186 戦争への足音

 お腹いっぱい、夢いっぱいのルークです。


 イヤイヤながらも約束なので古城に来ました。七時前ですが、既にセイさんたちは来ていた。



「どうやって来たんだ?」


「秘密です」


「くっ、お前という奴は……」


「それよりどこに設置します?」


「日中に再度探索してな。ちょうどいい場所に隠し部屋を発見した。そこに設置して欲しい」



 その隠し部屋まで案内してもらう。



「なあ、あのご老人とどこかで会ってるか?」


「物産展の時に特別に呼んでるんで、その時に見たんじゃないですかね」


「あの時か……」



 隠し部屋は執務室の本棚の裏にあった。こんな所にもあったのか……。


 オールが台座を設置していく。



「設置するオーブはどこかのう?」


「設置するオーブは幾つで種類はいくつまででしょうか?」


「ここは広いでのう本来なら四つは必要じゃが、四つの塔にある魔法石を増幅装置に使えるでのう、二つでも大丈夫じゃのう。他の機能を付けるなら三つ以上かのう。種類は何でもよいが、使う属性によって付加が付くのう」


「これを設置すると何が付きますか?」


「土属性はこの拠点の防御が上がるのう。火と水は設置してみんとわからんのう」



 ということで設置しキーマンとして、セイさんとニンエイさんが魔力を流す。


 拠点に付いたのは、防御力UP、拠点内の水が浄化される、拠点内の温度が一定になるというものだ。水が浄化される? 綺麗になるならいいのかな? 温度が一定になる。何度設定なの?


 温度設定はできるようだ。二十二度から二十八度までエアコンだな。一応、二十四度に設定しておいた。これだけの広さをカバーするエアコン。ある意味凄い性能だ。


 練兵場に模擬戦ができる機能も付けた。火と水のオーブがあったので、余ったリソースで温泉も追加できた。ニンエイさんが抱きつくほど喜んでくてた。


 転移ゲートも城の中庭に設置してオールが調整する。



「調整が済みましたのう。他には何かありますかのう?」


「当面はこれでいいです。後日お願いする時はまたお願いします」



 オールは調整の終わった転移ゲートで帰って行った。



「凄い方だな、あのご老人」


「俺が知る限りでは最高の魔道具職人ですね」



 メカのコックピットより端のほう……もとい、亀の甲より年の劫と言うからな、無駄に長く存在しているわけじゃない。


 さて、これで依頼は問題なく完了した。帰って寝よう。



「今回の設置の報酬と、昨日の探索の分配をしたいんだが」



 ニンエイさん、明日で駄目ですか? 今日中にやっておきたい? そうですか。はぁ……。


 ニンエイさんに武器防具とお金は要らないと言っておく。



「いいのか? 結構性能のいい武器もあるぞ?」


「使う人がいないんで、必要ないです」


「なら、スキルのスクロールかな?」



 スキルのスクロールが結構見つかったそうだ。確認すると耐性系のスキルが多く、いいものが揃っている。一番良さげなのは炎属性と氷属性と雷属性だな。


 一つずつ確認して交互に選んでいく。俺が手に入れたのは雷属性、氷属性、毒耐性、火耐性、不屈、平常心。他には魔法石やポーション類を貰った。


 それか探索の手伝いの報酬と、オールの作業報酬として土のオーブと闇のオーブを貰った。なかなかの報酬だな。



 この城には夜が開けると大移動が始まるらしい。王都の近くにあった訓練施設を引き払って、ここがウィズダムグリント本拠地になる。


 お披露目式は五日後だそうだ。



「聞いているか? あみゅーのところも本拠地を移すそうだぞ」


「まさか……ライナスですか」


「そのまさかだな」


「国王に会って直々に本拠地を移さないかと言われたらしいな。あみゅーの奴」


「最近知ったのですが、その国王ファル師匠の弟弟子だそうですよ」


「拳聖の弟弟子……」


「あのお方の弟弟子弟子なら安心ではないのか?」



 ニンエイさんにしては甘い考えだな。



「国王はいい人そうです。ですが重臣共がちょっと……。現在、獣人族の求心力が一部、ニーニャにあるのが面白くないようでファル師匠を通して縁談という抱え込みをおこなってきました。もちろん丁重にお断りさせていただきました」


「猫姫ちゃんをかぁ……」


「それは許せないな」



 さて、本当に夜も遅いのでお暇する。



 翌朝、ニーニャ爆弾とミーニャ爆弾をキャッチして二度寝したら、ゼータ雷が落ちてきた。どうやら俺をゆっくり寝させる気はないらしい。


 みんなと朝食を取った後、エターナに氷属性スキル、ほーちゃんに不屈スキルを与えた。俺は雷属性、毒耐性、火耐性のスキルスクロールを使った。


 今日もみんなはケットシーの里に行くようだ。俺は北の砦に行く。



「どんな状況だ?」


「何とか様になってきたところだ」



 クルミナ聖王国から寝返った兵は騎士団でさえ練度不足だった。よくそれで魔王討伐に出てきたものだ。長い年月平和が続いたので、実戦なんてほとんどしていない。おそらく経験者もほとんどいないのが現実だろう。


 正直、このままでは使いものにならないので、実戦的な訓練をおこなってきた。内容はスケルトンに刃を潰した武器を持たせうえで実戦形式の集団戦をさせた。スケルトンは倒されても時間が経てば復活する。本気で戦える理想的な練習相手だ。


 前面に重装歩兵の盾部隊と槍部隊を配置して、中段にクロスボウ部隊、後方にロングボウ部隊を配置する陣形だ。それに機動力のある騎兵部隊が加わる。わかりやすいが堅実な陣形だ。


 これにアンデットとプレイヤーが加われば、総勢三万に近い軍勢となる。


 日中は第十三魔王ヒューマン部隊とプレイヤー部隊で戦い、夜間はアンデット部隊が夜襲をかける。相手に寝る暇を与えない作戦だ。


 これで勝てなきゃ、お手上げだよ。



「ランツェ、これを使え」


「いいのか?」


「役に立つはずだ」



 ランツェに平常心スキルを与えた。感情の起伏が激しいランツェには、有用なスキルだろう。



「街道の状況はどうだ?」


「後二ヶ月はまともに通れまい」



 この街道は一ヶ所山越えの場所がある。西に新しい街道が出来たため、モンスターも多いこの難所を通る者が少なくなった。重要性が下がったことにより、街道整備がおろそかになる。更に路が悪くなった。魔王の軍勢といえどたやすく侵攻はできないだろう。


 もちろん警戒は怠ってはいない。難所の手前に観測所を作り、飛行船部隊が常に警戒している。



 まだまだやることは多い。できるだけゆっくり来て欲しいものだ。




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