185 ルーク、苦労は買ってまでしません!

 古城について、今後の事を聞いておく。



「いつから作業に入っていいですか?」


「この後、引き渡しがあるのでそれ以降なら問題ない。但し、こちらの立会いがあるのが前提だ」


「立会いが前提というより、居てもらわないと起動できませんし、何処に設置するかも聞いていません」


「そ、そうだったな……」


「今日の夜でも構わないかい?」


「そちらがいいのであれば問題ありません。七時に現地集合でいいですか?」


「了解した」



 朝練が終わり降魔神殿に戻ると、俺を見つけたミーニャがダイブして来た。



「ウニャ~」



 ミーニャは今まで旅をしていた両親としか一緒にいなかっただろうし、両親が亡くなってからは幽霊以外周りにいなかった。他人とのコミュニケーションはほとんどないといっていい。ニーニャと一緒だ。



「今からケットシーの里に遊びに行くかい?」


「あい!」


「ウミャ?」


「レイアはどうする?」


「私はノインスで用事がありますので」


「じゃあ、レイアにはさくらがついていってあげて、お願い。ケットシーの里は……」



 一瞬、背中に悪寒が走る。これは強敵の気配……何奴!?



「私が承ります!」


「そ、そう、じゃあ、ゼータ頼むよ」



 断ったら俺を射殺さんとばかりの目力。お前か!? そんなゼータの一言に、メイド隊からブーイングがあがっている。また今度な。



 ケットシーの里にニーニャとミーニャそしてエターナ、ほーちゃんも置いてきた。エターナはケットシーの里に残りたい顔をしていたし、ほーちゃんは絶対、ケットシーのお子ちゃまたちの人気者になること請け合いだからね。



 部屋に戻ると使徒様ラヴィーちゃんからメールが届く。


 昨日のPKについて俺について確認を取っていた返事がきたようだ。


 既に俺にはPKという概念はないそうだ。俺もNPC……違うな、こちらの住人と同じ扱いになる。簡単に言えば、証拠がなければ衛兵に捕まることはないということだ。但し、証拠がなくとも状況証拠などで恨みは買うことはある。裏ステータスってやつだ。まあ、当然だな。


 今回の件は俺の仕業だとバレているはず、バレるように仕向けたからな。ただし、証拠を与えていない。これってPK仕放題じゃねぇ? やるつもりはないが、必要に駆られれば躊躇無くれる。ペナルティーなしは魅力だ。やり過ぎるとダークサイドに落ちそうだが……。



 オメガにレイアの部屋のレイアウト変更を頼み、オールに今夜古城に行く旨をを伝えてからソファーでのんびり本を読んでると、オーロラが血相を変えてやって来た。



「どうした? オーロラがここに来るなんて珍しいな。言っとくが悪い意味ではないからな。逆にもっと遊びに来てメイド隊の相手でもして欲しいくらいだ」



 メイド隊がウンウン頷いている。そこまで飢えてるのか? お前ら……。



「そう言って頂け、感謝致します。じゃなかった! 海竜王の使者と魔王クラークの使者が来ています」


「で?」


「で? ではございません! 如何致すのですか!」


「オーロラが好きなようにすればいいんじゃね?」


「……」



 オーロラは泣きそうな顔をしながらも俺をジト目で見てくる。



「ハァ……それでなんて言って来てるんだ」


「はい! 海竜王側の使者は寝返った者たちの討伐の手助けが欲しいと。魔王側は和睦をしたいと言って来ています」


「使者には会ったのか?」


「いえ、書状のみ預かっております」


「使者はどうしている」


「返事を貰わなければ帰れぬと、滞在しています」


「ダゴン様は?」


「既にお帰りになられました」



 ふむぅ。どうしようか? 情報がなさすぎる。ダゴン様がいれば何か聞けたかも知れないのだが……仕方がない、会って見るか。



「明日の夜、海竜王の使者に会う」


「魔王クラークの使者はどう致します?」


「ほっとけ。会うにしても海竜王の使者の後だ」


「承知しました」


「メインはオーロラだからな、俺はオブザーバーとして行く」


「わ、私ですか……」



 海のことは海の種族で解決するべき。手助けはできても、海の中での戦いでは俺たちでは手も足も出ない。キツイ言い方かも知れないが、人魚同盟の旗頭はオーロラだ。オーロラが毅然とした態度を取らないと同盟は空ちゅ……水中分解してしまう。



「明日の夜までには時間がある。アリーナ、エリーナと話をまとめておけよ」


「ハァ……。承知しました……」



 なんだその奥間に物が収まった……もとい、奥歯に物が挟まった言い方。そんなに嫌なのか? オーロラは一気に老け込んだように背を丸めて、トボトボと帰って行った。



 昼食をマーズの希望でラーメンを食べ、その後また本を読んでるうちに寝てしまったようだ。


 目を覚ました時、俺の両脇でニーニャとミーニャが寝ている。


 帰って来ていたようだ。エターナもほーちゃんも転移魔法が使えるから迎えに行く必要がない。今後はケットシーの村にみんなが行く時は任せていいだろう。


 起こさないように、抜け出す。



「ルーク。部屋が大きくなっているのですが……」


「ベットも増えてたろ、オメガに頼んでおいた。洋服箪笥なんかはレイアが選んでくれ」


「ハァ……。わかりなした」



 ついでなので、昨日の古城の探索の話を聞いた。


 それなりのお宝は見つかったそうで、全てセイさんたちに渡して来たそうだ。戦闘で手に入れたドロップアイテムはさくらが全て預かっている。さくらに見せてもらうとアンデットだけにエナジーコア以外素材はほとんどない。あるのは武器防具ばかり。ゲインのアジトに置いてこよう。


 唯一レアそうなアイテムがあった。スペクターロードのドロップアイテムの死霊の杖と怨念のマント。リッチのドロップアイテムで死霊の指輪、闇雲の杖がなどがあったが物騒なものばかりなのでオール行きだ。


 死霊の指輪など、死ぬとリッチにクラスチェンジできるようになるアイテムだ。コアなプレイヤーなら欲しがるか?


 ニーニャとミーニャも起きてきて、ファル師匠にマーズも来たので夕飯タイム。


 冬の定番、鱈ちり鍋にしてみた。もちろんポン酢でな。


 にゃんこ勢にはおおうけ、ファル師匠は燗で一杯やっている。夜の用事がなければ俺も一杯やりたいところだ。残念。


 プリプリの鱈にポン酢、最高! 途中でセリも投入、シャキシャキで大人には好評だったね。セリの根っこを食べていたら驚かれた。俺の故郷では普通だと言ったら、



「苦労したんだにゃ……」


「苦労は買ってでもしろと言うが……」


「貧乏は嫌ー!」


「……(コクコク)……」



 て、てめぇら!


 なんか行くのか嫌になってきた。





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