183 ルーク、再び古城へ

 日が暮れた頃、さくらたちが帰ってきた。


 レイアが現状を見て不満そうな顔をしている。レイアの前には大量の子ども服が積みあがっていた。



「ほら、ミーニャの着る服がないからね、ゼータたちに頼んだんだよ、ニーニャも一緒にね……すみません」


「怒ってはいません。どうするんですかこの洋服、こんなに……ミーニャだってすぐ大きくなりますよ」


「すみません……お前らも謝れ!」



 ゼータもメイド隊も、自分じゃないよーって顔をしてやがる。裏切り者め……。


 ファル師匠も帰って来た。周りが騒がしくなってきたせいか、寝ていたニーニャとミーニャが目を覚ました。ニーニャはレイアに抱きつき、ミーニャは俺に抱きつく。


 さくらはぷかぷか浮いている。結構気に入っているようだ。



「なんじゃ、ケットシーの幼子か? 愛らしいのう」


「ミーニャと言います。ケットシーの長の身内ですが、うちで育てることになりました。さくらとニーニャの妹としてです」



 ファル師匠がミーニャを抱っこするが、ミーニャは嫌がっていない。見た目はこんなに厳つい爺さんなのに、子ども受けはいいんだよな。ラッシュラビットの特性か?



「なんじゃ、ミーニャも爺の髭が好きか?」


「ウミャ~」


ハオハオ



 ニーニャもファル師匠に抱っこして欲しそうに見ている。



「ニーニャ嬢ちゃんも爺がいいか?」


「あい!」


「爺はモテモテじゃのう」



 そう言ってニーニャも抱っこしてくれた。


 そういえば、ファル師匠にはご家族はいないのだろうか? 聞いていいのか微妙なんだよな。自分のことは話したがらないから。


 夕食はいつにも増して、大賑わい。


 ミーニャはお子様ランチ、ニーニャはハンバーグカレー。ニーニャはさっさとハンバーグカレーを食べ終わり、せっせとミーニャの世話を焼く。そんなお姉ちゃんとしての姿をみんな微笑ましく見ている。


 夕食後、ミーニャの両親のバックを調べた。


 日記帳、地図、着替え、など身近なもの他、スキルのスクロール、たくさんの宝石類に剣等が入っていた。


 スキルのスクロールは初級スキルのものだった。さして必要でもないので着替え等の服と一緒に保管。ミーニャが大きくなったら使えばいい。


 宝石類は俺では価値がわからないのでオメガに渡そう。


 剣は魔法付与付きのレイピア二本と短剣だった。ミーニャのご両親が使っていた装備だろう。これも保管でいいな。


 最後に日記帳と地図だが……これは色々と検証が必要そうだ。にゃんこ共にケットシー語で書かれた日記帳と地図の翻訳を頼む。詳細は翻訳と検証が終わってからだ。


 ミーニャの両親はなにを探っていたのだろうか……。


 女性陣がお風呂に入り終われば、ニーニャとミーニャのお休みの時間だ。


 ミーニャは俺と離れたくないらしくイヤイヤしていたが、さくらとニーニャの説得? もあり、レイアの部屋で寝ることになった。小さいミーニャには母の温もりのほうがいいに決まっている。



 オールの所に行く途中にマーズと会った。



「ほい。完成品」



 寄こしたのは新型クロスボウ、出来たみたいだな。



「で、どうなんだ?」


「素材を代えて強度を増して、威力を上げた。そのせいで木のボルトは使えなくなったね。特注のボルトが必要になっちゃった。だけど劣化版の木のボルトが使えるタイプも作ったよ」


 ふむ。今までのクロスボウよりだいぶ小型化している。若干重い気がするが、片手でも持てないわけではない。安全装置もついている。ほぼ銃だ。


 木のボルトを使うほうは軽く扱いやすそう。弓の使えない者でも、これさえあれば即戦力になれる。



「どの位作る?」


「レバー式のクロスボウはどの位あるんだ?」


「千丁ほどあるよ」


「二千は欲しいな。この二つの新型はどの程度、性能が違う?」


「威力も値段も二倍、二倍!」


「一丁で百丁分と五十丁分か……でかいな。雪解けまでにどの位作れる?」



 だが、そんなことは言ってられない。戦うには数が必要だ。



「レバー式は千丁は可能だね。時間の空いたドールたちが、部品の組立をしてくれている。新型はレバー式を優先させると、二百前後かな」


「新型は木のボルトの方を作ってくれ。特注ボルトは何本ある?」


「予備弾倉がふたつにボルトが百本」


「あと、二百欲しい。榴弾砲は?」


「強度検討も終わって設計図は作った。材料が揃えば試作品を作るよ」


「頼む、他に何かあるか?」



 マーズの必要とする物なら、間違いなく必要な物だ。



「うーん。食事をしてみたい」


「食えんの!?」


「食べれる。使徒様ラヴィーちゃんに確認は取ったよ」



 マジですか……食えるんだ。他のドールたちも食えるのか? 後で確認しよう。



「なら、一人で食べるより、みんなで食べたほうが旨いから、飯時に部屋のほうに来るといい」


「らじゃー!」



 オールを見つけた。



「今、空いてるか?」


「何ですかのう」


「こないだ話した、拠点のセキュリティーの件だ。一度見てもらいたい」


「構いませぬが、どうやって行くのかのう?」


「転移魔法で」



 この世界に召喚されたからなのか、スキルレベルが上がったからなのかはわからないが、ある程度自由に転移できるようになっていた。今までは転移場所が決まっていたが、こっちに来てからはマップと連動している。もちろん、行ったことのある場所しか転移はできないのは同じ。迷宮も転送石が必要なくなり便利になった。得意属性の恩恵とも考えられる。



 さて、オールを連れ古城に転移した。


 ん? おかしい。人の気配が感じられる。セイさんたちは帰ったはず。



「エターナ、ちょっと調べてこい」


「……(コクコク)……」



 エターナが闇に消えた。



「ほーちゃん、これ使えるか?」



 ほーちゃんに木のボルトタイプの新型クロスボウを渡した。



「武器……ですね。なんとか、扱えると思います」



 ざっと使用方法を教えて予備弾倉も渡しておいた。空中からの狙撃。効果抜群だろう。



「大きな城ですのう」


「クルミナ聖王国と北方連合との戦いの最前線の拠点だったからな」


「もしや、禁呪の城ですかのう?」


「おそらくそうだ。アンデッドしかいなかった」


「我が師ジル様の書庫から盗まれた禁呪ですのう」



 大元の元凶はお前らか! 弟子が弟子なら、師匠も師匠だな……。あっ! 木が折れ、モモンガイエーイ……もとい、呆れてものが言えん、だぜ……。



 エターナが戻って来た。


 さて、どこのどいつが侵入したんだ? 


 せっかくだ。オールの儀式の生贄にしてやろう!





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