162 クランマスター暗殺計画

 叡智の塔、神と邪神の戦い以前からあったといわれていおり、今の神の前世代の神が創ったとか、その時の神の眷属が創ったといわれる古代遺跡。


 多くの伝説に名を残すが、その場所を知る者はいないとされる。ここに居たけどな。


 それはさておき、多くの知識が塔の中にあり、今現在も知識を吸収し蓄え続けている。その塔に入る事ができれば、世界を知る事ができるとさえ言われて場所である。


 ダゴン様談。


 その場所を魔王が支配しているのである。危険極まりない。



「厄介な場所を支配されているね。どうやって解放したのか知らないけど、侮れない相手には違いないよ」


「そこまでの場所なのですか?」


「真実かどうかは知らないけど、ここで話してる事さえ、叡智の塔の知識として保管されると言われている」


「情報が突っつ抜けって事ですか!?」


「噂の範疇だけどね」



 それが本当なら、最強の魔王はそいつだな。まあ、正直眉唾ものだけど。だとしても多くの情報を持つ魔王は危険だ。頭が痛いな。



「さらに悪い知らせで申し訳ないが、海竜王派が分裂の危機にあるようだ」


「どういうことでしょうか?」


「ゾディアックと同じだよ。海竜王派の一派が魔王と手を組んだようだね。魔王クラークも馬鹿ではなかったということかな」


「どうなるとお考えで?」


「魔王クラークの取り込みが早いか、海竜王が目覚めるのが早いかで変わってくるけど、行く着く先は変わらないと思うよ」


「どちらに転んでも大きな戦いになると?」


「そうだね。海竜王が目覚めても直ぐに力が回復するわけではないからね」


「同盟の引き締めと、海竜王派との友好を強めた方が良さそうですね」


「そうなるね」


「世界が大きく動くのでしょうか?」


「私にしてみれば微々たるものだがね。だが、中には己の身をわきまえない者が出てくるのも事実。困ったものだよ」



 と言いつつも、あまり気にした様子はない。ダゴン様にすれば足元に居る蟻程度なものなのだろう。



「これも邪神の思惑なのでしょうか?」


「どうだろう、のお方の御心など理解不能だよ。だからこそマイハニーに頑張ってもらいたいね。魔王らしからぬ、優しき心を持つ魔王。マイハニーが天下を取ったら、さぞかし楽しい世界になりそうだからね」


「ミャ~」


「マイハニーの為にもルーク君が頑張ってくれたまえ」


「……善処します」



 気が重いまま、ビーチに戻った。


 みんなは夕暮れの中、キャンプファイアの周りでフォークダンスを踊っていた。君たちは楽しそうだね……。


 レイアの隣に座りみんなの踊りを見ている。



「どうでしたか?」


「余り思わしくない状況かな」


「大丈夫なのでしょうか?」



 レイアが俺をまっすぐ見つめてくる。その憂いながらも美しい顔にドキリとしてしまった。



「今すぐどうこうということじゃないから、安心して良いよ」


「私達はどうすれば良いのでしょうか?」


「今まで通り、できる事をやっていくしかないね」


「さくらちゃんの為にもですね」


「そう、さくらの為にもね」


「ミャ~」



 みんなも満足したのか、帰りの準備を始めた。


 クランの主要メンバーだけは、話があるのでこの後イノセントハーツの砦に来てもらう約束をして解散になる。イノセントハーツ以外のメンバー

 を送り残りを連れ転移魔法で飛んだ。


 会議室に入っても、まだビーチの話で盛り上がっている。


 お茶が配られ全員が揃ったので話を始めよう。



「クランに戻ればわかる事ですが、クルミナ聖王国が第十三魔王の討伐を布告しました」



 皆、驚いた表情をしている。



「早いな……」


「これから冬だというのに、戦うつもりかな?」


「よほど焦っているとみえるにゃ」


「何か裏があるのだろうか……」



 暴挙としか思えない。みんなそんな顔をしている。



「北だけでなく南の海でも魔王が活発に動いているそうです。当面、俺達には関係ないですけどね」


「連動しているのか?」


「わかりません」


「ゾディアックに潜り込ませている者からの情報では、近隣の国や先の魔王討伐時に手を貸した種族に使者を送ったみたいです」


「潜り込ませてるって、誰だよ?」


「最近、シルバーソードが多くのPK連中をゾディアックの駒して雇ったので、逆にそいつらを勧誘してこちらに引き込みました」


「ケインはやはりクズだな。だが、ルークも大概だがな」



 失礼ですね。セイさん。俺は彼らがもっと楽しく遊べる場所を提供しただけで、単に利害が一致しただけだ。



「それでどうしたにゃ?」


「その雇われPKをスパイとして使ってます」


「ルークは悪どいにゃ……」


「だが効果的だ」



 でしょう。ニンエイさんもっと褒めて。



「それで、ここに我々を集めた理由はなんだ?」


「そのスパイからの情報で、みなさんクランマスターの暗殺が決まったみたいです」


「馬鹿な! 何の意味があるんだ!」


「精神的なものか……」



 でしょうね。我々プレイヤーは死んだところで、どうということはない。狙いは精神的なダメージだろう。ゾディアックがそこを理解しているかはわからないが。



「セイさん、あみゅーさん、更紗さん、各サブマスターが標的です」


「他のクランマスターは?」


「今の所、手が回らないそうです」


「反ゾディアックの主要クランを狙ったのか……」



 ひなさんは狙われなかったようですが、違う意味で狙われてますから。後でで良いか……。



「気を付けなければいけないのが、街中でもPK可能ということです」


「なぜ、そんな事ができる?」


「クルミナ聖王国が雇ったからですよ」


「そういうことか……」


「ねぇ、ねぇ。なんでにゃ?」


「PK連中を国の組織のひとつにすれば、この国の中では役人みたいな立場になります。国の命令で暗殺する者が、国に捕まりますか?」


「ずるいにゃ!」



 極力単独行動を控え、スカウト系のプレイヤーを連れて歩くしかない事や、毒対策をするといった話をした。



「それからひなさん。以前、話した事がおきます」


「砦の事?」


「はい。一度、GMに確認を取った方が良いかもしれませんね」


「何の話だい?」


「今回の討伐でこの砦を接収する話があるそうです」


「そんなことできるのか?」


「わからないので、GMに聞いた方が良いかと」


「徹底交戦あるのみよ!」


「手を貸すにゃ!」



 まあ、戦いになることはないと思うけど、変なあげ足を取られるのは釈だからな、対策はしていた方が良い。臭い川も深く潜れ……もとい、浅い川も深く渡れと言うしな。


 刻一刻と戦いの時が迫ってる。


 準備が間に合うか不安だな。





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