145 揺れるゾディアック
式典会場はセイさんが何を言うか、固唾を呑んだ状況。
「まず一点、この国の方々は知らないのかもしれないが、この世界に魔王は十二人居る。これは我々プレイヤーに管理者によって告げられている事実だ。よって十三番目の魔王は居ない!」
会場はざわついている。プレイヤーは周知の事実なので、ウンウン頷いているが、この国の者は驚きに包まれていることだろう。ゾディアックは知っているかもしれないが……。
「英雄殿、管理者とはどのような方なのかな」
「管理者とは、あなたたちの言う使徒様のひとりと考えていただければ良いと思う」
更に会場がざわめく。
「使徒様と仰ったか、英雄殿」
「ええ、言いました。そもそも、我々がどうやってこの世界に来てるとお思いか? 人知を超えた力なくしてできるとお思いか?」
「……」
ただの貴族連中は別として王をはじめとしたゾディアックの一派は、愕然としている。なにせ水戸の黄門様が使う印籠の如き、定番の言い逃れができなくなったのだ。
お前らだけではなく、こちら側も使徒に関わっているんだぞってな。
「陛下は先程、第十三魔王と仰ったが、それはどこから出てきたのか? 我々が調べたところ、第十三魔王が居ると言われた場所には自称で魔王を名乗る者が居るとか。単に情報に踊らされただけなのでは?」
「……」
チョキ、パー……もとい、ぐうの音も出ないとはこういう事だろう。
「されど、魔王は倒さねばならぬ存在だ……」
「確かにその通りでしょう。しかし、どうやらそちらに勇者もいるようですし、ただの自称魔王如きに我々の力が必要ですかな? 逆に我々が手を貸さねば勝てぬと言うのであれば、この国の民はどう思うでしょうな?」
「……」
「後ろには、本当の十二の魔王が控えていますが? どうするおつもりか?」
セイさんがこれでもかと、畳み掛ける。なんていやらしい口撃だ。
「し、しかし、現実の脅威はそこにある。まだ見ぬ魔王を恐れてどうする」
この王はまたしても、致命的なミスを冒した。いや、セイさんが誘導した、という方が正しいのかも知れない。
謁見式場の後ろが騒がしくなっているのが、気配察知でわかる。ゾディアックも動きだしたか?
「まさか本気でそのような事を言ってる訳ではないでしょうな?」
「どういう意味かな?」
「それが本当なら、ゾディアックという組織を過大評価していたことになる……」
「……」
「聞こえているかこの国の国民よ! 今、隣国である北方の国々では、十二の魔王の一人に脅威にさらされ、次々と軍門に下っている。我々プレイヤーは、その存在すら怪しい第十三魔王などより、現実の脅威である北方の魔王討伐を宣言す……」
ピキーンという音が会場に響き渡る。
「も、申し訳ありません! 音声魔道具が壊れました……」
ベタだ、ベタ過ぎる……。関西芸人よりベタ過ぎるぞ!
「なんとも間抜けな幕切れね。ゾディアックは恥を知るべきだわ。さあ、茶番は終わりよ。帰るから、さっさと馬車を用意しなさい!」
静まり返った謁見会場に、姐さんの声だけが良く響いていた……。
帰りも結局ごった返しだったので、何人かを連れて転移魔法でイノセントハーツの砦に飛んだ。
今は会議室でみんなとお茶を飲んでいる。メンバーはセイさん、あみゅーさん、更紗さんだ。ひなさんはお着替え中。
「あれで良かったか?」
「ゾディアックの誰かを引き出せればベストでしたが、十分にベターでしたよ」
「今後はどう出てくると思うにゃ?」
「第十三魔王の討伐はおこなわれるでしょね。あそこまで宣言した以上は」
「その後はどうなると思っているんだい。君の考えを聞かせて欲しい」
「最初に言っときますが、自分の考えで良ければですからね」
「わかっている。さっさと話せ」
ひ、酷い言い方だよ。セイさん。何も自分が矢面に立たされたからって、八つ当たりしなくたって……。
セイさんがギロリとこちらを睨んできた。ハイハイ、話しますよ、話せば良いんでしょう。
「第十三魔王討伐は失敗します。と言うより失敗させます。おそらくその後、本当の魔王たちが動くとみています」
「魔王達が動くのかにゃ」
「ええ。動くでしょう。ここまで大々的に十二の魔王を出したのですから、この話は世界に広がります。そして大国クルミナ聖王国が第十三魔王に敗退したとなれば……」
「北方の魔王は同盟を破棄する……」
「しかし、前提としてランツェ殿が勝たねばならないのだぞ」
「クルミナ聖王国には勝てます。問題は北方に居る二人の魔王です」
「「「二人だと!(にゃん?)」」」
そりゃあ、驚きますよね。寝耳にミミズ……もとい、寝耳に水ってね。俺だって驚きだよ。
「ルーク! また、お前か! またしても、お前なのか!」
な、なんですか、人を全ての元凶みたいな言い方は。仕方ないだろう、みなさんに言えないけどさくらが第十三魔王なだから。これでも、多少は心苦しさを感じているんだぞ。すぐ忘れるけどな。
「昨日、みなさんと別れた後、第二魔王の使いが接触してきました。正直、こちらも驚いています」
「あ、あの後か……」
「間が悪いにゃ」
「セイの持って生まれた運ではないかな」
「そ、そこまで言うか……orz」
セイさんはリアルでも運なしなのか?
「それで、何と言ってきたんだい?」
「第十三魔王に会いたいと」
「それで?」
「勝手に会いに行けと」
「それだけ」
「ケットシーのぬいぐるみを買って行ったみたいです。それからダイチがいつものごとくナンパしてました」
「「「……」」」
誰も口を開かない。銅像のように固まっている。鑑定したが麻痺してるわけではないようだ。あぁ、お茶が旨い。ズズズゥー。
「お前は馬鹿か!」
「落着け。セイ」
「ルークも何か考えがあるにゃ。にゃ?」
「いえ、全く」
「えぇーい。そこへ直れ、成敗してくれるわぁ!」
どこからともなく、刀を出してきた。危ないぞ、そんなの振り回してたら警察呼ぶぞ。この場合はGMコールかな?
「なぜ、ルークなんだ……」
「姑息だから?」
「嫌がらせの達人にゃ?」
姑息って……あんたらいったい、人を何だと思っているんだ!
にゃんたろうの書いている
『神猫ミーちゃんと猫用品召喚師の異世界奮闘記』
が書籍化され、三月五日発売になりますにゃ!
随時、近況ノートとツイッターで情報をお知らせしますにゃ。
よろしくお願いしますにゃ。
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