182 魔王と猫姫の妹
泣き疲れたのか子猫ちゃん……ミーニャは腕の中でぐっすりだ。
「これからどうします?」
「ニンエイ以外は探索を続ける。盗まれる前にお宝があるなら回収したい。」
盗賊なんてものは、野次馬の血を抜く……もとい、生馬の目を抜く奴らだ。油断した隙に全て持って行かれる。
ニンエイさんは北街道都市フィーアの商業ギルドに行って、この古城を正式に買い取る手続きをする。手続きが終わりここがウィズダムグリントの拠点になるまでは常駐できない。やるにしても広すぎるからな。調べられる所は調べたほうがいいだろう。
俺は一旦戻って、ケットシーの里に行かないとな。
「レイア。ここを任せていいかな? 俺はケットシーの里に行ってくる」
「わかりました。任せてください」
「さくら、エターナ、ほーちゃんよろしくな」
「ミャー」
「……(コクコク)……」
「お任せください」
お宝は俺たちにももらう権利があるので、今探しておかないと損だ。
「セイさん。転移ゲートと魔道具の設置はどうします?」
「転移ゲートは入手済だが調整はお願いしたい。先ずは、正式にうちのものになってからだな」
「了解です」
ミーニャを抱っこしたまま転移魔法を使った。ケットシーの里に着きクロジさんの家に向かう。
「これはこれはルーク殿、今日はどうなされた? 見かけぬ子をお連れのようだが……」
クロジさんに古城での出来事を語った。
「そうですか。トムの娘ですか……」
「どういったご関係ですか?」
「私の甥です。いつの間に結婚していたんだか、全く知りませんでした。それにこの子を残して先に逝くなど……」
クロジさんは寝ているミーニャを愛おしそうに撫でながらも、目に涙を溜めていた。しばし、会話もなくクロジさんが落ち着くのを待つ。
「この子はどうなせれるおつもりか?」
「クロジさんさえ許してくれるなら、ニーニャの妹として育てたいと思う。ミーニャの両親に託された愛しい命なので」
「猫姫様の妹としてですか?」
「甘やかすつもりない。だが、精一杯の愛情は注ぐ。それがこの子の両親と約束したことだから」
「トムの両親は既に他界しております。私の連れも既にいない今、この子を育てることは難しいでしょう。ルーク殿さえよければこの子を私からも託したいと思います」
「うちには三獣士もいる。ニーニャもきっと可愛いがるでしょう。なにより、さくらがこの子を可愛がっている。レイアもこの子のママになると言ってますから、安心してください」
「よろしくお願いします……」
二人の遺骨とバックを渡したが、バックはミーニャのだからと受け取らなかった。
また連れて来る約束をして、降魔神殿に戻った。
「その子はなんにゃ?」
「見た事がない子だな」
「誰かに似てるわ……」
「……」
ニーニャとメイド隊も興味津々のようで、俺にしがみついているケットシーの子を凝視している。
「あー、故あって今日からさくらとニーニャの妹になるミーニャだ」
「!?」
ニーニャが驚きの表情になったが、すぐにいつもの可愛いい表情に戻りミーニャに近寄ってきて頭をなでなでしてくれた。
「ウミャ~」
ミーニャは目を細め気持ち良さそうにしている。
「にーに!」
ハイハイ、抱っこしたいんでしょう。ソファーにお座りになってくださいませ、お嬢様。
ソファーに座ったニーニャにそっとミーニャを預けると、ニーニャはミーニャに頬をスリスリしてから優しく抱きしめた。ミーニャもニーニャの匂いをスンスンしてからギュッと抱きついた。どうやらお互い受け入れたようだな。良かった……。
その後はゼータ筆頭に順々にミーニャを抱っこしていった。にゃんこ共も抱っこしたがなんともぎこちない。危ないと思ったのかすぐにゼータがミーニャを奪う。
にゃんこ共が複雑な表情をしている。
「なんだ言いたいことがあるならはっきり言え」
「とっても可愛い子にゃ……けどにゃ」
「同じケットシーとして、後から来たこの子が、我らの主猫姫の妹と言われるとな……」
「私たちより偉いのね……」
「……」
「勘違いするなよ。お前たち。ニーニャは猫姫と呼ばれているが偉くはないぞ。ニーニャは猫姫という称号を勝ち取ったから、猫姫と呼ばれているんだ。ミーニャはニーニャの妹だが猫姫とは関係ない。普通に同族の幼子として扱え」
「ほんとかにゃ!」
「ミーニャは美人になるな」
「天使のような子ね」
「……(コクコク)……」
「あっ! 言い忘れてたが、ミーニャはクロジさんの甥っ子の娘だぞ」
「「「「……駄目じゃん(にゃん)……」」」」
いつの間にかミーニャとゼータ、メイド隊が居ない。どこ行った?
神殿内を探していると、クリスタルの部屋が賑わっている。中に入ると、ミーニャのファッションショーがおこなわれている……。
「何故、止めない?」
「ルーク様がどうぞ」
「嫌だ。目刺は食いたくない……」
オメガにも阻止できない強敵がいるとはな……。
「ミーニャだ。この子もさくらの妹として育てる」
「承知しました。それにしても、さくらお嬢様そっくりでございます」
「だろー。俺もそう思った。会った時から他人とは思えなかった」
ミーニャが走って脚にしがみついて来たので抱きあげた。
「ミーニャ。良く似合ってるよ」
「ウニャ~」
ギュッとしがみつき胸に顔をスリスリしている。疲れておねむなのかな。部屋で休ませよう。
ほら、お前たちもう終わりだ。部屋に戻るぞ。
部屋に戻り、ミーニャをベットに寝なせるとすぐに寝息をたてた。やはり疲れたんだろう。色んなことが一度に起きたからな。
メイド隊がベットを取り囲んでいる。
だから、お前ら他にやることないのかよ! いいか、間違ってもミーニャを起こすなよ。起こしたら只じゃ済まないからな!
まあ、可愛いは正義だ。寝顔を見てるだけでも飽きない。
ミーニャ、ゆっくりとお休み。
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