102 ニーニャとお出掛け

 朝だ。ガチャを引こう。ガチャチケットが10枚ある。


 リアル運の無さは痛感してるので、運が無限のさくらに手だけでも借りよう。


 ガチャチケットを使用する。ルーレットが回ている。


 さくらの前足でポッチとな・・・・・ユニークスキル【死剣】


 おぉー。おぉー。おぉー。キター! ユニークスキルだよ。やっと出ましたよ。


 詳細は、死剣、指剣とも言うらしい。暗殺術の最高峰と言われる技術。他のスキルと合わせる事によりその技は変幻自在となる。条件を満たしていない為、使用不可。


 使用不可……何故、頼んでもいないのに、我に七難八苦を与え給うのか! 苦労はいらないです本当に……。


 条件を満たしてない、おそらくスキル【暗殺術】だろう。うさ子に弟子入りしようかな。オメガやアルファも持ってたな。どうやって覚えるんだ?


 取り敢えず、スキル屋と情報ギルドに行ってみるか。


 せっかくなので、今日はニーニャとお出掛けしよう。レイアにはさくらかうさ子に付いて行ってもらえば問題ないだろう。


 うさ子がレイアと一緒に行ってくれるようだ。レイアひとりだと物騒だからな。ハンターギルドと敵対してる以上、注意はしておかないといけない。レイアも充分強いけど心配だから。


 ゲートで王都に来た。


 のんびりと散歩がてら街を見て歩く。たまに獣人族の人達がニーニャに手を振ってくる。ニーニャは満面の笑みでブンブン手を振り返す。さくらも負けじと前足を振っている。ふたりとも可愛いな。


 広場でジュースを飲んでいても老若男女寄って来る。寄って来る中には馬鹿もいるが、何もしなくても他の人達にボコられれ退散していく。ニーニャの人徳の成せるわざだろう。


 スキル屋に着き扉を開けた。



「いらっしゃいませー」



 いつもの魔女っ娘だ。安心した。



「お兄さんに子供いたんだ。可愛いね。抱っこして良い?」



 魔女っ娘にニーニャを渡す。意外と慣れてる感じがする。



「近所に同じ位の子が居るから、たまに面倒みてるんだ」



 成程、それで慣れてるんだな。ニーニャも安心しきっている。



「今日はどんなご用件ですか?」



 ニーニャを自分に返しながら聞いてきた。



「暗殺術はあるかな?」


「うーん。初級の資格じゃ買えないよ」



 やっぱりそうか、迷宮を七つ攻略はキツイな。



「お兄さんはお得意様だからヒントをあげるね」



 マジっすか。



「職業で忍者になると暗殺術が使えるようになるよ」


「どうやって忍者になるの?」


「知らない」


「……」


「ごめんね。テヘペロ☆彡」



 情報ギルドに行ってみようか……。



「情報ギルドにようこそ。本日はどのようなご用件でしょうか?」


「情報を買いに来ました」


「どのような情報でしょうか」


「魔法(聖)と暗殺術、忍者についてです」


「少々お待ちください」



 さくらとニーニャとイチャラブしてると



「十二件の該当する情報がございます」



 と言って透明な板を渡してきた。


 確認するといかにも怪しい題目ばかりだ。評価も低い。その中から評価がこの中でも、まともな忍者についての情報を金貨2枚で買った。


 内容は、取得条件は載ってなかったが、下忍になった時のスキル構成が載っていた。まあまあかな。


 ついでなので魔法(聖)の情報も金貨3枚で買ったがゴミだった。どこそこの誰誰ちゃんが取得してるから聞いてみればとか、課金して出るまでガチャしろと書かれていた。もちろん評価は最低にしておいた。



 スキル屋に戻って来た。



「あれ、どうしたんですか? 忘れ物ですか?」


「格闘、軽業が欲しい」



 先程の情報にあったスキル構成で自分になかったスキルだ。



「うーんと、金貨100枚になりますね」



 ストレージから取り出し支払う。



「毎度ありーです。はい。くじ引き券でーす」



 くじ引き券を五枚貰った。



「今度この王都で開かれるオークションの事は知ってます?」


「聞いてる。結構な掘り出し物が出るみたいだね」


「出ますけど落札するのは難しいですよ。この国以外からも多くのお金持ちが来ますからね。じゃなくて、オークションの当日にくじ引き所が仮で出るそうですよ」


「そうなんだ……俺って運無いからな……」


「にーに」


「ミャ~」



 ニーニャとさくらに慰められてしまった。いかんなこれでは。


 くじ引き券ってそんなに持ってないんだよな。お得意様になると貰えるらしいが、NPCがやってるお店じゃないと貰えないんだよ。NPCの店って言うと穴熊親父の山小屋か六三亭くらい、お店と言うより宿と飲食店だ。



 時間もあるのでオーロラの所にでも行ってみるか。



「どう最近?」


「はい。順調な伸び率でございます」


「客室稼働数も平均90%を示しています」


「オメガ様との協議の上、まだ伸びるようですので新たなホテルの建設を予定しています」



 オーロラとアリーナ、エリーナと話をしている。



「凄いね。迷宮の方はどう?」


「迷宮に関しては伸び率は良くありません」


「ですが、リゾートが順調な伸びなので問題ないかと」


「リゾートに来る方達だけで迷宮レベルが上がっています」


「油断は禁物だよ」



 愛多ければ憎しみもまた多し、これだけ人が集まり繁盛してれば、その反面妬む者も多くなる。



「忘れちゃいけない。ここは反魔王クラークの拠点だと言う事を。蒼流神殿の防備は万全を期しておかないと、何かあってからでは遅いからな。ふたり居るのだから交互にリゾートと迷宮の担当をして穴を埋めていくんだ」


「「「承知しました」」」


「船の方はどうなってる?」


「はい。イーリルで海運商会を三つ程買収し、さくら商会を立ち上げました」


「船も大型船を手配済みです。乗組員も買収した商会の者達を雇い入れました」


「護衛の件も我々の眷属から雇い入れています。夜間は幽霊船ゴーストシップ海中にボーンシーサーペントが付きますので安心かと」



 こちらの準備は順調なようだ。



「魔王クラークの方はどうなっている?」


「現在は小康状態です」


「海竜王派と手を組んだ事により、魔王クラーク勢を押し返している状況です」


「ダゴン様が助勢してくださってる事が大きいかと思われます」


「海竜王派の監視と、それ以外の勢力の取り込みを強化するんだ」


「海竜王派の監視ですか?」


「そうだ。奴らは敵ではないが、味方でもない。正直何をしでかすかわからない。海竜王が目覚める迄は目を離していけない」


「「「承知しました」」」



 話も済んだのでビーチの方に来た。ニーニャとさくらは砂遊びをしている。


 ビーチは大盛況。この世界は娯楽が少ない、だから暇を潰せる楽しい所に人は集まる。どこも同じだ飲み屋、花街、賭博、考える事は一緒。そしてその甘い蜜を吸おうとする奴らがいる事も。


 現にここにも闇ギルドが入って来ようとしている。全てオメガ達によって処分されているようだが……。


 最近ではこの国の行政機関から税金を払えと来ているそうだ。ダンジョンに税金を払えとは世も末だな。他のダンジョンマスターはどうしているのだろうか。そもそもダンジョンマスターっているのか? 必ずしも知的なモンスターが居るとは限らないだろう。どんな仕組みでどんな目的であるのだろうか。ゲームだから、と言われればそれまでだがな。


 砂遊びに飽きたさくらとニーニャを連れてカクテルバーに向かう。


 カクテルバーも大盛況のようだ。あれからプレイヤーにカクテルパフォーマンスができる人を、各クランに募集を掛けたら数名来てくれる事になり講師役になってもらえた。


 ハイドール達なので一度覚えれば後はそこから応用させ、今に至る。なかなかのものだと思っている。


 さくらとニーニャにジュースを頼み、自分はブルームーンを頼む。美味い。


 昼時だったのでビーチに連立するちょっと高めのレストランで、パエリアみたいなのをニーニャと食べた。ニーニャはエビが気に入ったようで、剥いてやるとすぐになくなる。


 午後からはイノセントハーツの砦に行こう。


 弟子ふたりがどうなったかも知りたい。忘れてた訳じゃない……という事にしておこう。


 練兵場に多くの人が集まっていて、ダイチが居たので声を掛けた。



「お見合いパーティーでもやってるのか?」


「ん、ルークか。同じようなものだな。新人プレイヤー同士でパーティーを組んでる所だ」



 第五陣プレイヤーはまだ入って来たばかり、パーティーを組んでいない者も多いのでその機会を作っているらしい。


 因みにひなさん達は、ルグージュの教会前で勧誘活動中だそうだ。リアル時間だと五時間位しか経ってないのだから、まだまだプレイヤーは来るだろう。


 うちの弟子達はどうなったのかなと思いながらニーニャを抱っこしたまま人だかりを見ていると、ニーニャが人だかりに手を振り始めた。誰かがニーニャに手を振ったのだろうと思っていると、二人組が歩いて来る。弟子達だ。



「ニーニャちゃん!」



 リンネが両手を広げている。ニーニャを抱かせろとの意思表示だろうか?


 ニーニャを見るとニコニコしている。仕方ない。リンネに抱かせてやるお互いしっかりとハグしあい、それを羨ましそうにユウが見ている。



「で、どんな感じだ?」


「正式にクランに加入できた」



 そう言って青い腕輪を見せてきた。


 昨日、招待客に渡していた腕輪は赤、簡易のゲート通過用のもので他に機能はない。青い腕輪はクランに加入した者に与えられる、多機能版だ。


 イノセントハーツではもちろん、運営費の為クランに一定額を収めなくてはならない。クランに払った金額によってポイントが貰えるようになっている。そのポイントを使って各種施設の利用やアイテムなどと交換できるようになっている。


 最大の利点は死に戻りしてもポイントは減らない。最初のうちはお金をポイントに変えておけば安心と言う事だ。この砦でしか利用できないが転移ゲートのある所からなら来る事ができるし、基本的な物は揃っている。今後、生産組も増えていけば更に便利になるだろう。


 今回のクラン参加特典は実ゲーム時間十日間の間、一定施設が無料で利用できる事になっている。大浴場や簡易宿泊施設、食堂での何種類かの定食が無料なのだ。


 新人プレイヤーにとってはありがたい特典だと思う。最初は金欠だからな。



「誰か良い相手は居なかったのか?」


「居たけど、リンと話して当分は師匠と三人でやる事にした」


「師匠の居ない時は、臨時パーティー組んでくれるって言うプレイヤーもいますので」


「お前達がそれで良いなら構わないぞ。明日から行くか?」


「「お願いします」」


「じゃあ、明日の八時にルグージュの西門集合な」



 ニーニャを返してもらいダイチと事務所に向かった。


 事務所内はまだ、ごたついている。



「ダイチは手伝わないのか?」


「邪魔だから出てけって言われた……」



 ミウがお茶とジュースを持ってきてくれた。


 ニーニャとさくらはミウにスリスリしてお礼して、ジュースを飲んでいる。



「ミウは慣れたかな?」


「まだまだです。コリンさんのありがたみを実感してます。甘えさせてもらってたんだなぁって」


「それがわかっただけでも良い事だ。休みの日にはコリンさんの所に行ってあげると良いよ」


「でも、お邪魔じゃないでしょうか?」


「逆に寂しがってるよ。だから行ってあげて欲しい」


「わかりました。みんなと一緒には行けませんが、二人にも声を掛けておきます」


「うん。よろしく」



 金髪のスレンダーな女性が声を掛けてきた。



「あら、うちの大株主様じゃない」


「その言い方、止めてくれません。サキさん」


「だってその通りでしょう?」


「違いますよ。クランの運営には口を出さないですし、配当金も取りません。言うなれば出資者ですよ。もちろん運営に失敗すれば差し押さえはしますけどね」


「あなたって本当怖いわ。これはゲームよ。現実じゃないのよ?」


「なに甘い事言ってるんですか。現実だろうとヴァーチャルだろうと、個人の財産である事には違いはありません。そんな事では社会に出たら笑われますよ。今現実にあなたはこのクランの資産を預かってるのですからね。いかに増やすかと言う努力を怠るべきではありません」


「ルークって、実はうちの学校の講師やってない?」


「一社会人としての常識です。扱うものがお金なのか物なのか、或いは情報なのかの違いだけですよ」



 サキさんはひなさんと同じ大学の友人だが、別のパーティーを組んでいた。クラン設立を機に一緒にはやる事にしたそうだ。一応、経済学科の学生らしい。



「でもクランと言う組織で利益をあげるという事は、クランに参加してくれてる人達の負担になるわよね」


「なるなら稼ぐ方法を考えれば良いでしょう。良く言う内政チートってやつですよ。ダイチ、うさ子の野菜食べた事あるか?」


「あるぞ。めちゃくちゃ美味いな」


「この世界の飯って当たりはずれ多いと思わないか?」


「確かにそうだな。腕の違いか? 料理スキルってあるし」


「サキさんはどう思う?」


「料理の事が何か関係あるの?」


「ある。この世界の根本的な事を知らなければ意味がな」



 という事で、自分なりのこの世界にはついて語った。


 この世界の文化レベルはリアル世界と比べても、それほど低いものではない。低いどころか遥かに先を行くものさえある。そう魔法である。余りにも魔法が万能な為、科学と呼ばれる分野は遅れているが、それを補ってもなお有り余る恩恵がある。それが良いか悪いかと言われれば返答に困るが……。


 うさ子の野菜について考えてみよう。


 この世界の農家は連作障害を気にしない、土地がいくら痩せても気にしない。なぜならモンスターから取れるエナジーコアを粉末にして畑に撒くと、畑の魔力が上がり精霊が多く集まる。精霊が多く集まると土地事態が活性化して野菜の成長が良くなる。良くなるのだが、味は落ちる。土自体に栄養も無く、連作障害を無理やり育てているからだ。


 うさ子の食べる野菜を育てている農家は違う。ちゃんと休閑地を作り、肥料や土壌を管理しているから、他の農家の野菜に比べると同じ野菜と思えない程美味しいのだ。


 この世界は上下水道が完璧と言える所まで発達している。魔道具により飲み水も、排水も浄化されて流される。ゴミも同じだ。なので、動物の糞や生ごみから肥料を作るといった発想がないのだ。


 全て魔法で済ませる事ができる為、そこから次への発想がされない。便利過ぎるのだ。それに、この世界の人々の考え方や価値観の問題もあるが、ダゴン様が言っていたように新しい考えは淘汰される節がある。


 だからこそ、そこに商機があるのだよ。サキさん! わかってもらえただろうか?



「成程、でも美味しい物を食べたいとは思わないのかしら?」


「知らないんだと思う。地産地消が基本だし、物流が発達していない。していないと言うより、させていないのかもしれないけどな」


「政治色が強くなりますね。やはりそこは不味いのでしょうね」


「プレイヤーだけとなると不味いんじゃないかな。プレイヤーが居ないと成り立たないならやる意味も半減だし」


「ですが、ビジョンは何となく見えました。もっとこの世界を知らないと駄目ですね」


「NPCの方々と、もっと気兼ねなく話をしてみると良い。ここに良いお手本が居るじゃないか」


「俺の事か? いやー照れるなぁ」


「所構わず、女なら誰にでも声を掛け、爆散しても諦めず声を掛ける。そんなポジティブさを見習うべきだ」


「Oh……」



 ダイチ。俺は応援してるぞ。君はまだ若い、いくらでも機会はある。いつか君の性癖でも良いと言ってくれる女性が居るはずだ……確信はないが。


 さあ、さくらニーニャ行こうか。コリンさんの所に寄ってから帰ろう。



「あらあら、ニーニャちゃんいらっしゃい」


「ばーば!」



 ニーニャはコリンさんに両手を広げている。コリンさんに抱っこしてほしいのだろう。コリンさんにニーニャを預ける。



「ばーばぁ」


「まあまあ、どうしたのかしらね」



 ニーニャが自分には見せた事がない程の甘えっぷり。ちょっとジェラシーが……。ニーニャにとっては俺やレイアとは、また違った愛情を与えてくれる大事な人なのだろう。


 ニーニャを引き取ってから、実の母親であるケイトさんの情報を集めてはみたが大した情報は得られなかった。


 王都に来たのは亡くなる少し前で、知り合いなどは居なかったようだ。依頼をこなす時はニーニャをギルドに預けていた事からもわかる。仲が良かったのは全滅したパーティーなので、話を聞く事ができない。泊まっていた宿の主人にも話を聞いたが何もわからなかった。持ち物を見たが品が良いと言う以外何も出てこない。もしかしたら良い所のお嬢さんだったのかもしれない。もちろん憶測だけど。


 ケイトさんがニーニャを愛していたのはニーニャの性格や態度からも明らかだ。只、ニーニャが愛情に飢えていたのも、今の姿を見ると明らかである。


 コリンさんはその愛情の飢えを埋めてくれる人なのだろう。



「ばーばぁ」


「なに? ニーニャちゃん」


「ばーば、だいしゅきぃ」


「あらあら、ばーばも大好きよ」



 羨ましい程にラブラブである。さくら愛してるよー。さくらをハグする。



「ミャ~」


「しゃくらも、だいしゅきぃ」


「ミャ~」



 ニーニャにさくらまで奪われてしまった。が、順番的に次は自分の番だよな?


 しかし待てど暮らせどお声が掛からない。自分だけ蚊帳の外ですか……。



「にーに?」



 良いんだ、良いんだよ。ニーニャがそばに居てくれるだけで幸せなんだから。


 降魔神殿に帰る時にニーニャをしっかりハグしながら帰ったよ




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る