79 シルバーソードの罠
夜も明けきらぬ朝方から既に二回出撃している。
西門前の出丸はモンスターでひしめき合ってるので、昨日のように大部隊ど正面から戦うができない。
作戦本部は五人パーティーを五つでひとつの小隊に編成して、側面からのゲリラ戦に切り替えた。あくまでもHit & Awayの作戦で二、三度攻撃したら撤収である。モンスターの注意を引き過ぎ、戦局が広がらない注意が必要だ。
そして本日、三度目の出撃中。
パーティーメンバーは毎回変わるので名前を知らない。やることは一緒なので気にしない。気配察知と気配遮断を持つ自分がこの小隊の斥候役で、索敵の後小隊長と打ち合わせをしてきてからパーティーに戻ってきた。
メンバーにハンドサインで攻撃準備を伝え、モンスター達の方に向き返り装備を変えようとした時、胸から剣が生えていた……。
なんだこれは? と思った時には、後ろの二人に両腕を掴まれ地面に押さえつけられ何度も剣で刺される。うさ子は? 四人の最後のひとりにけん制されていた。
チッ、シルバーソードの連中やってくれたな。斥候に出ていた為音が出ないように、装備を外していたのが不味かった。初の死に戻りがPKとは……程なくHPがゼロになった。
気付けば、初めてゲームを始めた時に居た教会の前に居る。
「死に戻りか? どこの小隊だ?」
「すみません! すぐに人を集めてください! PKが死に戻りして来ると思います!」
「本当か? わかった。おい、お前。人を呼んで来い」
「わかった」
あの場所にはうさ子が居る。必ず仕留めるはずだ。頼むぞ、うさ子姐さん!
すぐに一人目のPKが現れ、ここに居たプレイヤーで押さえつけロープで縛りつける。応援も来て、二人目、三人目と現れ拘束する。ゲーム内の衛兵も来てPKの引き渡しを要求してきたが、こちらで調べる事があると断った。衛兵さんは成り行きを見て判断すると言い、PKから離れるつもりはないようだ。
四人目も拘束したので、PKを連れて作戦本部に向かった。既に報告が行っていたようで多くのプレイヤーが集まっている。その中にはもちろん、シルバーソードの連中もいた。
「何があった。PKと聞いたが。お前が
セイさんが言う通り、この状況だとどっちがどっちなのか微妙だな。
「戦闘開始直前に後ろからブスっと、
「じゃあ、こいつらは誰に
「自分のテイムモンスターですよ」
「ルーク。それはおかしくないか、君が死に戻った時点でテイムモンスターも消えるはずだぞ」
チッ、一番出てきて欲しくない時に更紗さんが出てきたよ。何とか誤魔化せると良いけど……。
「うさ子はレア種族で、主人の許可があれば特殊固有スキルで単独行動ができるのです」
「私、見たことあるよ。あのウサギちゃんたまに子猫ちゃん頭に乗せて街の中歩いてるよ」
「そういえば、見たことあるな。ゲートからあのウサギだけ出てきて、びっくりしたことあるぜ」
ナイスアシストです、みなさん。ですがあの子達、そんな事してたのね。まさか教壇からクマ……もとい、瓢箪から駒が出るとは……。
「前から思っていたが、君のテイムした子達はレアどころかユニークだね。フフ……」
「更紗……こんな時に冗談はいらないんだよ」
今の冗談だったんですか! ユニークと愉快か成程! 座布団一枚!
「そんな事より、こいつら誰か知ってる人いませんか。鑑定したんですが、名前が見え隠れするするんで、隠蔽スキル持ちみたいなんです」
「二番目の奴、シルバーソードの奴だぞ。見た事ある」
「そういえば、そっちのもじゃね」
「こいつもそうだ」
「って、全員。シルバーソードじゃねぇかよ」
やはりそうか。まあ、それ以外考えられないけどな。
「どう言う事なのか説明してくれるんだろうな。ケイン」
「何を言ってるんだい。セイ。我々には預かり知らない事だね。いちいち個人のPKの事まで知る訳ないだろ。本人達に聞けよ」
「どうなんだ。お前達」
「あいつがウザいから
「お前らもか」
「「「……」」」
最初から打ち合わせ済みだったと言う事か。それならそれで考えがある。
「衛兵さん。ちょっと良いですか」
「ん? なんだ」
「あのですね……をですね……して……する事は可能ですか?」
「可能と言えば可能だが、それができるのかと言う事と人としてどうなのかなと思うぞ。私は」
「人殺しするような奴に、同情は必要ですか?」
「……」
セイさん達が話をしてる間に衛兵さんとちょっとだけ話をして確認を取る。
「ルーク。残念だが。これ以上は無理だな」
「構いませんよ。こいつらに懸賞金を掛ける事にしました」
「どう言う意味だ?」
「衛兵さんに確認したら裁判を受けさせないで、懸賞金を掛けて放逐しても良いそうです。お金が続く限り。という事でこいつらひとりにつき、金貨十枚の懸賞金を掛けます。見かけたら
「おい、聞いたかよ。金貨十枚だってよ」
「四人やれば四十枚だぜ」
「十人でやっても四枚手に入る。充分じゃね」
「ふ、ふざけるな! ハッタリだろそんな事!」
普通そう思うよな。でも、普通じゃなければ問題無い。
「お前ら言っとくが、一回で済むと思うなよ。ガレディア居るー」
「お前と言う奴は……で、なんだ」
「今日中に金貨四百枚そっちに持って行くから、すぐに受理してー」
「ハァ……レミカに言っとくよ」
「「「「……」」」」
声も出ないとはこう言う事を指すんだろう。だがこんな雑魚には興味はない。
「どうだろうか。君達? 司法取引しないかい?」
「どう言う意味だ?」
「君達が本当の事を喋れば、懸賞金を取り下げても良いよ」
「なっ! それは誘導尋問だろう!」
「黙れよ。何に対しての誘導尋問なんだ? ここに居る全員で聞いて判断してもらおうじゃないか。なぁ、えせ勇者様」
「ぐぬっ」
「で、誰に言われた?」
「「「……」」」
「影清さんに言われた……」
「おまっ……喋るんじゃねぇよ」
「こいつをやれば幹部にしてくれるって……」
「お前も裏切るのかよ!」
「そいつとそいつの仲間を
「……」
周りが静寂に包まれる。と言うかドン引き。
「ちょ、ちょっと待て、これは陰謀だ! 俺をひがんでるお前達の! そ、そうだ影清が勝手にやった事だ。俺には関係ない! そ、そいつらと影清はシルバーソードから除名する。これでわかったろう。俺には関係ないって」
「トカゲの尻尾切りかよ……」
誰ともなく、聞こえた最後の言葉が全てを語っている。哀れなのは、この場に居ないのに全てをかぶせられた影清だな。
だが、許す気はないので懸賞金を影清に掛ける事を、ここに居るプレイヤーに言う。
安らかに逝ってくれ。心折れるまで何度もな。
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