206 ルーク、ヴァンパイアに会う

 階段を降りて探索を開始しよう。


 モンスターのランクが上がったな。格段に強くなっているが、ゾンビ系が出なくなったので逆に戦いやすくなった。本当にあいつらは有害モンスターだ。強いとか以前に臭くてキツイ。


 たまにレッサーヴァンパイアも混ざるようになってきた。流石に今までのモンスターとは格が違うな。喋る事はないようだが格段に能力が高い。魔法もアーツも使ううえ、味方を盾に使ってくるクレバーな戦い方をしてくる。なかなかに侮れない。


 魔法(光)もレベルが上がりライトゾーンという魔法を覚えた。ライトエリアの上位魔法だ。広範囲を光属性で囲う魔法だな。使いどころの難しい魔法だが強力には違いない。


 運よく階段を見つけたので降りると、プレイヤーのパーティーがいてこちらを凝視している。なんだ? やっぱりコスプレうさぎに驚いたか?



「どーもでーす」


「ハハハ……驚いたよ。まさかプレイヤーに会うなんて」



 話をするとウィズダムグリントの第四陣プレイヤーで、迷宮攻略組のパーティーのひとつだそうだ。


 俺たちの他にも、あと二つのパーティーがこのクエストに参加しているといったら驚いていたな。



「そうか、我々以外にもいるんだなぁ」



 はっきり言うとこの迷宮は人気がない。単純にクリアまでが長いし、意外とドロップアイテムやドロップ率がからいからだ。未だにクリアされていないし、ここよりほかの攻略を進めたほうが効率がいいからだ。ここが賑わうようになるのはもっと後のことだろう。


 お互いに情報交換をしたところこのパーティーには聖、光の魔法持ちがいなくて苦労してる。なので、これまでに手に入れた光属性が付与されたアイテムを全て譲ってやった。



「いやー、助かる。悪いね」


「うちはアンデット特化ですから、お気にせずに。それに、ニンエイさんやセイさんにもお世話になってますから」


「ニンエイさんが先!?」



 そりゃ、ニンエイさんのほうが実際に上だからだろう?



「「「「……」」」」



 なにも言わないってことは、心の中ではそう思っているんだろう。まあいいさ。彼らはまだ探索をするそうだ。俺たちはそろそろ戻ろう。


 翌朝の朝練でセイさんとニンエイさんにお礼を言われた。昨夜のパーティーがセイさんたちにメールをしていたようだ。律儀ですな。


 今日はニーニャとミーニャとメイド隊をケットシーの里に送った後、マーズの手伝いをしている。手伝いといっても材料運びだけどな。さくらのキティバックに入れての運搬だ。


 ルグージュの職人さんの所に行き材料を受け取り、アイントンさんの研究所に持っていく。北の砦から鍛冶などの経験者を集め、組み立てを手伝わせている。手の空いているドールにも手伝ってもらっているため、男共はやる気満々だ。頑張ってくれたまえ。


 食い倒れ屋に寄り特殊ボルトを受け取り、ウサギスーツの納品がいつかこんちゃんに聞くと、明日には出来ると言っていた。楽しみだ。


 夜は迷宮探索の続きに出発。


 今日はデルタとオールも同伴だ。やはりレッサーヴァンパイアが混ざると、三人ではきつくなってくる。まだ余裕はあるが保険だな。それに残りの二つのパーティーも気になる。二人には適宜援護をお願いしている。


 探索を開始してマップが半分くらい埋まったところで、目の前に立派な洋館が現れた。如何にも怪しいとい言ってくださいと言わんばかりだな。さっさと進めるためにもやるしかないんだろう。


 洋館に近づくと執事風の老人が出てきた。



「これは旅の方々、このような辺境によくおいでくださいました。我が主が皆様をお食事にお誘いしたいと仰せでございます。如何でしょうか、我が主に旅のお話などお聞かせ願えませぬか?」



 このご老人鑑定するとレッサーヴァンパイアとなっている。これ見えて構わないのか? 主って間違いなくヴァンパイアだよな。


 承諾し、ご老人について洋館に入るとメイドが並んでいるが、これも全てレッサーヴァンパイア。戦闘になると面倒になりそうだ。助っ人二人を連れて来て正解だったな。


 大きなテーブルのある部屋に連れて来られ、上座にヴァンパイアの男が座っている。



「ようこそお客人」



 エターナが目配せで床を見ている。落とし穴か? デルタとオールも気づいたみたいだ。ほーちゃんは……気付いてないな。飛んでるからいいか。



「さあさ、お座りになってください。すぐにお食事の用意をいします」



 面倒くさいのでみんなに目で合図を送る。皆、了解のようだ。


 ご老人の首を光属性付加の迅雷の小太刀で刎ねる。いつもなら光になって消えるのに、砂のようにサラサラと崩れ去った。特殊演出なのか? だが、呆気ない。



「ハァ……これだから外から来る者は嫌いだ。野蛮過ぎる」



 俺以外は部屋にいるレッサーヴァンパイアに攻撃している。



「あのさー。落とし穴に落とそうとしたお前がそれ言う?」



 つい、うりゃー言葉にごらぁー言葉……もとい、売り言葉に買い言葉をしてしまった。俺ももまだまだ未熟だ。



「ほう。気づいていたのかね。前に来た旅人は我々の供物となってくれたのだがね。クックック……」


「美味かったのか?」


「ああ、美味だったよ。残念ながら眷属にはできなかったがね」



 まあ、プレイヤーだから眷属にはならないだろう。死に戻りで済んだのだろうか? それともクエスト失敗になるのか?



「上階の街で流行ってる病気について知らないか?」


「病気? ハッハッハッ……病気か、確かに病気だな。救いようがないがな」


「特効薬があると聞いたが」


「知らんな。エサのことなどいちいち気にしていられんよ」


「そうか……じゃあ、消滅してもらおう」


「できるかな?」



 迅雷の小太刀で仕掛ける。だが、剣で受けられた。やはり、ただの雑魚キャラじゃないらしい。



「光属性か、厄介だな……」



 と言うと、落とし穴を開けて自ら飛び込んで行った。逃げられたのか? 部屋にはもう誰もいない。個々に掃討戦に移ったようだ。みんなと合流しよう。


 部屋を出るとそこかしこから、レッサーヴァンパイアが襲ってくる。レッサーヴァンパイアといえどこの数は厳しい。仕方なくドラゴンオーラで能力値をかさ上げして倒して行く。


 やっと玄関から外に出るとデルタの無双の真っ最中だった。


 デルタが切り倒したレッサーヴァンパイアをエターナとほーちゃんが消滅させている。オールは状態異常系の魔法で牽制しているようだ。その中に俺も加わり殲滅していく。


 最後のレッサーヴァンパイアの首を刎ねて砂になった。



「……奴はどうした」


「逃げられた」



 取り敢えず、屋敷内の探索だ。地下に続く階段があるはずだ。


 クエストらしくなってきたな。報酬が楽しみだ。


 こんなところでケチるなよ?


 ダンジョンマスター!






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