181 ボス撃破。そして魂の救済……
セイさん達と合流して経緯を説明する。
「なぜ、こう面倒事を起こすんだ。なあ、ルーク」
逆に聞きたい。なぜ、俺のせいになってるんだ?
「それで、その子はどうする?」
「もちろん、引き取りますよ」
「そういう意味じゃないんだが……」
ですよねー。
セイさんたちはすでににふたつの塔の宝石を浄化している。残るは後ひとつ。
やるしかないんだろうな。しょうがない、パッパと行って終わらせるか。
「ちょっと行って方つけてきますよ」
「ハァ……そっちは俺達が行くから、ボス戦の用意をしててくれ」
そうぉ? じゃあ、よろしくお願いいたします。子猫ちゃんは俺の腕の中でジッとしがみついてるから動きが取れない状態だからな。
「子猫ちゃん、どうしようか?」
「私がおんぶします。なので戦力にはならないと思います」
うーん。レイアンの攻撃力は惜しいな。ほーちゃんでは背負えないしな。となると
「エターナよりレイアのほうが攻撃力があるから、エターナが子猫ちゃんをおんぶしろ。無理に攻撃しなくてもいいから」
「……(コクコク)……」
セイさんたちが戻るまでに、昼食を取っておこう。
子猫ちゃんにサンドイッチを渡すとムシャムシャ食べ始めた。さくらにもツナサンドの切れ端と皿にアポンジジュースを出してやる。エターナとほーちゃんはおにぎりを食べている。レイアは子猫ちゃんの口を拭いたり、アポンジジュースを飲ませたり大忙し。
この間に、子猫ちゃんの両親の遺骨を回収しておこう。
大部屋に戻り、ストレージから大きめの布を二枚出して、遺骨を分けていく。遺品等はないのだろうか? ベットの下を見るとバッグがあった。内容量拡張タイプのようだ。回収だ。
みんなの所に戻るとセイさんたちも戻って来ていたので、セイさんたちにも昼食を取ってもらいながら話をする。
「ボスが見えたらチャットで連絡だな」
「他の部屋の探索は後回しでボス戦優先ですね」
「二体同時にと言っていたがどの位の誤差までOKなんだろうな?」
「チャットは繋ぎぱなしでいいんじゃないですか?」
「だな、盗み聞きする奴や邪魔する奴もいないしな。それでいこう」
セイさんと話している間、ニンエイさんと他メンバーは子猫ちゃんを囲んでデレ顔になっている。ニンエイさんのデレ顔なんてレアだな。
昼食休憩も済んだので、いざ決戦である。
その前に子猫ちゃんを毛布でくるみ、エターナに紐でおんぶさせる。ほーちゃんが横についているし、肩にはさくらが乗っているので何かあれば言ってくるだろう。
俺たちは地下側、セイさんたちは謁見室に向かう。結界のなくなった階段を降りていく。
スペクターやスケルトンなどの雑魚敵が出て来るが瞬殺していく。
十字路や部屋もあるが無視。幅の広い通路がまっすぐ続いている。最奥が祭壇なんだろう。迷宮などと違って迷路じゃないので楽だな。敵を倒しつつ最奥に着いた。見るからに豪華で大きな扉がある。恐らくボス部屋の前だろう。
ちょうどセイさんからチャットが入った。
『こっちらは謁見室の前に着いた。そっちはどうだ?』
「こちらも、おそらく祭壇のある部屋の前にいます」
『よし、なら乗り込むぞ』
「了解」
エターナに扉を調べさせてから中に入った。中は思った以上に広く、奥に祭壇らしきものがあり、その前に司祭の格好をした幽霊がいる。
「迷える子羊よ、ここに何しに来たのだ?」
「あなたが城主の息子か?」
「いかにも。本来であれば神に捧げるこの魂……あの馬鹿者のせいで穢れた魂になってしまったわ」
「私たちはクルミナ聖王国と対峙する者です。あなた方と敵対する気はないので、この城を解放してくれませんか?」
「無理だな。この城は禁呪で縛られている。そして私はこの城に入った侵入者を排除するよう縛られた身。この城が欲しくば我らを倒すがよい」
当たればグダグダ……もとい、当れば砕くって感じ? このイベントは避けては通れないのね。
司祭の姿からスペクターの姿に変わっていき、更に凶悪な姿に変わっていく。
〈スペクターロード Boss Lv102〉つ、強ぇーよ。こいつ!
「ボスがおいでましたよ。ちょっと強くないですかぁ?」
『こちらもおでましだ。久々に戦いがいのある相手のようだ』
これだから戦闘狂の脳筋は……。
スペクターロードの周りに魔法陣が複数現れ、スペクターバロン、スケルトンナイト、リッチまで盛り沢山のご登場。総勢五十を超えている。
「魔法主体で攻撃!」
レイアもエターナも魔法(光)が使える。二人に攻撃を任せて、俺はライトシールドでリッチの魔法攻撃を防ぐ。
ほうちゃんが持つ聖なるオーブのおかげで、スケルトンナイトなどは積極的に攻めてこない。スケルトンウォリアーなどは動きさえしない。
レイアが弓を構えてアーツを放つ! お得意の光属性のアローレインだ。動かず固まっていたスケルトンウォリアーの頭上から光の矢が降り注ぎ、あっという間に光になり消えた。
俺もレイバーストをスケルトンナイトにお見舞。追撃でエターナのライトジャベリン、さくらのウォータージャベリン、ほーちゃんのファイアアローがスケルトンナイトに突き刺ささり光になる。
リッチの魔法攻撃がウザい。迅雷の小太刀を持ち光の精霊を呼び出し防御を頼み、リッチに突っ込む。迅雷の小太刀に光属性を付与して何度も切りつける。リッチの攻撃で精霊が残りひとつというところで止めを刺せた。
周りにはボス以外で数体のスペクターバロンしか残っていない。
「こっちは残りボスだけです。そっちはどうです」
『くっ、早いな。こっちは手こずってる。もう少し待ってくれ!』
スペクターロードからダークボールが飛んでくるが、光属性持ちの俺がライトシールドで受け防ぐ。殆どダメージを受けない。光属性様様ですな。
「スペクターバロンは一体だけ残して殲滅!」
雑魚は全滅させないは基本。と思っていたら、スペクターロードがスケルトンナイトとスケルトンウォリアーを召喚しやがった。定石潰しかよ!
ほーちゃんが飛び回ってスケルトンウォリアーを消していく。スケルトンナイトはレイアたちが消していく。俺はスペクターロードに注意するだけ。
ん? これ無限ルーティンになってない? 経験値稼ぎにいいんじゃないかいか? セイさんたち次第だが……。
この無限ルーティンを三度繰り返したところで、
『こちらも残すはボスだけだ、一気に行くぞ!』
「了解」
「みんな、全力攻撃!」
レイアは今まで見たことがない連続攻撃で四方から敵に矢が飛んで行くアーツを。エターナはフラッシュバーストで牽制。さくらはウォーターカッター。ほーちゃんはファイアジャベリン。
もちろん俺はドラゴンオーラ使用バージョンの死剣光属性付加で攻撃。今出せる最大パワーで攻撃した。
あっという間にスペクターロードは光に消えたな。
「終わりました」
『はえぇーよ!』
少し経ち、
『古城の怪奇 Bossを撃破しました』
ん? クエストクリアじゃないの? そうか、魂の救済か……。
みんなと中央広場に急ぐ。そこには多くの幽霊が集まっていた。
「おい、ルーク。一体なにが始まるんだ。クエストもまだ終わってないぞ」
「魂の救済ですよ……」
目の前に塔であった貴婦人の幽霊と、年老いた貴族風の男の幽霊がいた。
「あなた方のおかげで、魂の縛りが消えました」
「これでやっと、償いを受けることができる。感謝している」
どうやらこの城の城主のようだ。
「この城のなかにあるものは自由にしてくれ。残念ながらこの城はやれんが」
「気にせずに、こちらの者がこの城を買い取る予定ですから」
「そうか……大事にしてくれ」
「ええ。大事に使わせていただききます」
ほーちゃんから受け取った聖なるオーブを前に出して、
「これに触れてください」
「凄い光ね……触れればいいの?」
貴婦人の幽霊が聖なるオーブに触れると、体が宙に浮いて行く。
「光の路が見えます……」
「天界に続いているはずです。今度は
「ありがとう。闇の勇者殿……」
そう言ってどんどん登っていく。
「さあ、みなさんも触れてください」
幽霊たちが天に登っていく。途中、司祭の幽霊がお辞儀をしていった……。
多くの者が天に還った。
俺の目の前に二人のケットシーが立っている。
「うにゃ~」
子猫ちゃんが幽霊に触れようとするがすり抜けてしまう。
「私の可愛いミーニャ。ごめんなさい……」
「お前を置いていくのが心残りだ……」
「うにゃにゃ……」
ケットシーの二人は触れないながらも、子猫ちゃんを抱きしめる。
「この子は俺たちが責任を持って育てる。信用できないというのであれば、ケットシーの長さんの元に届けてもいい」
「長をご存知ですか……」
「娘をよろしくお願いします。私たちが与えてやれなかった愛情を与えってやってください……」
「私がミーニャちゃんのママになります。必ず幸せにしてみせます。だから……安心して……くださぃ。グスン……」
「長にはトムが逝ったとお伝えください」
やはり、長を知っていたか……。
「承知した」
「「嗚呼、私の可愛いミーニャ。君(あなた)の身に幸が多いことを願ってるよ……」」
「うにゃ~~~~!」
二人のケットシーも聖なるオーブに触れ、天に還った……。
『クエスト古城の怪奇 魂の救済をクリアしました。全ての魂が天に還り安らぎを得らんことを……』
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