99 ゲームの中で施工管理って……どうなのよ?

「ミウです」


「ミナです」


「ミオです」


「「「よろしくお願いします!」」」



 そういえば名前聞いてなかったな。三人共元気一杯で良い子そうだ。


 レイアにこの子達の着替えや日用品の買出しをお願いしたら、コリンさんも一緒に行く事になった。自分とニーニャとうさ子とペン太はお留守番、さくらは荷物持ちでついて行った。



「お前ら、いつもここに来てるのか?」


「キュー」


「クェー」


「コリンさんに迷惑掛けてないよな?」


「キュー」


「クェー」


「なら良い」



 ニーニャがうさ子にしがみついて、うさ子の耳をテシテシしている。ワンピースのスカートから見える尻尾が物凄い勢いで左右に振られてる。そんなにうさ子の耳は興味深いのかな? ペン太はニーニャの尻尾が気になるらしく動く尻尾と一緒に首を左右に振っている。


 のんびりした時間を過ごす。後数時間でログアウトだ。三日なんてあっという間。次にこの世界にくるのはおよそ一週間後になる。もう少し何とかならないものかね、運営さん。一日がリアルの四時間位が丁度良いような気がする。今度運営にメール送っておこう。


 いつの間にかニーニャは自分の横に来て眠っていた。ストレージ内から毛布を出し掛けてやる。ペン太もソファーに登って来てニーニャの横で寝始めた。うさ子はいつも通りポリポリ何かを食べている。あぁ、何か眠たくなってきた……。


 笑い声が聞こえている。どうやら眠ってしまったみたいだ。ソファーには既に誰も居ない。



「起きました? ルーク」


「あぁ。ごめん眠ってた」


「良いんです。私達が帰ってきた時、みんなお昼寝中でしたから」



 その後はコリンさんのお茶をご馳走になってから降魔神殿に帰った。





 それからはログイン、ログアウトを何度も繰り返しリアルでひと月半程経とうとしている。


 明日からシルバーウィークで、五連休なのである。ついでに明日は『infinity world』に第五陣プレイヤーが入って来る日でもある。イベントも盛り沢山であるのだ。



 昨日までやってきた事は、ほぼ砦の補修工事の施工管理だった。


 日中の間に人魚族を使って水魔法で掃除、防壁部分も徹底的に水圧を掛けて汚れを落とした。その後に土魔法の使える者達で、防壁の補修、練兵場の地ならし。


 商業ギルドから詳細見積書ができたと言うので確認。あら探しをして説明を要求。答えられなければカット、修正させるの繰り返し、疲れた……。


 施工が始まれば、工期の確認に施工内容の確認、カメラなんて無いので自分の目で確かめるしかない。何度も施工を中止させやり直させる。この世界の職人は適当過ぎ。


 ちょっと目を離すと、最初に話した施工内容と違う事を始める。何故、最初に言った事と違う事をするのかと聞けば、こちらの方が簡単だからと答える。そりゃそうだろう、本来使うはずの材料の半分も使っていない。完全な施工不良である。


 己を知って他を知らぬなんて言うけど、実はこの世界はこれが普通なんて事があったりするのかも。だとしてもギルドの人間を呼びつけ、現状を見せてお前らは詐欺師なのかと怒鳴りつける。


 自分は毎日来れないので、ハイドール二体を召喚して図面と違う事したらそこに赤丸付けろと指示していた。


 ログインする度、図面には赤丸だらけ……図面と現地を確認してギルド職員に怒鳴るの繰り返し。唯一の癒しはさくらとニーニャをハグする事だけ。レイアはハグさせてくれないし、孤児院の方が忙しく夜しか会えない。夜は夜でニーニャが早く寝るので必然的にレイアも早く寝る。正直、寂しい。


 なのでレベル上げどころか、未だに王都の外にすら出ていない始末。ダイチとデルタ相手に毎晩、酒を飲んでた。


 その苦労も今日まで、補修も全て終わり、今夜オールが魔道具を設置すれば完了。


 砦のできも素晴らしく、防壁の防御力は通常の二倍、二倍。五百人が普通に生活できる環境を整え、大浴場も男女完備。砦の門の内側両脇に簡易の宿泊施設まで用意した。余り人の来る所じゃないけど用意する事にこした事はないと思う。


 位置的には死者の都から馬車で三時間程北になる。ノインスまでは馬車で南に丸一日位だろうか。


 まだノインスには行ったことが無い。これを機に行ってみたいな。ルグージュからノインス間のエリアボスも倒してない。珊瑚に囲まれし島の迷宮もクリアしてない。王都の先も行ってない。ないないだらけだな。一度レイアと話をしよう。


 そのレイアと言えば、新しい孤児院の建設、運営にプレイヤーに協力している。更紗さんからNPCで信用できる人が居ないゕ相談された時、その場に居たレイアが自分から立候補した。


 孤児院の運営は国やギルドを完全に排除し、運営費はプレイヤーの大小のクランに各都市の商人からの寄付で運営される。本当は商人も入れたくなかったらしいが、大きくなった子供達の働き口の斡旋等の為に運営事態に関与しない事を条件に認めたそうだ。


 今はまだ王都とルグージュだが、他の都市にも早急に作るらしい

 。


 ちなみにここで一番活躍したのはカーちゃんである。孤児院施設の運営に係るNPCを雇う時に、カーちゃんの固有スキル【真実の瞳】が役に立った。なかなか凄いスキルで人の言った事の真偽をおおよそだが見分ける事ができるのだ。面接の時に同席させて合図を決めてやれば完璧な面接官の出来上がり。これにより良い人材が多く揃ったと言っていた。



 日が落ちたのでオールと砦に向かった。


 イノセントハーツのお披露目は明日の夜する事になっている。



「準備は良いかのう」


「えぇ、お願いします」



 魔道具を設置する場所は最重要機密だ。通常では出入りできない隠し部屋に作った。部屋の中央の台座にオールが闇のオーブを加工して作った魔道具を設置する。



「魔王様お願いしますのう」


「ミャー」



 さくらが魔道具に魔力を注入する。原理はクリスタルと同じだそうだ。一度起動させれば、砦内に居る人々から漏れている魔力を吸収し動き続け、余分な分は貯めておかれる。


 では何故、さくらが起動したかと言えば、念には念を入れて、この魔道具のスイッチ役になって貰ったのだ。もし仮にこの場所に侵入されても、さくら以外に魔道具を切る事ができない仕組みにしたのだ。


 転移ゲートもリセット済み、これでこの砦に出入りできるのはここにいる者だけになった。


 あすの夜は俺が招待客を転移で連れて来る事になる。もちろんイノセントハーツのメンバーもだ。


 明日は忙しくなりそうだな。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る