146 カリカリは、猫、待て?
やっと落ち着きを取り戻したセイさんが、
「それで、クエストでも発生したのか?」
「いえ、してないですね」
「いったい何がキーなんだろうな。俺達はこれからどうする?」
「今まで通りでいいんじゃないですか?」
そのイベントキーがわからない以上、どうしようもない。こちらでなにかアクションを起こすのか、それとも向こうがアクションを起こすのか、なにかのイベントフラグが立つまでは自由に行動してて良いと思う。
果報は寝て待てと言うしな。
「なら北を重点的に攻略でもしてみるか」
「どちらかといえば、分散した方が良くないですかね」
「どうしてにゃ?」
「まだゲーム内で行ける場所が少ないからです」
クルミナ聖王国にはテオール帝国、獣人族の国、エルフの国、ドワーフの国、北方の小国群が隣接している。
今現在、プレイヤーが居るのはクルミナ聖王国、テオール帝国の二つだけだ。情報では北方の小国群の更に北に竜人の国があり、まだ不明だが魔族の国もどこかにある。海を渡れば更に増えるだろう。国でなくとも種族毎の里などもあるはず。
今現状、この世界の何割が解放されているのだろうか?
行ける場所が増えれば、それだけ選択肢が増える。中には協力してくれる者もいるかもしれない。
グランドクエストは【十二の魔王】最終的には、全ての魔王に何かしらの対応をしなければならないのであれば、魔王と接触するのはできるだけ準備が整ってからの方が好ましい。
この事を途中から来た、ひなさんを加えて語った。
「確かにな、世界は広い。まだ見ぬ仲間も多いかもな」
「獣人の国には行きたいにゃ」
「ケットシーのような友好的な種族も、まだ居るかもしれないな」
「所々に出てくる、聖竜王や海竜王だって伏線でしょう」
「そういったクエストやイベントをこなさないと、お助けNPCがでこないんだと思います」
「一度、集めて話し合うか?」
「そうだな、同じ方向に固まっても無駄だろう」
更紗さんの言う通り、千頭多くして船山に上る……もとい、船頭多くして船山に上ると言いますからね。
「にゃら、うちらは西にゃ」
「私達は北と大森林かしら?」
まだ見ぬ仲間……ゲーマー魂をやる気にさせる言葉だ。
後は、みなさんに任せよう。露店を閉めに行かないとな。
その前に捜索願を出しておこう。セイさん達にオークションで落札した飛行船の製作者を、探してほしいと頼んでおいた。みなさん快く引き受けてくれた。
みんなに挨拶をして、この場をあとにする。
夕暮れ近いので、ちらほら露店が店をたたみ始めている。タイムセール並の値引きをしている露店も多くある。持って帰るより少しでも金に変えたいのだろう。自分の国に帰るとしても、荷を軽くしてこの辺の特産品を仕入れれば、多くの利益が見込めるからな。
俺たちの露店に近づくと、案の定、人だかりができている。覗いて見るとメイド隊と見知らぬケットシーたちが踊っていた。
「お帰りなさい。ルーク」
「なんなのあれ?」
「お昼ごはんに招待したら、我々も協力すると言ってくれて……」
「な、なるほどね……」
猫とメイドのフォークダンス、良いと思います。
さくらとニーニャも一緒に踊っている。何度見ても癒される。
「で、お前らは何してるんだ」
「ムウちゃんが完全にダウンしました」
「馬鹿ばっか」
お前にだけは言われたくないと、みんな思ってるぞ。ユウ。
筋肉痛って回復魔法で治らないのか? レイアに回復と異常状態回復をムウちゃんに掛けてもらう。
「キュピッ!」
ムウちゃんはむっくと立ちあがり、踊りの輪に入って行った……。
「魔法って便利だな……」
「そうですね……」
「師匠! 凄いです。レイアさん、ありがとうございました」
「マジっすか……」
気を取り直し、ゼータに売り上げ状況の確認する。
「クッキーは完売しました。拡張バックの売れ行きも申し分ないかと。しかし、ぬいぐるみはご覧の通りでございます」
「ケットシーのぬいぐるみは売れなくていいんだ。本当に大事にしてくれる人に持っていって欲しいからな」
「売れ残りはいかがなさいますか? 作ってくれた者たちの手前もありますので」
「この子たちは、最初から孤児院の子供たちにプレゼントしようと思っていたんだ」
「それは良いお考えです。このゼータ、初めてルーク様に感服致しました」
ん? なんか凄い違和感を感じるんだが……。
「良いのですか。ルーク」
「孤児院の子達なら大事にしてくれるし、壊れてしまっても孤児院ならすぐ修復に出せるからな」
「みんな、喜ぶと思います」
さあ、みなさん撤収の時間ですよ。そろそろ、帰る準備してください。置いてくよ。
俺の周りはブーイングの嵐。ケットシーにまでブーブー言われている。なんで俺がこんな目に会わねばならない。帰るよと言っただけじゃないか……。解せぬ。
「三獣士! お前らは夕飯抜きな!」
「にゃんですとー!」
「さあ! みんな、お開きだ!」
「みんな! か、帰る準備をしますわよ」
トラは率先して、片付けを始める。なんて現金な奴だ。
ケットシーたちには里に帰る者がいれば送って行くぞ、と言うと半数が手を上げた。残りは旅を続けるらしい。
片付けをしてもらっている間に、ケットシーたちを里に転移魔法で連れて行った。ケットシー達に感謝されつつ帰ろうとすると、長のクロジさんに声を掛けられる。
「ルーク殿。妖精族とコボルド族と連絡が取れ、明後日にこの里に集まる事が決まりましたぞ」
「それは良かった。時間は何時にしますか?」
「昼食後がよろしいかと。会議の後、そのまま宴に入れればと思っております」
「そうですね……。そうなる事が望ましいですね」
「皆、良き心の持ち主たちです。話せばわかってくれるはずです」
「了解しました。では、当日に」
「さ、鮭とばを何卒よろしく!」
長のクロジさんの心配はどちらかというと、そっちのような気がするが……。苦笑いしながら露店に戻った。
ニーニャとムウちゃん……まだ踊っているのね。さくらはレイアの胸の中でぐったりしている。大丈夫か。さくら?
「みゃ……」
何とも弱弱しい声だな。ニーニャはまだ踊っているぞ。
「お前たちはどうする?」
「イノセントハーツの砦に戻ります」
「朝練あるしな」
「そうか、悪いが当分の間つき合えないから、自由にやってくれ」
「残念ですが、わかりました」
「まずは、迷宮にリベンジだな」
「ファル師匠なら付き合ってくれると思うぞ」
何故か、ふたりの顔が引きつっている。なんかあったのか?
「い、いやー。老師だって忙しいぞ、きっと」
「そ、そうね。無理強いは良くないわ……」
このふたりになにがあったというのだろうか。怪しすぎる。
まあ、こいつらの事はどうでも良い。
さて、心を鬼にして撤収せねばなるまい!
「ニーニャお嬢様! さっさとお片付けしてください。夕飯抜きにしますよ!」
「あい!」
な、なんと言う事だ……俺があれだけ言っても踊りを止めなかったのに、ゼータの一言でおとなしく止めるなんて……。
ゼータが憎い! きぃー!
「ルーク様。どうかなされましたか?」
「いえ、何も……。お見事です。はい」
「?」
俺の立場はどこ行ったのだろう……。
遠くに行ってしまったのだろうか?
無念。
神猫、三月五日発売ですにゃ。
販売促進のため? カクヨムのDRAGON NOVELS @dragon-novels さまに
神猫のSSをアップしていますにゃ。
書籍版を読んでから読むのがベストなんだけどにゃ。
あとから、書籍版を読んであーでも良いのにゃ!
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