194 北の魔王

 ニーニャとミーニャはまだまだ遊び足りないようだ。元気だね……。


 取り敢えず、俺はにゃんこ共を捕まえて、ロープで簀巻き状態にして正座させている。



「酷いにゃ! ケットシー侵害にゃ」


「横暴だ!」


「う、うっ足が……」


「……(プルプル)……」


「なんだ、結構余裕だな。足に石でも載せるか」


「「「「ヒィー!」」」」



 ニーニャとミーニャが不思議そうに、にゃんこ共を見ている。これは拷問ではない、教育的指導だ。間違ってはいけない。


 そろそろ頃合いかな。



「立っていいぞ」



 にゃんこ共は、生まれた小鹿状態だ。トラなど立っては転んでを繰り返している。


 ニーニャとミーニャが不思議そうに、にゃんこ共を見ている。



「ニーニャ、ミーニャ。にゃんこたちが脚をさすって欲しいみたいだぞ。助けてあげなさい」


「あーい!」


「うにゃ!」


オーガオーガにゃ。ルークにゃん、オーガにゃ」


「ね、猫姫様、ご勘弁を~」


「さ、触っちゃらめ~」


「アババババ……」



 フフフ……思い知ったか。我を怒らせるとこうなるのだ。存分にニーニャとミーニャに介抱してもらえ。人の善意が苦痛となることがあると思い知れ。まあ、要するに、余計なお世話ってやつだな。



「お前は悪魔か……」



 セイさん、何ですかそれは、目にはシャドー、はにわはにゃ? ……もとい、目には目を歯には歯をって言うでしょう。


 にゃんこ共には制裁が必要なんです。なんてたってですから。


 ニーニャ、ミーニャ、そろそろ帰るよ。みんなにご挨拶してきてね。



「にゃんこ共、我をリスペクトせよ!」


オーガ!」


「悪魔!」


「大魔王!」


「……(拳がプルプル)……」



 なんとでも言うがいい。我、最凶なり。なんちって……。いつまで寝てんだ帰るぞ。


 戻ってきたニーニャとミーニャを抱っこして、降魔神殿に戻った。


 レイアは既にさくらを連れて、ノインスに行ったそうだ。


 ケットシーの里にでも行くか。クリスタルから、ゴムボールとなわとびを幾つか交換してケットシーの里に飛んだ。


 今日はメイド隊の半分を連れて来た。連れて行かないとうるさいからな。


 ケットシーのお子ちゃまたちが集まったので、なわとびを実戦して見せる。普通の飛び方から二重飛び、クロスに、エターナと一緒に飛んでみたりと、お子ちゃまたちは目をキラキラさせている。


 うむ。掴みはOK。次は長いなわとびをメイド隊に回させ、中に飛び込み飛んで見せた。お子ちゃまたちはやりたくてウズウズしているのがわかるが、まだだ。


 ここからがメインイベント。長いなわとびをメイド隊に二本持たせ、左右逆に回させる。ダブルタッチってやつだ。お子ちゃまたちから歓声が上がる。


 フッフッフッ、ちょっとした優越感……を味わったのはほんの少し。忘れてた、こいつら猫だった……。


 お子ちゃまたちは少し教えただけで、難なく飛んでみせる。メイド隊も調子に乗って、回転やスピードに変化を付け始めたが難なくついていってる。なんという動体視力と運動性能、俺にはついていけません。


 不貞腐れ、少し離れた所でゴムボールを使いリフティングしてると、男子のお子ちゃまたちがボールを目で追って、首を上下に振って見ている。狩猟本能が目覚めたか?


 数分後、ボールは全て奪われた……。それも、みんな俺より上手い。


 広場で不貞寝だな。おやすみなさい、寝溜します。


 昼に起され、昼食を食べた。サンドイッチだったが中身がよくわからなかった。あれは何だったのだろう。旨かったけどな。


 午後は、長に呼ばれ家に来ている。



「カルラ殿から連絡がありましてな、トレント族が我らと手を結んでくれるそうです」


「それは朗報ですね」


「少しずつですが、我らに賛同してくれる者が増えています。ポチ殿はこの大森林最大勢力を率いる大神殿と交渉しています」


「オオカミ? ですか?」


「はい。大神殿はオオカミ族の長です」



 成程、ポチさんは犬のコボルト、わんこ繋がりだな。オオカミもテイムしたいな。モフモフで可愛いんだろな。モフモフ、モフモフ……。



「ルーク殿? どうかなされましたかな?」


「あっいえ、すみません。己の欲望の妄想に走ってしまいました」


「はぁ……」


「それで北の魔王に関しては何かわかりましたか?」


「どうやら女の魔王のようです」


「女ですか?」


「大森林中央にもう一人の魔王がいるせいか、大森林の種族には手を出してはいません。しかし、配下にヴァンパイアがいるそうです」



 ヴァンパイア? オールが言ってた奴らか。オールの宿敵じゃないか、大いに奮闘してもらおう。俺にとっても相性がいいはず。もちろん、敵としてな。フフフ……我が糧となり消えさるがいいさ。



「ルーク殿、か、顔が怖いですぞ……」


「ヴァンパイア。楽しみですね。一匹くらいテイムしてみますか。アッハッハッハッ!」


「よ、余裕ですな。頼もしい限りです」



 そうなると、相手にもアンデッドがいることになる。何か手を考えないとな。ヴァンパイアだから吸血されるとヴァンパイアになるのか? オールに確認だな。


 面白くなってきた。ヴァンパイアハンタールーク誕生! フッハッハッハッ……。


 他にも話をしているうちに、ミーニャがやって来たので抱っこしている。眠いようではないので甘えたいのだろう。長がそんなミーニャを見て微笑んでいる。



「トムさんは何が目的で旅をしていたんですか?」


「長になりたくなかったんですよ」



 クロジさんに息子はいない。娘さんがいるが嫁いでいる。本来なら甥であるトムさんが、次の長になるはずだった。トムさんが亡くなったので、娘さんの子、要するにクロジさんの孫が次の長になるそうだ。



「この世界の秘密を知りたい、などとも言っておりましたな」


「ケットシーに秘密の暗号なんてありますか?」


「ないですな。ケットシー文字自体が我々以外読めませんので」


「トムさんの奥さんに心当たりはありますか?」


「そこが不思議でして、全く心当たりがないのです。ひとつだけ考えられるのが、他の大陸のケットシー族なのではないかと……」



 この大陸にはここしかケットシーの里がない。もちろん、里以外で暮らす者がいないとは限らないが、猫とは違い一度に生まれるのはひとりが普通なので、新たな里を作るのは難しい。この大陸以外にもケットシーがいるのはわかっているそうだが、接触を持つのが非常に困難だ。海を渡る必要があるからな。ミーニャのお母さんは渡来ケットシーかぁ。


 行ってみたいなよその国ってね。転移ゲート使えば行き来できないのかね? 向こうに転移ゲートが無いとも考えられる。魔王がいるだろうから、何時かは行くことになるだろうな。まあ、今はこの大陸のことで精一杯だ。


 その時が来たら考えるさ。




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