159 ルーク、最終兵器投入!

 エターナとツヴァイスの迷宮に来ている。


 が、何かがおかしい。モンスターのエンカウント数が少ない。俺達以外にプレイヤーが居るのだろうか? 十三階層に着き探索を開始すると、心眼スキルにプレイヤーらしき気配が察知される。どうやら、つかず離れずついて来ている。


 これはあれだ、不味い状況だ。エターナに指示してセーフティーエリアに急いで戻る。



「今日は体調が優れない。明日また挑戦しよう」



 転送石に階層を記録し、降魔神殿に戻った。


 エターナが不思議そうに俺を見ている。そりゃそうだ、体調が優れないと口では言っているがぴんぴんしているからな。どうやら、エターナはなにも感知できていなかったようだ。


 なので説明してやると、驚いた表情をしている。


 あれがたまたまだったとは考え難い。意図して狙っていたと思う。間違いなくPK《プレイヤーキル》だろう。


 ただ、あんな時間に狙うだろうか? なにか違和感を感じる。誰かの指示だろうか? 考えられるのはシルバーソードだろうな。時点でゾディアックがプレイヤーを雇って襲わせるという可能性もある。或いはその両方でゾディアックの指示でシルバーソードが動いたか?


 明日も必ず狙って来るだろうから、こちらも秘密兵器を投入しよう。そうしよう。クックックッ……。



 翌朝、主要メンバーにこんちゃんを加えて、イノセントハーツの砦に向かった。


 こんちゃんはその足でルグージュに向かったようだ。


 他メンバーは物産展の準備。今日、明日は朝練が中止なのでリンネたちにも手伝ってもらっている。報酬は明日のプライベートビーチにご招待だ。一も二もなく快諾したね。



「また半端ねぇ量だなぁ」


「明日来たいのなら頑張って売ってくれ給え!」


「はっ! このダイチ誠心誠意頑張る次第です!」


「私達も行くー」


「なら手伝え」


「えぇー」



 えぇーじゃねぇよ。傍からざる蕎麦食うべからず……もとい、働かざる者食うべからずって言うだろ。働け! まりゅりゅ。


 そうしてる間に、プレイヤーが集まり始めている。早くねぇ?


 さくらと一緒にせっせとサキさんの指示の元、素材を置いていく。



「ミャ~」


「さくら頑張れ!」



 さくらの頑張りもあり、何とか間に合いそうだ。


 準備が終わって見れば、凄い数のプレイヤーだ。今回は素材の量が多いので、シルバーソード以外の第三勢力のクランや、生産組にも声をかけてあるらしい。


 ひなさんの挨拶の後、ドーン! ドーン! と花火が上り、第二回物産展が開催される。


 なぜか、開催本部の横に特設ステージがあり、ニーニャとムウちゃん、他多数が音楽に合わせて踊っている。いつの間に用意したんだ?


 よく見ると出店もある。お好み焼き、焼きそば、金魚すくい。って金魚っているのか? 殆どお祭りだな。


 おっ! オールが居た。もちろん変装魔道具を使っている。



「なんか良いものあったか?」


あるじ殿も人が悪いですのう。このような素材があるなら事前に教えて欲しかったですのう」


「言われて見ればそうだな、悪い。で、どうなんだ」


「そうですのう。なかなか良いものがありますのう。あの妖精の鱗粉などは欲しいですのう」


「可能な限り買え。金が足りなければ持って来る」


「資金は充分にありますのう。しかし、良いのかのう?」


「気にするな、ドンドン、バンバン買え」


「承知したのう」



 出店で焼きそばや綿飴を買って、開催本部に行ってみる。



「大盛況ですね」


「生産組の組合長が泣いて喜んでたわ」


「滅多に手に入らない素材が多いから、必死に買い求めてたわよ」


「ねぇ、ルーク。さっき話してたあの老人何者?」


「どうかしましたか?」


「どこの誰だかわからないのよ。そのくせ大人買いしててね」


「オールですよ。ひなさん」


「ひな、知り合いなの?」


「そ、そうね……し、知り合いなのかしら?」



 なぜ、そこで疑問形? 散々、言葉攻めでケチョンケチョンにした相手じゃないですか。草葉の陰で泣いてますよ。アンデッドだけに。


 焼きそばを頬張っていると、知らないうちにさくらとニーニャがじぃーっと焼きそば見ている。



「食べたいの?」


「あい!」


「ミャー」



 おふたりのお口にことのほかあったようで残り全て食べられたうえ、綿飴も持って行かれた……。



「ルークは、ほんと猫姫に甘いわね」


「じゃあ、サキさんは断れますか?」


「うっ。……無理ね」



 でしょう。可愛いさくらとニーニャにお願いされて断れるのは、悪魔くらいなものですよ。


 その後もひっきりなしに、セイさんなどのクランのマスターが開催本部を訪れて、散々弄られた。解せぬ。


 そして、午後のオークションも無事終わり、第二回物産展は大盛況で幕を閉じることになる。



「凄い売り上げね……」


「それだけ大森林の素材は貴重って事じゃん」


「我々も北の攻略に力を入れるべきだな」



 コッコとプルミたちは、ひなさんが忙しいので仮で別のパーティーを組んでるそうだ。新人連中が育てば、本格的に大森林の探索に力を入れると言っている。


 その前に一大イベントがあるけどな。


 明日の打ち合せたをしてイノセントハーツの砦を後にした。



「デルタ。出番ですよ」


「……どういう意味だ」


「今から迷宮に一緒に行ってもらう」


「……まだ、早いな」


「昨日、どこかの手の者が俺たちを狙っていた。遭遇する前に逃げたけどな。今日も必ず狙って来るだろう」


「……ふむ」


「相手はプレイヤーだから気兼ねなく、って構わない。だが、リーダーだけ生け捕りにする」


「……承知した」



 さあ、楽しくなってきたぞ! 最終兵器デルタに対して、どれだけPK共は対応できるだろうか? デルタクラスだと、通常レイド案件でもおかしくないレベルだからな。


 俺が手を出す場面があるかすら疑問だ。






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