134 メイド イン ヘブン?
朝一の訓練の後、砦に設置されたブースにさくらに素材を出してもらった。
「また凄い量ね」
「サキ。ちゃんと私達の分も確保するのよ」
「少しくらい今取ったってわかんないんじゃね」
「コッコ。信用問題なのよ。頼むからやめて」
「ねぇー、リンネちゃん。ムウちゃんちょうだーい」
「駄目です! まりゅりゅさん。自分でテイムしてください!」
「だってー。見つからないんだもーん」
「さくらちゃんは今日もチャーミングだねぇ」
「また後で来ます……」
退散しました。
レイアはノインスに行くようなのでさくらに護衛をお願いした。
ニーニャはこれから、ケットシーの里に連れて行く。起きてからケットシーの里に行きたくてそわそわしているのだ。これで、今日は行かないなんて言ったら、二度と口を聞いてくれなくなる恐れがある。今日の最重要ミッションだ。
「トラブルズはどうする?」
「ルークにゃん! トラブルズじゃにゃいでござるにゃ!」
「我ら三獣士」
「使徒様と共にあらん。ですわ」
「……」
「里で三獣士って一度も聞かなかったぞ。トラブルズは何度も聞いたが」
「ぐぬぬ」
「面目ない……」
「使徒様がわかっていてくだされば、良いのですわ……」
「……」
「用事がないなら、素材の買い取りの手伝いをして欲しい。素材の説明する役が居ないからな。素材が売れれば里の役に立つから、三獣士として面目躍如になるんじゃないか?」
「やるにゃ!」
「仲間の為なら致し方ない」
「喜んでお手伝いしますわ」
「……」
若干一名不安だな。喋れるのか?
ニーニャとクリスタル部屋に行き大量のお菓子を、オールと共同で作成した試作アイテムバックに入れる。ニーニャのお弁当も忘れずにな。
流石にひとりで行かせられないのでゼータを連れて行く事にした。メイド隊がブーブー言ってる。お前達はイノセントハーツの砦での手伝だ。
ニーニャとゼータをケットシーの里まで送る。
ニーニャは振り向きもせず、走り去った。ちょっと傷つく。
そう言えば、珍しくゼータが目を輝かせていたな。やはりメイド隊に洩れず可愛いもの好きか?
ゼータに後は頼むと言って、イノセントハーツの砦に向かった。
既に多くの人が集まっている。そう、男性諸君がメイド隊に群がっている……。女性諸君に、にゃんこ共もモフられている……。カオスだな。
ひなさん達の元に行き
「なんですか。このカオスな状況は」
「なんですかじゃないわよ! あなたでしょ! あ、な、た!」
サキさんはご機嫌斜めのようだな。更年期障害には早いと思うのだが……。
「はいはい。ルークは手伝いをしてくれようと思ったのよね?」
「それ以外にありますか?」
「ハァ……。あなた世界の裏側の情報も良いけど、世間の噂も確認なさい」
サキさんが言うには、プレイヤーの間でメイド隊がブレイク中で色々な噂が飛び交っているそうだ。情報ギルドでもガセネタ騒ぎで問題になっているらしい。ガレディアに会いたくないな……。
確かにドールはそれなりに表に出ているが、ハイドールは珊瑚に囲まれし島のカクテルバーくらいだ。片方は男性タイプだけどな。成程、珍しいのか。
ケットシーも最近クランに現れる事があるがまだまだ珍しく、クランに貼る紙をくれと言って来るクランが増えているのは確かだ。言葉も通じるし、なんと言っても愛らしい。
そんな理由からこの状況が生まれたそうだ。
「いつ来ても賑やかだなここは」
「お褒めの言葉と受け取っておきますわ。セイ」
「今日はケットシーの為に、たっぷりお金を落としていってくださいね。セイさん」
「明日がオークションの日だと知っていて呼んだんだろうね。ルーク」
「当たり前じゃないですか、ニンエイさん。今ならみなさん
「くっ、この策士が……。そうか、あのメイドやケットシーも策のひとつか!」
「メイド隊はそうですが、にゃんこ共は素材の説明に連れて来ただけですよ。良い意味で狂いが生じました。それから、マージンは取っていませんからね。我々は無償の奉仕です。ケットシー達の為にね」
この買い取りには翼徳にハイもない……もとい、欲も得もない。完全ボランティアだ。この後おこなう会議に集まってもらう為のイベントだと思えば良い。
「当たり前だ! そんな事してたら、更紗とあみゅーとで八つ裂きにしてやる」
「アハハハ。呼ばれちゃった」
「勝手に名前を出さないでくれないか、さくらちゃんと猫姫に嫌われたくないので私はルークの味方だよ」
「モテル男は違うな。ルーク」
うるさいよ。セイさん。リアルモテ男に言われたくない。
「まあ、さくらとニーニャありきですけどね……」
「それよりあのメイドさんうちでも雇えねぇ?」
「高いですよ。ピンポイントで使うならいざ知らず雇うとなるとねぇ」
「そ、そんなに高いのか……」
「だってメイドさんですよ。それなりの教養持ちですし、住み込みだし、ひとりって訳にもいきませんよね。基本、執事かメイド長が居てメイドですから」
ハイドールではないメイドさん達を、普通に雇ったとしても維持費だけで一体いくらかかることやら。首が回らなくなっても知らないぞ。
「な、なるほど。言われて見ればそうだな。正直、今うちのクラン事務系が足りないんだよ。なんとかならないか?」
「レイアに相談したら良いんじゃないですか?」
「レイアさんにか?」
「情報ギルドにコネあるし、孤児院の人事は彼女がやってますから」
情報ギルドであてにできるのはレミカさんくらいだろう。面接はカーちゃんに任せれば間違いはない。
「是非、相談にのって欲しいと伝えてくれ」
「私からも頼む、ゲームの中にまで来て経理仕事はしたくない」
ニンエイさんの切実な声は心に響く。うちはオメガがいるから楽させてもらってるが、クランは大変だろうな。運営さんも少し考えてくれても良いんじゃない。変なところでリアル過ぎる。
さて、そうこうしてる間に、買い取りはひなさんの合図で一斉に始まった。未見のもの以外は相場はわかっているので問題ないが、未見のものが問題だ。
ひなさん曰く、オークション形式にするそうだ。素材の説明をした後に値を付けていく。天井知らずにならないように注意して欲しい。
ブースを見て歩いていると、こんちゃんが居た。
「舞姫さん、帰ってきた?」
「ルークくん! 店が無くなったって言ったら、なんて言った思います。それならこっちで、がっぽり稼いできてやるわーってメールに書いてありました。ウハウハやって……」
どうやら予想通りカジノにハマったらしいな。おけらにならない事を祈ってる。
「そう言えば、店舗復旧したよ。内装とか補填分、どうするか話をしてね」
「えぇー。もう復旧したんですか? ゲームって便利ですねぇ」
「で、素材買うの?」
「買いたいんですけど、手持ちが無くて……。素材を仕入れた時に、店が無くなっちゃったものですから」
「貸そうか? どの位必要? 今、手持ちだと金貨で40枚位あるよ」
「お願いします! 必ずお返ししますから融資してください!」
必死な形相のこんちゃんに全額渡してやった。こんちゃんや舞姫なら充分に採算が取れるだろ。良い装備でもできたら物納でも構わない。
しかし、思った以上に大盛況だ、ケットシーの生活に必要な必需品もこの売り上げで補える。長のクロジさんにリストでも作ってもらった方が良いな。
買い付けも大変になりそうだな。
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