156 新しい武器の検証

 みんな満足顔だ。


 各自各々、堪能した事だろう。明後日、明明後日は頑張って働いてもらうから、良い休日になったことだろう。


 オーロラにも忘れないで連絡しておこう。魚介類を頼んでおかないとせっかくの海のリゾートが、ホットケーキ作って卵入れず……もとい、仏作って魂入れずになってしまうからな。ホストとしては絶対に避けなければならない事だ。


 夕食を食べた後、緊急ミーティングを開き明後日以降のスケジュールを打ち合せた。


 にゃんこ共から、今回はコボルトと妖精族の素材なので本人たちに来てもらえば良いのではないか、という意見も出たがあの連中を呼ぶと面倒なことになりそうなので却下した。ブーブー言うんじゃない。にゃんこ共!


 メイド隊は快く承諾してくれた。但し、ビーチでは半々で遊ぶ時間を催促された。言っとくが今回は我々のエンジョイホリデーじゃないからな。ある意味ご機嫌取りの接待だ。そこんとこ間違えないでくれよ。


 ミーティング終了後、俺はまたエターナとツヴァイスの迷宮に向かった。


 五階層からはゴブリンの上位種が混じり始めた。たいして気になる強さではないが、攻撃に幅が出てきて瞬殺とはいかなくなった。エターナだけでは時間が掛かるので、俺も攻撃に参加している。雑魚は俺が相手をして、上位種をエターナがる。


 この辺りから宝箱に武器が出始めたが、無くなっても壊れても惜しくないので投擲スキル上げに使用している。ロングソードにも投擲スキルが使用できたのには驚いた。投げれるものなら何でも良いみたいだ。俺もこのスキル買おうかな? 見ているとかなり使えそうなスキルだと思う。さっきから俺もいらないものを投げている。投擲スキル覚えないかな? 覚えそうな気がするんだよな。


 順調に進み十階層に着いた。十の倍数階層はボスエリアだ。買ったマップに書かれたコメントを見ると、ゴブリン上位種が複数出てくるらしい。まあ、問題ないだろう。ボスエリアはパーティーを組まないと単独でしか入れないので、エターナとパーティーを組む。経験値が微々たるものになるが仕方ない。チャチャっと済ませて帰ろう。


 中に入ると、ゴブリンリーダー、ソルジャー二体、スカウト二体、ソーサラー一体、プリースト一体が居る。


 数は多いが、まあ問題ないだろう。ソルジャーに瞬動術で近づき迅雷の小太刀を振るう。盾と鎧ごと真っ二つになった……。ずるりと切られた体が分かれ落ちる。オーバーキルだ……。明らかに小太刀の間合いより長くが切れている。


 試しにソーサラーの首を狙い、小太刀の刃先を一メートル位離して一閃してみた。ゴブリンソーサラーは、なにやってんだお前は? みたいな嘲笑う顔をして首を傾げる。ポロッ、首が重力に引かれて落ちていった。


 この小太刀危険だ、検証が必要だ。下手したら味方を切りかねない。タイマンならめちゃくちゃ有効な武器だ。目で見る間合いと実際の間合いが違うのでは、慣れるまでに苦労するだろうが、これを初見で躱せる奴いるのか? 初見殺しの一撃必殺武器だ。切れ味といい怖ろしい武器だ。暫し封印。


 エターナも危なげなく倒している、残りもゴブリンリーダーだけになっている。嫌がらせ程度に落ちている石を拾って投げつける。ん? 今良い感じで投げれたな。ステータスを確認すると投擲スキルを覚えている。ラッキー! 金貨四十枚得したぜ。


 などとしているうちに、ゴブリンリーダーも倒したようだ。


 部屋の真ん中に宝箱が出現したので中身を確認するが、俺たちには不要な剣と鎧だった。鎧も投擲できるのか? 十分凶器になるとは思うが……。


 十一階層におり転送陣に転送石をかざす。十一と数字が浮きあがった。今日はここまで、帰ろう。


 翌朝。ログインして朝食を取り、朝連に顔を出す。当然エターナもついて来る。なにも考えていなかった。周りは、その人誰? 状態になる。


 もちろん一番喰いついたのはダイチ。ウザい。


 次はセイさん。前に話した新しいパーメンと勘づいたようだ。黙秘権を行使しする。


 ついでなので、エターナも訓練に参加させた。


 俺は自主練だ。


 エターナはレベルがまだ低いが良い動きだ。ファル師匠のご指導の元、トラを後ろから絞めている。どうやらトラがギブしたようだ。ギブしたトラよりエターナの方が驚いているな。


 俺も少し体を動かそう。


 ダイチとトラ以外のにゃんこ共に相手をしてもらう。



「おいおい、俺たちも舐められたもんだな。三獣士」


「ルークにゃんでも、手は抜かないでござるにゃ」


「フフフ……強くなった私を見せしよう」


「訓練の成果をお見せしますわ」




 堅実な盾使いのダイチに連携攻撃の三獣士。だが、朝だ女の歌いまくり……もとい、朝雨女の腕まくり。小太刀検証の為の糧となるが良い。


 さあ、お相手願おうか。実はさっきまで迅雷の小太刀の検証をしていたのだ。通常時は刃先から一メートルまで切れるが、氣或いはMPを小太刀に喰わせると、更に間合いが伸びる。そして、最長で三メートルまで伸ばせることがわかった。更に、HPを喰わせると攻撃力(切れ味)が上がることもわかっている。この性能の有効性を確認したいのだ。



「……始め」



 デルタの合図と共に瞬動術で間を詰める。相手のキーマンはダイチだ、一撃で決める。ダイチもこちらが小太刀を持っていることに気付いていて、警戒しているのがわかる。が所詮、それだけだ。左にステップして盾を持つ手に向かって小太刀を振るう。誰が見ても届かない距離だが、MPを喰わせて倍の長さに伸ばしている。ダイチの腕が盾と共に落ちる。



「がっ!?」



 そのまま、左に回り込みダイチの首を薙ぐ。ダイチは瞬動術の動きについてこれていない。取ったと思ったが、ファイアウォールが俺とダイチの間にでき、エアカッターが飛んできた。


 小太刀を構わず振り切り、エアカッターは左手に魔力を纏い相殺すし、足元から向かってくる剣先を体を捻りながら右足で蹴りあげる。心眼がなければ感知できなかっただろうな。



「うぎゃー!?」



 剣ごと宙に舞ったミケに蹴りあげた反動を利用して、氣を纏わせた回し蹴りを喰らわせる。


 ダイチとミケが光に消えた。残りはタマとチロだが、戦意を喪失している。


 ゴチィーン! 目から火花が飛び散ると思われるくらい、頭に激痛が走る。痛覚レベル下げてるのに、な、何故ここまで痛い……。



「馬鹿者がぁー! その武器は没収じゃあぁー!」



 痛みに耐え頭を抱えてうずくまる俺にファル師匠の罵声が飛ぶ。


 小手先技に走るのは十年早いと言ってるようだ。


 ファル師匠にこれは訓練ではなく、この武器の検証実験です。と言ってなんとか宥めた。実際その通りだし。


 検証結果から非常に有用な武器であることが確認できた。


 が、まだ頭がズキズキする……。




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