136 各クランとの口裏合わせ
セイさんにはデルタと対戦させろとか、プライベートビーチに連れてけ、とか言われ首を絞められる始末。死に戻りは勘弁して。
「それより、どうやって断るかだな」
「私ははっきりと言うわよ。お黙り! ってね」
ひな姐さんなら、やれる。さぞ見ものだろう。
「イノセントハーツはそれで良いとして、我々はどうするかだな」
「証拠を見せろにゃって言えば?」
「駄目だろうな。おそらくなにかしら用意してるはずだ」
更紗さんの言う通りだ、本物か偽物かは別として、こちらに反論させないようにしてくると思われる。
「ここに来てないシルバーソードは、ホイホイ引っ掛かるんだろうな。おだてあげられてね」
「ひなさんの言う通りだな、あいつらは喜んで組するだろう。馬鹿だから」
ニンエイさんって意外ときついよね……。
まあ、位置を識りて荷を知らず……もとい、一を識りて二を知らずって感じのシルバーソードならこちらから望む所だ。是非、魔王討伐に参加して欲しい。目にもの見せてやろうじゃないか。楽しみで仕方ないな。じゅるり。
「ルークが悪い顔してるにゃ……」
「シルバーソードはそのままでお願いしますね。借りを返さないといけないので。フフフ……」
「ルークは
その後も他のクランメンバーを加えて話し合いをしたが、なかなか纏まらない。報酬にいちゃもんつけるとか、指揮権よこせとか色々でたが、決定打に至っていない。
最終的に纏まったのが、我々プレイヤーは北の魔王を討伐をするので、真実の見えない魔王の討伐には協力できないとはねのける事となった。
なかなか面白くなりそうだ。是非見学したいな。
「ここに居るメンバーは、賛同したと言う事で良いかな?」
周りから拍手が起こる。
「セイ。ランツェ殿の件はどうするんだ?」
みんなも興味津々のようだ。
「ルーク。どうするつもりだ?」
「どうもこうも、来た奴等は叩き潰しますよ。特にシルバーソードは」
「やり過ぎるとバン喰らうぞ」
「俺が皆殺しにするんじゃないので、問題ないんじゃないですか?」
「皆殺し確定なのか……」
「それよりこの戦いが終わった後、大々的に北の魔王の件を触れ回るつもりなので、フォローお願いします」
「もう勝った気でいるのか……」
「負ける要因が全くありません。セイさんも見に来ます? 但し、シルバーソード連中を倒すのは手伝ってもらいますよ」
「遠慮しておこう……」
一応、話が纏まったので、明日のオークションの話で盛り上がった。
多くのプレイヤーは武器防具関係を狙っているらしい。他にも珍しい素材も出るらしく、特にドラゴンの素材も出ると囁かれているので、それが目玉になるのではと言っている。
更紗さんは珍しいモンスターの卵を狙っているらしく、俺と競り合う可能性がある。
多くの目玉商品が出るみたいなので楽しみだ。
オークションの日はオークション以外にもプレイヤーなどの露店が並んだりもする。
ちなみに自分達もその一角をレンタルしている。
オールと共同で作成した、内容量拡張タイプのバックを販売するつもりだ。前にも言ったが、制限ありである。どうしても永久付与させる事ができないのだ。オール曰く、ロストテクノロジーなのだそうだ。
作成したものを鑑定すると、使用日数と言うものが表示され、ものを入れてる間数字が減っていく。オールが言うには日数がゼロになると只のバックに戻ると言っていた。
だとしてもこれは売れる。プレイヤーのストレージは容量が決まっている。拡張オーブで容量を増やせるが、拡張オーブがレア過ぎて手に入らない。この簡易アイテムバックならストレージに入るので一時的に容量を増やす事ができるようになる。勿論、NPCのハンターや商人も喉から手が出るほど欲しがるだろう。
今後は孤児院併設の冒険者ギルドで販売して、孤児院運営の資金にするつもりだ。
折角なので、みんなに見てもらって意見を聞こうと思い、容量の異なる三種類のバックをみせた所、各クランから大量注文が入ってしまった。
「しかし、気を付けたまえ。これは軍が欲しがるぞ、兵站を担当する者なら是が非でも欲しがるな」
成程、ニンエイさんの言う通りだ。元々軍に売るつもりは全くなかったが、奪われる可能性もある訳だ。
「何かしらのセキリティーを付けないと駄目ですね。個人認証でも付けますか?」
「できるなら複数の認証で頼む」
「難しい事言いますね。善処はしますが、確約はできませんよ」
「わかってるよ。しかし、これは錬金術なのかな?」
「錬金術の発生スキルで魔道具作成と聞いています。ひなさん、錬金術覚えました?」
「……忙しくて、ま、まだかな?」
折角、錬金術の本をあげたのに、錬金術に興味があるって言ったのあなたですよ。
スキル屋に売ってないかな? 初級じゃ無理か。迷宮攻略七つは遠いな……。
そう言えば、迷宮都市って行ったことないな。誰か連れて行ってくれないかな。当分は忙しくなるから無理だけどな。
みなさんとは明日のオークション会場で会う約束をして別れた。
降魔神殿に戻り、早速オールに相談に行く。
「ふむ。難しくはないですがのう、面倒臭くなりますのう」
「どんな風に面倒臭くなるんだ?」
「登録する者全員揃っていないと魔力パターンを登録できないですのう」
「それはめんどいな。うーん。例えばアドミニストレータを設定しておいて、五人分の空きを作るってのは無理か?」
「アドミニストレータとはなんですかのう?」
アドミニストレータは共通語じゃないのか? ゲーム内なのに通じない? オールがポンコツって事もありうる……。
「管理者って事かな。この管理者を最初に登録しておいて、残りは管理者が自由に設定できるようにできないかなって」
「管理者……設定付け……構築式に修正で済むか?」
オールはブツブツ言いながら思考の彼方に行ってしまった。当分戻って来ないな。
ニーニャを迎えに行こう。
ケットシーの里に行くと、長のクロジさんに呼ばれた。
「昨日、あの後長老達と話し合いました。この里の近くですとフェアリー族とコボルト族と友誼を結んでいます。早急に彼等と話をする事に決めました。フェアリーは頭の良い種族ですが考え方が幼く、コボルトは人が良すぎるうえ、少々抜けている者が多い種族なので騙されやすいのです」
ケットシー族にそこまで言われるコボルト族って……会ってみたい。
「我々は少しでも多くの種族がゾディアックの犠牲にならなくなるのであれば、助力は惜しみませんので何でも言ってください」
「そう言って頂けると思っておりました。ご助力に感謝致します。なるべく早く集まれるように致しますので、よろしくお願いします」
クロジさんの元を後にし、広場に行くとゼータがケットシーの子供達に埋もれていた。
「何してるんだ……お前は?」
「ハッ! ルーク様……。い、いえこれはその……なんと言うかですねぇ……そのぉ~」
目が泳ぎまくっている。只の不審者じゃねぇかよ!
「ニーニャ帰るぞ!」
「あい!」
ゼータが埋もれていたケットシーの子供達の中から、ニーニャが顔を出した。ニーニャもその中に居たのね……。
明日は来れないから、明後日また来るからよろしくね、と子供達に言って降魔神殿に戻った。
ゼータは帰って以降も終始、俺の顔を見るたびに目を泳がせていた。
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