158 ルーク、新技術に満足する

 この広いツヴァイスで、レイアたちを探す。無理やー!


 と、普通はなるが、俺たちにはひとつ手がある。



「さあ、街猫を探すんだ!」



 街猫を探して猫姫の場所を尋ねる。さくらがね。


 暫し待つと、一匹の猫が近づいてニャーと鳴いた。ついて行けば良いのかな。


 歩いていると、案内の猫が次々に変わる。気が付くと目の前にレイアたちが居た。さすが、ネコネコネットワークは優秀だ。



「しゃくりゃ!」



 ニーニャが気付きトラの肩の上から、手を振ってくれている。



「どうしてここに居るのがわかったのですか?」


「決まってるだろ、愛の力さぁ。ふたりを想う気持ちが通じたんだよ!」


「ハイハイ。ルークにゃんの戯言はいいにゃん」


「我らの眷属が報酬をよこせと言ってるぞ」


「タダ働きはいけないわ。対価は必要よ」


「……(コクコク)……」



 戯言とはなんだ! この海より深い愛情がわからないとは嘆かわしい。


 それに街猫! 善意じゃないのかよ! 報酬目当てだったのか……ちゃっかりしてるなツヴァイスの街猫は。


 仕方ないので、迷宮前の広場に来た。


 ニーニャの目がランランと輝いているのがわかる。いや、ギラギラかも。



「「「ドンドン、パフパフー!」」」


「えー、恒例となりました。猫姫集会を開催いたします。屋台の情報提供はエターナです」



 エターナは顔を朱くしながらも、みんなにペコペコしている。まさに綾取りの巧妙……もとい、過ちの功名。


 ということで、エターナの情報に基づき屋台を周り食べ物を買い漁る。


 いつの間にか、広場の端に陣取ったテーブルの周りに街猫が群がっていた。


 テーブルに食べ物を並べていくうちに、ケットシーの旅人も数人現れた。



「君達を監視してる者が居るよ」


「眠らせようか?」


「気にしないでください。見られて困ることはしてませんから」



 ここでも監視されているらしい。ご苦労なことだ。人が余ってるのかね?


 こぢんまりとだが和気あいあいと昼食が進む。途中、ちらりとだが迷宮を管理しているドールがこちらを見ていた。混ざりたいのか?



 街猫共は満足してニーニャに挨拶して帰っていく。君たち、挨拶する相手、間違えてない? なんか釈然としないんだが。


 ケットシーのほうには王都に行くなら送って行くと言ったが、ここにいるケットシーは西を目指しているらしく、情報収集も兼ねていると言っていた。


 ここより先はプレイヤーの力が及ばないから注意するように言ったら、我々の眷属はどこにでもいるから大丈夫と笑っていた。まあ、確かにその通りだ。余計なお世話だったな。



「レイアの用事はどう?」


「どこも酷い状態です。できるだけ早急に対処しないと……」


「ひとりで抱え込んでは駄目ぞ」


「はい。みんなと相談します」



 孤児院と冒険者ギルドには人材が集まり始めている。情報ギルドの後ろ盾があるからな。あれでもガレディアは各情報ギルド支部に顔が効く。レミカさんも協力してくれているので心強い。でも、無理だけはしないでほしい。


 降魔神殿に戻るとオールが待っていた。


 どうやら頼んでいたカメラができたみたいだ。



あるじ殿どうでしょうかのう? アイントン殿と合作ですがの、なかなかの自信作じゃのう」



 ニーニャがよく遊んでいる飛空船にカメラを設置して、プロポのホイラータイプにゴーグルが繋がっている。


 ゴーグルを被ると飛空船のカメラ画像になっていて、プロポも操作しやすく横にあるダイアルでカメラのズームも可能だ。



「操作可能距離はどの位だ?」


「五キロほどで操作範囲外に出ると、自動で操縦者の元に戻るようになっておるのう」


「一度に何台飛ばせる?」


「宝石で周波数? を変えれば二十バンド? 以上は可能と言ってましたのう」



 想像以上のできだ。スピードが出ないのが難点だが、追々改良すれば良い。これで索敵範囲が大幅に広がる。それだけ相手の先を行く戦術が立てられる。



「早急に二十機作成してくれ」


「貴重な材料を使うでのう。すぐには難しいのう」


「無いなら集めろ。冒険者ギルドにハンターギルド、商業ギルド使えるものは何でも使え。時間は無いぞ。ゾディアックが近々、第十三魔王の討伐を掲げる」


「ほう。承知したのう」



 オメガの元に行き新型飛行船を見せる。



「これは……。凄いの一言でございます」


「これをあと二十機作らせる。これを操作させる情報収集部隊を立ち揚げて欲しい」


「承知しました。戦いが有利になりますな」


「本当なら情報解析できる人材も欲しいが、無いものねだりを言っても仕方ない」



 後々考えよう。一度に全て揃えるのは無理だからな。


 次は食い倒れ屋だ。



「こんちゃんいるー」


「はーい。いらっしゃい。ルークくん」


「頼んだの、どうなったかなと」


「試作品はできたよ。だけどまだ試してないの。私では扱えるなっかた」



 そう言って、台の上に載せたのは、大型のクロスボウ。大人がやっと持てる大きさだ。


 この世界にもクロスボウはあるが、やはり連射できないので人気がない。クロスボウを使うくらいなら、威力は落ちてもロングボウ等で連射した方が勝手がきく。


 だがやはり、砦の守りではクロスボウは有効だ。威力も命中精度も高い、何より熟練していなくても扱えるという利点がある。


 さらに、こんちゃんに依頼したのは機械式のレバーを足で踏んで巻き上げるタイプ。力がいるが威力は絶大だ。


 試しに外に出て試し撃ちしてみた。


 的にしたのは百メートル位離れた木にした。足でレバーを踏むので男の俺にはたいした苦労はない。立ち撃ちの状態で的を狙いトリガーを引く。ビュンと音がし飛んで行き的に当たった。狙った木に当たるということは、幹より太い人間には十分に当たるということだ。実際には微調整が必要だろうが十分な命中精度だな。



「どうかなぁ?」


「凄く良いね。急ぎでどの位作れる?」


「ひとりではたいして作れないけど、部品を分担して作ればそれだけ多く作れると思う」


「となるとイノセントハーツの砦の方が便利だよね」


「転移ゲートがあるから、ルグージュの職人にも部品の発注ができると思う。どの位必要なの?」


「正直、いくらでも欲しいけど、当面最低でも五百は必要だと思う」


「い、いつまでかな?」


「こちらの時間で二ヶ月位かな」


「き、厳しいね……」


「何とかお願い」


「頑張ってみるよ。舞ちゃんも帰っ来るしね」


「明日の朝、イノセントハーツの砦に行くので準備しといて」


「わかった」



 段々、ものも目処がついてきた、後は間に合うかだな。


 みんなの奮闘に期待するしかなさそうだ。





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