155 ルールは必然、進むは毅然

 セイさんは俺のパーティーメンバーに興味津々。



「どこのクランのプレイヤーなんだ?」


「秘密です」


「隠さなくたって良いだろう?」


「秘密です」


「一緒に連れてけー」


「嫌です。人にはいくつもの道が用意されています。その道を見つけ選び進んでいくのがプレイヤー」


「ぬおぉー! なに格好良さげな言葉で誤魔化しているんだよ! なんでお前はいつもそうなんだ! 俺にも、少しは楽しませろよ!」



 それが本音か? 大手クランのマスターは忙しいんだろうな。大変だねぇ。


 セイさんを除いたメンバーで、第二回物産展の日時を決めたようだ。開催日は明後日、みなさん各クランにメールを飛ばしてくれている。


 ここまでやってもらっているから、お礼を考えないとな。何が良いだろうか?


 メールも飛ばし終わり、一息ついてお茶を飲んでいる時に話してみた。



「みなさん、物産展の次の日、空いてます?」


「どういう事かな?」


「まあ、空いていると言えば空いてるが?」


「今回のお礼にプライベートビーチにご招待しようかと」


「なにぃー! 行く! 絶対に行くぞ! ニンエイ予定を開けろ!」


「セイ……」


「ただ、人魚島と呼ばれている、珊瑚に囲まれし島までは自前で来てください」


「人魚島というと、今話題のリゾート地だな」


「あみゅーも呼んで良いかな?」


「余り多くならないようにお願いします」


「承知した」


「それから水着必須ですからね。ビッシっと決めて来てくださいよ。恥かきますから」


「どういう意味だ……?」


「うちから連れて行くメンバーは、ボン、キュッ、バーンと大爆発な奴らばかりですので」


「奴ら? レイアさんの事じゃないのかい?」


「……メイドさんたちよ」



 ひなさんたちは一度見てるからね。劣等感を感じた?



「そ、そんなになのか」


「自分が典型的な日本人体型である事に気付かされたわ……」



 ニンエイさん、顔が引きつってますよ。ニンエイさんスタイルよさそうだから大丈夫ですよ。見てみなさい、サキさんなんか今から何着ていくか悩んでますよ。



「それじゃあ、俺は戻るんで、後はよろしくです」


「どこに戻るんだい?」


「ケットシーの里にです」


「連れて行ってくれないかな?」


「うーん。更紗さんのお願いでも難しいですね。勝手には連れて行けないんで」


「聞いてもらえないだろうか?」


「理由付けが難しいですね。少し時間をください」


「わかった。首を長~くして待ってるよ」


「はいっ、そこ! 俺も行きたいはなしです!」


「なっ!?」



 というkとで、明後日の早朝に来ると言って、お暇した。



 里に着くと、昼食の準備真っ最中。いつの間に食材を確保していたのか、クレープ生地に野菜とスモークサーモンや生ハムを入れたものや、イチゴジャムなどのオーソドックスなクレープまで作っている。まるで屋台だな。


 メイド隊が二手に別れ、生地を焼く係と、クレープを巻く係になり、ケットシーに提供されている。俺もひとつ頂いたが良い味だ。十分屋台でやっていけると思う。


 ケットシーも老若男女喜んで食べている。子どもたちは顔中ジャムだらけやチョコだらけの子もいるが、ゼータがせわしなく動き顔を拭いて回っている。顔が緩み過ぎだぞ。


 エターナといえば、トラと向き合いながら、クレープを幾つか食べては頷き合っている。一言も喋らずに……。意思の疎通ができているのだろうか? 謎だ。



「どうですか、他に必要なものなどありますか?」



 ちょうど、長のクロジさんが居たので声を掛けてみた。



「大変助かっております。皆様には感謝しております」



 クロジさんに残りのお金を渡したが、



「私たちには、必要ないものですのでお納めください」



 と言われてしまったが、貰うわけにもいかないので、



「必要なものがあれば、これで買えますし、旅に出る者に少し渡してあげるのも良いと思いますよ」



 と言って無理やり収めさせた。いつ必要になるかわからないから、お供えあれば怨みなし……もとい、備えあれば患いなしって言うしね。


 さくらもお腹一杯みたいなので、また広場で惰眠を貪る。どのくらい寝たのかな? 気付けば俺の体を枕代りに、ニーニャとケットシーの子たちが寝ている。どうりでぽかぽかしてたはずだ。



「起きましたか? ルーク」



 首だけ動かして横を見ると、レイアが座っていた。レイアの足も枕になっている。



「みんな、起こしましょうか?」


「いや、このまま寝させておこう。起こすのは可哀そうだ」


「はい」



 体が少々痛いが、しょうがない。みんな気持ち良さそうに眠ってる。もう少し我慢しよう。


 どのくらい経ったのかな? ほっぺをツンツンされている。目を開けるとケットシーの子たちが周りを囲んでいた。



「「「ありがとうにゃ!」」」


「どういたしまして」



 わーっとお子ちゃまたちは走って行ってしまった。



「ルークが起きるの待ってたんですよ。みんな良い子です」


「そうだね。良い子ばかりだ。だからこそ何とかしいないといけない」


「今年中に事が起きるでしょうか?」


「微妙なんだよね。モンスターならいざ知らず、人族だともうすぐ冬がくるから厳しいと思うけどあそこまで大々的にやった手前、後には引け無いんじゃないかな」


「では、国軍が動くのですか?」


「動いて欲しくないけど、最悪を想定して準備している。間に合うかは別としてだけど」


「回避できないのでしょうか?」


「たらればだけど、おれたちが関わり合いを持たなくても、今回の事は起きるだろう。今回以上の多くの犠牲を払って」


「今が最善だと?」


「そう思ってやるしかないだろう? おれたちは何でもできる神様じゃないんだ。やれる事をやっていくしかない。それがベストと信じて」


「はい。やれる事をするだけですね」



 第十三魔王が居ようが居まいが、ゾディアックにとっては自称魔王は邪魔な存在。避けられないことだったと思う。ルグージュ攻防戦がなければ、もっと早い時期に起きたのかもしれない。


 ゾディアックにとって一番の誤算はプレイヤーだろう。シルバーソードが向こうに着いたので時期にバレると思うが、死んでも復活するプレイヤーを敵に回した事を、後悔する日が必ずくる。


 魔王が討伐されるのは必然。


 これはゲームなのだから……。


 その必然を変えることは可能なのか?


 わからない。


 でも、やるしかない。


 守るべき者が居る限り。




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