139 さくらの強運、されど凶運
結局、レイアが来たお昼まで売り子をしていた。
売れ行きはまあまあと言う所かな。
「それで場所はわかったか?」
「フフフ……。抜かりはないでござるにゃ」
「我らの眷属の力を借りれば造作もない」
「当然ですわ」
「……」
「それでブツはどうだった?」
「まだ引き渡されてないでござるにゃ」
「今が狙い時だな」
「正直、とても厳しくてよ」
「……」
「よし、案内しろ」
「「「承知」」」
「……」
と言う訳で、くじ引き所に来ている。
正直、くじ引き用のガラガラがなければ、ここがなんなのかさえわからない佇まいだ。
くじ引き券10枚で一度回せるようだな。40枚あるのでさくら、ニーニャ、レイア、俺で回そう。にゃんこ共がガラガラを凝視しているが、くじ引きがしたい訳ではなく、動いてるものを見るとテシッとしたくなる習性に近いものだと推測される。
「これでお願いします」
「40枚だから4回だね」
最初はレイアが挑戦。ガラガラと回す……コロッ。青い球が出た。
「おめでとう。5等だね、王都お土産セットだよ」
幸先が良いな。これに続かなければ。
「残念。はずれだ。でも、うちは空くじなしだからね。これでまた頑張ってね」
ガチャチケット五枚貰った……。わかっていたよ。そう、わかっていたさ!
気を取り直し、次はニーニャの番だ。ガラガラと回す。しっぽもブンブン回る……コロッ。銀色の球が出た。
「おぉー。おめでとうございます! 2等が出ました! 幸せのリボンです」
ニーニャ、なんて強運の持ち主。幸運スキル持ちの俺が情けない……。
幸せのリボン 持ち主に降りかかる災いを防ぐと言われている。霊峰エルドラで取れる聖来の棉から作られた逸品。
レイアがニーニャの髪を幸せのリボンで結んでいる。良く似合ってる。
さあ! 本命登場。さくら頼むよ。2等の賞品を見る限り、1等は相当期待できる。
みんなも固唾を飲んで見守っている。
さくらの前足をガラガラの取手に当てて回す。ガラガラ……コロッ。
カラン、カラン、カラーン!
「素晴らしい! 特賞が出ました! まさかの子猫ちゃんが当ててしまいました! 特賞賞品はこれだ! 今話題のイーリル沖にある人魚島リゾート地の、予約で半年待ちと言われる高級ホテルペア宿泊券!」
「みゃ……」
「「……」」
パチパチと手を叩いて喜んでるのはニーニャとにゃんこ共。君達はわかってないから素直に喜べるよね。
くじ引き所の人もサクラが特賞を当てたことを喜んでくれているけど、まさかその高級ホテルのオーナーだとは夢にも思っていないだろう。
さくら、運が良すぎたね。一個手前で良かったんだけどねぇ……。
帰り際、いつもはどこでやっているか聞くと、迷宮都市ツヴァイスでやってると答えてくれた。
昼食を取る為、中央広場に来た。今日はお祭りだけあって、いつも以上に屋台が出ている。さっそく、テーブルを確保しようとしたら、全て埋まっていた。残念だけど別の場所で食べようか。ニーニャがとても残念な顔をしているな。
「ルーク。待ってたよ! 全員集合!」
パステルだ。なにをやらかす気だ?
合図と共にテーブルに座っていた人達が立ちあがり、テーブルを繋げていく。
「必ず来ると思ってキープしてたよ」
「たかる気か……」
「嫌だなー。ギブアンドテイクだよ」
「ものは言いようだな……」
「ほらほら、猫姫ちゃんがお待ちかねだよ」
「あーい!」
ニーニャは目を輝かせている。その目に弱いんだよ。
「仕方ない。第三回猫姫集会を開催する。猫姫に感謝するように」
「何が始まるんですか?」
「そっか、レイアは初めてだな。大した事じゃない。単なる昼食会」
勝手知ったるなんとやら、いつもの屋台の主人達は既にテーブルに食事を運んで来る。それを見た新規の屋台の主人も、我先にと自慢の品を持ち込んできた。あっという間にテーブルが料理で埋まる。
「いただきます」
「「「いただきます」」」
にゃーにゃーと街猫の声も聞こえる。当然、見知らぬケットシーも……既に大勢居る。どこから沸いた……。
「す、凄いですね」
レイアが圧倒されているな。俺も圧倒されている。いつも以上の人数に、足の踏み場もない程の街猫も居る。しょうがないので、浄化魔法を掛けまくる。
テーブルの上の料理もすぐになくなり、屋台の主人達が走って持って来る。ニーニャに手招きされ獣人族が増える。見知ったプレイヤーも参加してくる。
「何故、こうなった?」
王都の中央広場は広い。当たり前だ。国の中心にある広場なのだから。その広場の半分が猫姫集会の者で埋め尽くされている。途中、幾つか気に入った屋台を専属に雇ったりもした。それでも足りず、近くの食堂などのお店の人達まで料理を運んで来る始末。
「これ、誰が払うのかな……?」
「「「ゴチになります!」」」
「「「ニャオーン」」」
えっ? やっぱり俺なのかな……? どんだけ支払うのだろうか? 経費で落ちるかな?
「金持ちはやる事が違うな。嫌がらせの為にここまでやるか、普通? いやぁ、この肉美味いな」
「なんでセイさん達まで食べてるんですか?」
「たまたま、通りかかってな。猫姫ちゃんにご招待されては断れんだろう」
「ニ、ニーニャですか……そ、それじゃあ、し、仕方ないですね。とほほほ……」
「ゴチになってるにゃ」
「いつもうちの連中が済まないね」
「……」
あんたら、仮にも有名クランのマスターだろう。自分の金で食えよ!
「確かに嫌がらせですけど……少しカンパしてくれません?」
「「「やだ」」」
ですよネー。そう言うと思ってたよ。お前ら帰りやがれ!
しかし、よく集まったな。十分に暴動を起こせる人数だ。さぞや、やきもきしている事だろう。存分に警戒してくれ給え。
誰に喧嘩売ったか思い知らせてやる。
向こうが手を出さない間は、こちらも手を出すつもりはない。
嫌がらせはするけどな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます