72 プレイヤーとNPC
情報ギルドに来ている。毎度の如くガレディアを呼び出した。
「ハァ……もう良い。もう何も言うまい。それで何の用だ?」
「なんか疲れてないか? いつもの覇気がないぞ」
「だ~れ~の~せ~い~でこうなってると思っている!」
「それ、この前も言ったけど、俺達のせいじゃないからな」
「だが、間接的には関わっているだろう」
「ぐぬぬ。仕方ないな。と、言う事でプレイヤー達の代表連れてきた」
「な~に!? 何故、それを先に言わん!」
「いや、このお約束のやりとりも、ガレディアとのラショナルインティマシーの構築が目的であり、エモーショナルエクサティシャンを誘発させ……」
「もう良い! 黙れ!」
「やだなぁ、ガレディア。怒ってばかりいると、しわが増えるぞ」
「ぐぬっ。もう、お前に用はない。か、え、れ!」
ガレディアをおちょくるのもこのくらいにして、こちらの用も済んだし帰るか。
「じゃっ! そう言う事で後はお任せで」
「お、おい、ルーク。まさか帰るつもりかよ」
「あっ! そうそうフレンド申請出しとくんでよろしくです」
さあ、面倒事に巻き込まれる前に退散しよう。
「あれで良かったのですか?」
「俺達が残っても不評を買うだけだからね」
「どうしてですか?」
「知名度の差、実力の差、カリスマの差、色々ある。それに俺達にはさくらが居るから表舞台には立ちたくない」
「目立つと不味いのでしょうか?」
「そうだね。どこに誰の目があるかわからない。今の状況で国なんかと喧嘩しても勝ち目が無い。人類の敵だなんて言われて狙われでもしたら目も当てられない。力を付ける迄は目立たないようにした方が良い」
「ミャ~」
「さくらちゃん。頑張って立派な魔王になりましょうね!」
「ミャッ!」
レイア……それも、ちょっと違うような気がするぞ。
夜迄はまだ時間もあるので、こんちゃんの所に来ている。自分とレイアの挨拶も早々にモフモフに突入。
「何か大変な事になってるみたいですね。師匠もギルドの会議に行っちゃいました」
うさ子やペン太、しまいにはさくらまで奪われる。
「生産組は参加するの」
「半々ですかねぇ。もちろん私はパスですよ。戦闘スキル持って無いので」
「NPCの方達はどうなのかな?」
「どうでしょうねぇ。うちの師匠は
「アハハ……あの人なら問題なく即戦力だよ」
そろそろモフモフに満足したようなので、買い取りを頼んだ。
「また見た事がない素材が入ってますね。ハァ……」
「今回の迷宮の奥から沸いたモンスターからドロップした素材だよ」
「また時間もらえますか」
「構わないよ。それからこんちゃんの修業って、いつ終わるの」
「どうしたんです、急に」
せっかくなので、駄目もとでスカウトしてみようと思う。
「実はさぁ。知り合いに舞姫ってのがいるんだけど、今忙しくて誰かの手が借りたいって言っててね。こんちゃんどうかなぁって」
「舞姫ってあの舞姫ですか!」
「どの舞姫なのかはわからないけど。変な関西弁の人だよ」
「その人です。すごく人気のあったゲームで超有名人だった人なんですけど、『infinity world』に移ったって凄い騒がれたんですよ」
「へぇ。あの人そんな有名人だったんだ。今、死者の都で武器防具屋やってるよ」
「そうなんですね。もうお店持ってるんですね。すごいなぁ」
「あそこ、今格安で店舗の貸し出ししてるから、こんちゃんでも大丈夫だと思うけど。もし、やる気があるなら投資しても良いよ」
「本当ですか! 心が少しグラッと傾きましたよ」
「もし、行く気になったら連絡頂戴。力になるから」
「はい。その時はお願いします」
取り敢えず、こんな所だろう。無理強いするつもりはないので、後は彼女次第。来て欲しいけどな。
そろそろ、日も落ちてきたのでうさ子とペン太を降魔神殿に帰した。レイアと夕食を取る事にしたので、穴熊親父の山小屋に来ている。
「なんだお前達、うちは飯屋じゃないぞ。たくぅ」
なんやかんや言っても、マクモンさんはレイアには甘い。
「マクモン兄さん。私も手伝います」
あらら、レイアが宿の夕食の手伝いを始めてしまった。こうなると俺だけ座っている訳にもいかないので、手伝いする羽目になった。二時間程で宿に泊まっているお客さん全ての夕食が済んだ。
残念ながら俺達の分が残らず、マクモンさんの奥さんのナフシーが六三亭に行く許可を出してくれたので六三亭に行って夕食にする事になった。
「どうしてうさ子ちゃんを連れてこないのよ。もう……。お久しぶりね、レイアちゃんゆっくりしていってね。次来るときはちゃんとうさ子ちゃん連れてくるのよ。わかった!」
「へいへい。俺も客のひとりだぞ」
「なんか言った!」
「Oh、ノーマム!」
取り敢えず、駆け込み一杯。エールでかんぱーい! レイアはジュースでだ。
マクモンさんともモンスターの氾濫の事を話した。
「俺もばーちゃんと同じだ。逃げる気は無い」
「まあ、マクモンさんなら充分、その顔だけでモンスターが逃げ出しますよ」
「フフ……兄さんならそうかもしれないわね」
「お前ら、俺をなんだと思ってるんだね」
「「クマ」」
「レイアまで酷いなぁ。おい」
そうこうしていると見知ったプレイヤー達が店に入ってきた。
「あっ! ルークてめえ、勝手に帰りやがって」
「仲介役の君が帰るのは問題だぞ」
「まあまあ、座って、座って。女将さーん。こっちエールちょうだーい」
「セイさんも更紗さんも、ガレディア様達とのお話は終わったのですか?」
「今日の所は、だがな」
「明日、領主や他のギルドの幹部達との会議をする事になった」
まあ、繋ぎはつけたし後はそっちで頑張ってもらおう。
「向こうはどうするのですか?」
「残念ながら、有志で頑張ってもらう事になるな。リアルで忙しい人もいるからどうしようも無いが、少しでも減らせるなら減らしたいからね」
「だが、決戦の日は人を集める。現状で四千程が確定していて、二千程が保留状態だ。後はその他のプレイヤーとNPC側からどれ位来るかだ」
「王都の軍はやっぱり無理なんですかね」
「兵士は無理だそうだ。宮廷魔術師や魔法兵団は来るかも、と言う程度だそうだ」
「国境の砦に千人程兵が居るみたいなんだが、動かすとオール帝国が必ず動くというので、当てにできないと言われたよ」
「結構、厳しい……のかな?」
「過去の話を聞く限り、短期決戦は無いな。プレイヤー全員で一撃入れた後は、籠城戦で削っていく事になるだろう。来るか来ないかわからない援軍を期待してだがな」
「土日だから時間は充分にある。少しでもプレイヤーに参加してもらうように働き掛けるしかないな」
最悪、街全体でハイボールとジン……もとい、背水の陣を敷く可能性もある訳だ。そうならない為にも、アンデット軍団は必須になってくる。今夜の説得がカギになりそうだ。
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