122 ダゴン様から危険な情報をリークされる。

 オーロラ親子を立たせて、さくらをダゴン様の元に連れて行く。



「マイハニーは今日もチャーミングだね」


「ミャ~」



 ご挨拶にさくらはダゴン様の手にスリスリ。


 ひなさんは顔を引きつらせ、全員に頭を下げさせてからメンバーに説明している。



「こちら、拳聖のファルング様です。縁があり弟子にして頂きました」


「おぉー。三聖のおひとりにお会いできるとは光栄だな。拳聖と言えばバル殿のお弟子さんかな?」


「師バルが不肖の弟子ファルングと申す。我が師バルをご存知で」


「彼が若い頃に何度かね。彼女といつもラブラブ、イチャイチャでイライラしたものだよ。ハハハ」


「……」



 レイアとニーニャもご挨拶。



「マイハニーの妹と聞いていたが、猫姫の名に相応しいキュートさだね」


「光栄です。自慢の娘です」



 珍しくレイアが娘自慢をしたな。ニーニャを褒められて嬉しかったのか?



「そだろう、そうだろ。レイアくんも余り無茶をしたらいけないよ。猫姫だけでなくルークくんも悲しむからね。彼は大事な盟友だから、彼の悲しむ顔は見たくない」


「お気遣い、感謝致します」



 ゼータとメイド隊も紹介しておく。



「いやー。ここはパラダイスだねぇ。ゼータくんは色々大変だと思うけど頑張り給え」



 余計な事は余り言わないで欲しい。ゼータが混乱した目でこっちを見ている。


 最後に弟子ふたりとにゃんこ共を紹介した。


 リンネは問題ないが、ユウが挨拶した時はヒヤヒヤのも。ヘッドロックして拳に氣を這わせてグリグリしながら頭を下げる。


 ダゴン様が、若いって素晴らしいね。水溜りと大海の差も知らずに挑める。なんて言った時には、ユウの頭を砂浜に押し付け土下座してしまった……笑って許してくれたけどね。


 にゃんこ共は、流石に直感的に全く敵わぬ強者と感じたか、緊張しまくっている。


 ダゴン様はにゃんこ共の頭を撫でながら



「この子達、欲しいんだけど駄目ぇー?」


「にゃめ!」


「もっと強い子と交換しないかい。猫姫ちゃん」


「にゃめぇ~。うぇ~ん。みゃま~」


「ご、ごめんね猫姫ちゃん。もう言わないから許してね、ねっ」



 と言う一場面もあったが一通りの挨拶が無事? 済んだ。


 ダゴン様がカクテルを飲みたいと言ってきたので、ダイチをバーテンダーに任命する。ブーブー言ったので、メイド隊のひとりを付けると言ったら俄然張り切りだした。ダイチにしたらアバターに欲望……もとい、痘痕も靨。女と名の付くものなら何でも良いんじゃないの?


 さて、自分用のカクテルの道具を新しく出したテーブルに載せ、足りない物はメイドに言って持って来させる。臨時カクテルバーの開店。


 さっそく、ダイチにパパ・ダイキリを注文する。



「パパ・ダイキリ? フローズンダイキリの事か?」


「ヘミングウェイだよ」


「嗚呼。ヘミングウェイね。って事はグレープフルーツだな」


「砂糖入れるなよ」


「了解。了解」



 任しても大丈夫だろうか? ちょっと不安。レシピ本もそっと渡しておく。


 みんな思い思いに楽しんでいる。


 メイド隊も半分に分け交互に遊ぶように言ってある。既にビーチバレーで【優雅高妙】vsメイド隊が始まっている。なんて眼福な光景だろう。海はこうでなくてはいけない。勿論、眼福なのはメイド隊。


 さくらとニーニャ、レイアとゼータ、にゃんこ共はプカプカと浮かぶゴムボートで遊んでいる。アリーナとエリーナも一緒だから安心だ。


 トラだけ砂浜で砂に埋められ動けなくなっている。可哀そうなのでパラソルを顔部分に陰がくるように差してやった。助けてと聞こえたような気もしたが気のせいだろう。


 ファル師匠はカクテルを飲みながらしかめっ面だ。


 あの御仁は誰だ? とさっきから煩いのだ。仕方ないので帰ったら説明します、と言っといた。魔法屋のばあさんの件もあるしな。


 弟子二人はトラの近くで、ペン太とカーちゃんとムウちゃんと一緒に砂の城を作っているようだ。ユウはペン太達とじゃれあっていて、リンネの邪魔をしているようにしか見えないのだが……。


 さて、それでは釣りをしようか。岩場の方に移り糸をたらす。日差しはあるが海風が気持ち良い。リアルで釣りをしたのはいつだろう。たいてい休みの前の日は飲みに行くので、起きるのは昼頃だ。それから掃除洗濯などしてゴロゴロしていると一日が終わる。次の日も同じようなものだな。


 今は、酒も飲まずに『infinity world』にログイン。変われば変わるものだ。


 昼までに鰯のような魚を十匹程釣る事ができた。まあ楽しめたので良しとしよう。


 昼はバーベキューにする。食材はオーロラ提供の新鮮な魚介類。まりゅりゅが魚を捌けるらしく、刺身盛り合わせを作ってくれた。レイア以外には好評だった。食べ慣れてないと生ものは駄目だろう。


 オーロラやニーニャ、にゃんこ共は魚好きなので最初はびっくりしてたが、一口食べたらうまい、うまいと普通に食べている。何と言っても万能調味料である醤油を持ち込んでいるのだ。より美味しく頂ける。


 ダゴン様は刺身よりカルパッチョの方が、お気に召したようだな。


 ひなさん達はエビにカニと言った高級食材狙い。


 俺はせっせとエビの殻剥きにせいをだす。剥くたびにニーニャが食べたり、ニーニャがにゃんこ共にあーんしている。にゃんこ共! それは俺が剥いた奴だからな! ニーニャの為と我慢して剥いているんだからな!


 そうしていると、どうやら釣った魚が焼けたようだ。小さいので骨に気をつけて身をほぐし、さくらとニーニャの皿に載せてやる。さくらは嬉しそうにハムハム食べている。ニーニャも真剣に味わって食べてくれている。


 残りは焼く前にペン太の腹の中に消えていった……八匹も食えば満足だよな。これで恩恵を受けていないなどと言わせないからな。



「クェー」



 って、まだ食うの? どうやらペン太の胃袋は空間拡張されているようだ。オーロラにでもねだりなさい。


 昼食も終わりみんなレジャーシートの上でお昼寝。


 俺はキューバリバーを飲みながらダゴン様と話をしている。


 さくら商会を立ち上げたので、近日中に交易船を出す事など話しておいた。


 ダゴン様からは近いうちに海竜王が目覚める予兆があると教えてもらった。どうやら海竜王派の一派が悪だくみを考えているらしい。オーロラにこの間注意するように言ったばかりなのに既に動き始めていたようだ。


 デンちゃんの事も言われた。デスドラゴン出現は神代以来、初だそうで竜族がピリピリしているそうだ。どうやら広く知られているみたいだな。


 その理由も教えてくれた。瘴気の元だった純白竜ぺルレの亡骸がなくなった山一体を、聖竜王が瘴気を浄化したらしい。その事で他の竜族が何があったかを聖竜王に問いただし、聖竜王がベラベラ喋ってくれたそうだ。デスドラゴンを従えた第十三魔王は危険だぞって。


 余計なこと言うな! 聖竜王!


 こんな可愛いさくらを危険だと? あのまま放置したらどうなっていたと思ってるんだ。ある意味、世界を救ったんだぞ!


 まぁ。元凶もうちなんだけどね。腐れリッチ共め……。


 面倒臭い事にならないと良いな。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る