123 対自称魔王、迎撃準備は万全を期っします。

 ダゴン様にはロイヤルスイートルームにお泊まり頂いた。


 取り敢えず、好きなだけ滞在してください。と言っておく。お忍びで来てユウのようなおバカが絡んで、珊瑚に囲まれし島消失! は避けねばならぬ。


 リンネとユウは宿屋に押し込んでおく。明日、迷宮に入る予定だ。


 みんなリフレッシュしてくれただろうか? オーロラ達には逆にプレッシャーが増えた気がするが、よくあるアクシデントと割り切ってもらうしかない。


 降魔神殿に戻ると珍しくオールが待っていた。そんなにメイドとイチャイチャしたいかね。オールくん。



「我が友のデスナイトのランツェが今夜到着するが、如何するかのう?」


「デュラハンとスケルトントルーパーはどうした?」


「まだ帰って来てませんのう。今日の話し合いで決めるつもりだと思うのう」


「オール。手綱はちゃんと握ってるんだろうな?」


「間違いなく」


「いつ来る?」


「真夜中頃かと」


「舐めた事してくれるじゃないか……まあ、後の祭りだな。なあ、オール。奴ら勝てると思ってるのか?」


あるじ殿……悪い顔をしておるのう」


「悪い顔? 心外だなぁ。機会はやったんだ。恭順してくるなら許してやろうと思ったが、自称魔王殿は己の力を過信しているようだ。これは教育してやるのが筋ってもんだろう? そう思わないか、オール」


「できれば、穏便に済ませて欲しいのう」


「そうか? 逆に抵抗して欲しいけどな。仮にも魔王を名乗っているんだ。すぐに降参じゃ自称魔王殿も立場がないだろう。デルタ!」


「……ここに」


「出番だ。オメガ、聞こえてるか? 一旦、迷宮を封鎖しろ。プレイヤーなどが居たら、メンテナンスに入ったと言って宿代と飲み代を無料にしてやれ」


「承知しました」


「デルタは出せるだけの戦力を率いて、北側の平原に陣を敷け。それからオールを副官にして連れていけ」


「……承知」


「我もかのう」


「オールが行かないで、どうすんだよ」


「ハァ……仕方ないのう」


「おバカな友人を持ったことを後悔するんだな」



 部屋に行くとみんな居た。


 ひなさん達も帰ってなかったんだな。ちゃっかり夕飯食べてる。



 にゃんこ共に今夜のことを話す。



「今夜、自称魔王様が来るそうだ」


「にゃ、にゃー!」


「それでどうするのかな?」


「魔王に神の鉄槌を!」


「……」


「まあ、待て。憤慨する気持ちもわかるが、ある意味身内の恥。できれば内々に手打ちにしたい。勿論、ケットシー族に補填はさせる。最悪、手打ちできなかった場合はこちらで、確実にけりをつけたい。任せてくれないかな?」


「うにゃ……」


「猫姫を頼ったのは我ら」


「任せても良くなくて」


「……」


「決まりだな」



 安心して欲しい、可愛いケットシー族に手を出した報いは受けさせる。



「今回はさくらは参加しないで良いよ。相手は小物だからな。さくらの手を煩わせる必要はない」


「ミャー」


「レイアもニーニャも、俺に任せて欲しい」


「わかりました。お任せします。ですが無理はしないでください」


「大丈夫。デルタもオールも居る」


「儂はどうする」


「今回の自称魔王は、ファル師匠が探している12の魔王ではありません。できれば身内だけで決着したいのですが……」



 なんて、言ってるけどファル師匠には来てほしくないんだよね。必ず第十三魔王の話が出るからな。今はまだ聞かれたくない。



「ふむ。そう言われてしまえば仕方ないのう」



 ひなさん達は参加したそうだったが夜目スキルを持っていないので、今回は遠慮してもらった。


 夜中まで時間があるのでひとっ風呂浴びてくるかと思っていたが、さっきからゼータの目線が痛い……何ですか?



「無礼を承知でお聞きしたい事があります」


「なんだ?」


「日中にダゴン様が仰られた意味を教えて頂けたないでしょうか?」



 嗚呼、面倒臭い。話さなきゃ駄目かね。みんな押し黙ってしまったな。



「今度な。どうしても聞きたいならオメガに聞け」



 ゼータはジト目。面倒なことは丸投げだ。返ってきそうだがな。それからみなさん、そんな目で見るな。なんなら代わりに説明してくれ。



「それで、ダゴン様とは何者じゃ。儂の危険感知がマヒして働かん」



 そう言えばここにも居ましたね。説明が必要な方。



「ダゴン様は南の海域を支配しているお方です。以前お話した、魔王クラークが動けない状況なのはダゴン様に協力して頂いているからです」


「ルークよ。何者と聞いておる」


「触れてはいけない力。いえ、知らない方が幸せな力、とだけ言っておきます。先代の拳聖がお知り合いのようですから、直接お聞きしてみては如何ですか? お勧めはできませんが……」


「ぐぬぬ……おおよそは見当がついておる」


「以前こんな話を聞きました。神と邪神の違いは何か? 何も違わないそうです。各々が立ってる位置が違うだけ、邪神側から見ればこちらの神が邪神に見えるだけの事。本質的な違いはないと言ってました」


「しかし、神代の時代に神と邪神は戦ったではないか!」


「さっきも言いましたが、本質は同じ。邪神と呼ばれるようになったのは後の時代。神と神の戦いで負けたので邪神と呼ばれただけですよ」


「ならば邪神とはなんじゃと申す。悪の根源である魔王を召喚しているのじゃぞ」



 にゃんこ共はウンウン頷いている。事情を知るひなさん達やメイド隊の面々は複雑な顔をしている。



「こうは考えられませんか? 神は平和と秩序、保守を司り。邪神は混乱と無秩序、そして革新を司る」


「表裏一体と申すか?」


「この世界が保守的になり過ぎ、停滞した時に革新を促す為に混乱を起こす。住んでいる人々にとっては、ありがた迷惑ですがね」


「その混乱が魔王だと?」


「単なる自分の憶測ですよ。神が考える事など、いち人族などに考えつかない程深いものかもしれないですからね」


「……」



 俺の考えは簡単にはこの世界の人々に受けいられないだろう。神という存在を感じられないリアル世界の人間の考えだ。この世界をプログラムにより構築されたと見れば、ある程度のプレイヤーならこの考えに至るだろう。


 会った事はないが、魔王全てが悪と一色単に考えるのは良くないだろう。己の目で見て、耳で聞いて、接触し感じるまでは悪と断定するには早い。


 だが、さくらに手を出すなら話は別。魔王だろうが魔王じゃなかろうが、只じゃ済まさせない。


 やるなら、徹底的に叩き潰す。


 例えそれが神だとしても……。




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