変った。
「何か来るぞ!」
ニンエイさんから注意がかけられたが時既に遅く、エキドナからファイアブレスが吐かれ、ダイチが火だるまになり転げ回る。
「う、うわぁー!」
ダイチにさくらがウオーターバレットを放ち消火し、レイアが回復魔法を掛けていく。セイさんたちは隙ができたエキドナにここぞとばかりに、アーツを放っていく。
「た、助かったぁ~」
さくら、次はウオーターアローで消火しなさい。
「みゃ?」
しかし、さすが、エキドナ。元女神で多くの怪物の母だけのことはある。トッププレイヤーが苦戦している。俺たちより下層にいるプレイヤーたちはこれをクリアして行ったんだよな、凄いパーティーだな。
また、エキドナの動きが変わる。
「さくら! ウオーターウォール」
「ミャッ!」
ダイチとセアリアスの前に水の壁ができ、ファイアブレスがぶつかり水蒸気があがる。視界が奪われ、セイさんたちもエキドナを見失ったようだ。
「上です!」
レイアが声をあげて、弓を放った。飛べたんだ……。更紗さんたちが魔法を放つ。俺もレイバーストを放った。エキドナは叫び声と共に落下する。
地面に叩きつけられ、動きが止まるエキドナ。セイさんたちにダイチ、セアリアスが一斉にアーツを放ちみるみるHPが減る。
それでも倒しきれず、エキドナが体制を立て直した。それでも瀕死だ。後一押しで終わると思えたその時、エキドナが声をあげる。エキドナの前に魔法陣が三つ現れ、ケロベロス、オルトロス、キマイラが出現した。
おいおい、なにやちゃってんのかなエキドナさん。反則じゃないですか?
「これってルークのせいじゃねぇ?」
「ダンジョンマスターを怒らせたってことか」
「充分ありえるな」
お、俺のせいかよ。だとしたら、この迷宮のダンジョンマスターってのは、なんてちっさい奴なんだ。あんなことで腹を立てるなんて、小者だな。真実は知らんが。
セイさんがドラゴンオーラを解放した。俺も行くしかないだろう。さくらをレイアの元に行ってもらい、前に出る。もちろんドラゴンオーラを解放した。
セイさんとニンエイさんがケロベロスを相手にし、俺はオルトロスの相手をする。キマイラはダイチとデクスがあたる。セアリアスはエキドナの牽制。残りのメンバーは適宜、援護だ。
二回戦の始まりだ。
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