魔王(笑)のあるじ

193 イラつかせるのは才能です

　デラスコさーんご退場でーす。

「おい、もう代われ。こいつに用はない」

「なんだと!」

「デラスコ、おさがりなさい」

「くっ……」

　すごすごと席を立ち無駄に露出の多い服を着た女と席を代わった。

「シェリルと申します。以後、よしなに」

「もう、会うこともないかも知れんがな」

「つれないお言葉ね」

　ふんっ。知るか。お前に媚びる所以はない。こちらの益にならない限り、もう会うことはないからな。

「それで」

「クラーク様は人魚同盟と和睦したいと仰せです」

「してどうする。意味がないな。既にお前達は第十三魔王に宣戦布告をしているんだぞ。下部組織の人魚同盟と和睦したところで事実は変らない」

「我々は第十三魔王とことを構える気はございません」

「貴様らさっきから無礼だな。様を付けろ、様を。お前らとは格が違う存在なんだよ」

「……」

「争う気がないなら、クラーク（・・・・）はなぜ、ここを攻めた？　お前ら俺たちを舐めてるのか」

　エリーナは笑って、ファル師匠は首を振っている。それ以外は開いた口が塞がらない状態だ

「き、貴殿こそ、クラーク様を呼び捨てにするなど、無礼であろう!」

「俺は別格だ、魔王……くだらん。そんな使い古された存在、俺にとっては何の価値もない」

「で、では貴殿はなんだと言うのですか!」

「俺か？　そうだな、あれ（ラヴィーちゃん）の言葉を使うのは癪だが、覚醒者ってとこだな」

「覚醒者……」

「そうだ、魔王などという古く愚かで無価値な者の目を覚まさせる者。Dead or Aliveでな」

　フフフ……ぐうの音も出まい。自分で言ってなんだが図画持参……もとい、自画自賛だな。ファル師匠なんで上を見てるんですか？　アリーナ、エリーナ何故、口元を抑えている。オーロラを見ろ感動して泣いてるじゃないか。え？　笑いを我慢して泣いてるだと。お、おのれら……。

「わかっただろう。お前たちにはなんの価値もない。いずれ、俺に滅ぼされるだけのゴミだ」

「くっ……ですが、我々には第十三魔王様と戦う意思はこざいません」

「ならばもうひとつの教えてやろう。第十三魔王はダゴン様と懇意にしていただいている。そのダゴン様にクラークは啖呵を切ったそうじゃないか。邪神の眷属なら従えとな。ダゴン様は大層お怒りだぞ。あの方が動くと、この世界そのものが破滅しかねんというのに。クラークは大きく出たな」

「なっ!？」

「第十三魔王は沈むことが確定している船には乗らん。勝手に沈んでくれ」

「……どうしても和睦はせぬと仰せか」

「和睦？　ふざけるなよ。うちの下に付くというなら、命くらいは助けてやる」

「後悔なさいますな」

「どっちがだ？　近々、海竜王が目覚めるぞ。クラークは海竜王の一派を引き抜いたそうだな。海竜王が目を覚ますのが楽しみじゃないか。時世の読めぬ愚か者のクラーク」

「帰りますわよ!」

「周りは敵だらけ、お手並み拝見だな」

「くっ……」

　全員ご退場。話にならない。使者としてどうなんだ？　手札の一つでも持ってくるのかと思っていたが何もない。まともな部下もいないようだな。クラーク陣営は。

「どうしてでしょうか？　味方である私がイライラしています」

「私もです。ルーク様じゃなかったら、殴ってました」

「これが話術。口撃なのですね……」

「お主はなぜに……こんなに相手をイラつかせるのが上手いんじゃ……天性なのかのう」

　こいつら、あいつら以上に失礼だな。いつかシメる。

　明日必ず来るように言って、降魔神殿に戻って少しだけファル師匠と一杯やってから寝た。

　翌朝も可愛い爆弾が投下されて起きた。最近、寝不足のような気がする。日曜日が欲し。ニーニャとミーニャは元気があり余ってるようだ。何とかしなければ……。

　朝練に一緒に連れて行って見るか？　気晴らしにはなるかな？

「か、可愛いです!」

「猫姫ちゃんの妹にゃのか？」

「ケットシーの子か……羨ましいな」

　女性プレイヤー陣は歓喜に包まれている。ミーニャの初お披露目だからな。可愛いは正義だ。

「あの子はどうしたんだ？」

「ダイチ、触るなよ。純真なミーニャが穢れる」

「な、何言ってんの!　穢れるって……俺は女性に対しては最高にピュアなんだぞ!」

「消えろ。この俗物め」

「はいはい。兄貴はあっちで訓練しような。女性プレイヤーが待ってるぞ。女の敵ってな」

「ひぃー」

　コッコに襟を掴まれ引きずられて行った。南無さん……。

　ニーニャとミーニャは女性陣に任せて修行だ。座禅をくみ瞑想しながら氣を巡らす。

　どの位経っただろう。脚が痺れてきた。目を開けると、脚の間にミーニャが座っていた……。痺れるわけだ。これはまずい。誰か助けて～。脚の痺れにマヒ耐性効かないんだよ～。

「みーにゃ!」

　ニーニャが寄って来てミーニャの手を引いて向こうに行ってしまう。誰もホローしてくれない……。ああ、無常。その場で、脚が痺れて動けない。

「何やってるにゃ？　ルークにゃん」

「フフフ……これは」

「チャンスね!」

「……(コクコク)……」

　ま、まさかだよね……。触るなよ、触るんじゃな～い!

　散々弄られ、のたうち回った……。許すまじ……にゃんこ共。

　肩で息をしているが、やっと落ち着ついてきたところに、ひなさんたちが声をかけてきた。

「今日は何か持っていったほうがいいかしら」

「ひなさんたちはゲストですから、お気にせずに……ハァハァ」

「お花くらいー持ってくよー」

「そうだな、花がいいな。さくらちゃんはどんな花が好きかな～」

「お、おまかせしますよ……ハァー」

　来ていただけるだけで十分です。

　但し、ダイチの手綱をしっかりと握っていてくださいよ。なにせ、うちには女性が多いからな。

　目に余るようなら、首を刎ねるからな!