161 束の間の休息

 十六階層で転送石に記録し、降魔神殿に戻った。


 着いた際にデルタがストレージに何か送ってきたので確認すると、PKからのドロップアイテムだ。笑えるくらいゴミしかない。街に入れても武器防具は買えないようだ。だから武器を欲しがる訳だ。このゴミは投擲スキル上げに使わせてもらおう。


 さて、明日も忙しいからさっさとログアウトしよう。




 翌朝は店屋物椀物の……もとい、てんやわんやの大騒ぎのドタバタ。


 オメガ、オール、デルタ以外は全員参加。


 俺以外はビーチ直行、俺はみんなとの待ち合わせ場所に向かう。


 お、多くないか? 五十人くらい居るんですけど。これにひなさんたちが加わるのか……。



「なんですか! この大人数は!」


「いやー。これでも人数減らしたんだぞ」


「この半分の食材しか用意してませんよ」


「問題にゃいにゃ! イーリルで買ってきたにゃ」


「飲み物も用意してきたから大丈夫だと思うが」


「ハァ、離れないでついて来てください。リンネたちは最後尾につけ」


「「了解(です)」」


「キュピッ」



 なんかバスガイドの気分だな。プレイヤーの御一行様おつきで~す。旗でも作ってくれば良かったよ。


 ビーチに着くとひなさんたちも来ていた。


 みんな、この人数に驚いている。


 パラソルや敷物なども足りない。露店で使ったテントを組み立てるか。ダイチ、メイドと話してないで手伝えー。


 それからプレイヤーの男性諸君、さっさと進め! メイド隊に目を奪われるのは構わないが、邪魔だ!


 プレイヤーの女性陣も、自分の胸見てため息をつくな。幸せが逃げるぞ! 気持ちはわからないでもないがな。



「これが君のプライベートビーチかい?」


「名義的に言えばさくらのですけどね」


「さくらのなのかい? それにしてもチャーミングな水着だね」


「ミャー」



 更紗さんがさくらを抱き上げモフり始めた。



「眼福、眼福」


「いいんですか? ニンエイさんに嫌われますよ。セイさん」


「それとこれとは別物だ。目の前に素晴らしいものがあれば、見るのは当然だろう?」


「だよな! 男として当然だよな! そこに美しい女性が居たら、声を掛けないほうが失礼だよな! わかる、わかるぞ~!」


「なんでダイチはこんなに興奮してるんだ?」


「気にしなくて良いですよ。いつもの事です」


「そ、そうなのか……」



 どうやらプレイヤーの女性陣の着替えが終わったようだ。


 殆どが目をそらしてしまう中、三大ナイスバディが登場。


 サキさん、ニンエイさん、あみゅーさんだ。


 前の二人はわかっていたが、あみゅーさんて着やせするタイプだったのね。



「こんな良い場所持ってるなんて、流石うちのプレジデント」


「サキさん。いつから俺はプレジデントになったんですか? どちらかと言えばオフィサーですよ」


「どっちでも良いじゃない。それより、ここうちの福利厚生に使わない?」


「それは良い考えだ。我々のクランもお願いしたい」


「うちの子たちも喜ぶな」


「砂浜で昼寝は最高にゃ!」



 何勝手な事言ってるんだよ! それにいったい、なんの福利厚生だ。却下、却下だよ!



 そんなこんなで、みんな楽しんでいるようだ。


 昼食時になり、オーロラたちが来るとまた騒ぎ始めた。この親子もナイスバディだからな。仕方ない。


 オーロラたちが持ってきた魚介類に、プレイヤーが持ってきた食材で大バーベキュー大会になった。


 今日もせっせと海老を剥いてます。ニーニャはパクパク食べてます。にゃんこ共はプレイヤーにちやほやされている。なのでレイアとニーニャだけに提供している。


 さくらはゼータに魚をほぐしてもらいハムハムしている。さくらもニーニャも満足顔。


 エターナはいろいろな場所に行っては味見をして、メモをとっている。一体、そのメモは何に使うんだ?


 みなさん、お腹も一杯になったので各々昼寝する者もいれば、ビーチバレーや泳ぎに行く者もいる。


 俺は釣りでもしようかと準備をしていると、オーロラが血相を変えてやって来た。



「ルーク殿、大変です」


「そうみたいだな。どうした?」


「クルミナ聖王国が第十三魔王の討伐を布告しました!」


「そうか……思ったより早かったな」


「わかっておいでだったのですか?」


「まあな、そのための準備はしてきた。安心して良い。ここは第十三魔王との関係を知られていないからな」


「ですが……」


「オーロラは魔王クラークの方を頼む。それから、今回の第十三魔王というのはさくらではなく、影武者の方だからな」


「ランツェ殿と仰られる方ですね」


「今回の件が片付いたら、一度顔合わせをする」


「承知しました」



 みんなには帰りにでも伝えよう。楽しんでる今、話さなくても良いだろう。さっそくスパイのゲインからもメールが届いている。後で確認しよう。


 今度はアリーナがやって来た。今度はなんだ?



「ダゴン様がルーク様にお会いしたいと、伝言をお預かりしております」


「え? ダゴン様ってまだ居るの?」


「はい。いつものお部屋に」


「帰らなくて良いの?」


「……さぁ?」



 レイアにダゴン様の所に行くと言って、さくらとダゴン様の居るロイヤルスイートルームに向かった。



 ドールのメイが出迎えてくれ、ダゴン様の元に案内される。



「よく来てくれたね。マイハニー」


「ミャー」



 さくらはいつものように、ダゴン様の手にスリスリする。



「帰らなくてもよろしいのですか?」


「なんだ、ルーク君は私に帰って欲しいのかね。寂しい限りだよ」


「楽しんでいただいているのであれば良いのですが、ご領地の方は良いのですか?」


「なに、優秀な部下がちゃんとやってるよ。扉が開いたところでで、世界が少しばかり混沌とする程度だよ」



 いやいや、それが不味いんじゃないの? ダゴン様のスケールだと、少しばかりで人類滅亡してももおかしくないからな。



「君も既に聞いたと思うが、ゾディアックが動いたね」


「はい。冬が明けてから動いて欲しかったのですが……思ったより早かったです」


「準備はどうなんだい?」


「ギリギリ間に合ったかな……というところですね」


「勝つ勝算は」


「ゾディアックだけなら完勝。魔王が絡むと痛み分けで辛勝でしょうか。正直、魔王に対する決定打が用意できていません。それに北に魔王がもう一人居るようです。先日、接触してきました」


「ほう。それは初耳だねぇ」


「大森林にある叡智の塔を支配している、魔王アイトと言ってましたよ」


「そうか、叡智の塔か……それは厄介だ。既に解放されていたのか。さっさとジルが封印していれば良かったものを……」



 もしかして、ヤバイのか?


 魔王の使者を追い返しちゃったよ。


 俺……。





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