71 クラン【ウィズダムグリント】
「で、どうすんだ。予定通りで良いのかよ」
「シルバーソード次第だろうな」
予定通り? これから何かあるのか? 迷宮の中に入るのは無理だろうか?
「これから何かするのですか?」
「あん? あぁ威力偵察ってやつだ。今後の事もあるしな。で、誰が音頭とるんだ? ケインは勘弁だぞ」
「セイがすれば良いではないか。君なら誰も文句は言うまい」
「えぇー、俺かよ。俺ニートじゃねぇから、ログインできるの夜だけだぞ」
「頭さえ決めておけば、通常時は問題ないだろう。問題なのはシルバーソードのような奴らが勝手な事をする事だ。おそらくNPCも関わってくるからな」
「でもようー。あみゅーあたりでダメか?」
「あの娘、脳筋だから無理だな」
どうやら、この人達がプレイヤー側のまとめ役になるみたいだな。あの馬鹿どもに頭を抑えられる前に、この人達に協力した方が得策だろう。
「あのう、良かったらNPC側の代表のひとりと話をしませんか?」
「ほう。ルークの知り合いか?」
「俺達にはこの街にコネが無いからな。渡りに船だな」
「その為にも、その威力偵察に参加させてもらえませんか?」
「更紗。どの程度なんだ?」
「すまない。知り合いではあるが、一緒に戦った事はないんだ」
「うーん。じゃあ俺達と一緒に行くか?」
「セイと一緒なら安心だし問題ないな」
トッププレイヤーと一緒に行けるなら大船で酔ったよう……もとい、大船に乗ったようなものだ。
「「よろしくお願いします」」
「ミャー」
「キュー」
「クェー」
「このちみっこ子達も一緒か?」
「あぁ、可愛いだろう。うちのクランに勧誘したんだが断られてね。残念だよ」
「いや、そう言う意味じゃないんだが……」
威力偵察は三つのグループでおこなうそうで、ウィズダムグリント、シルバーソード、シャングリラとそれ以外で分かれる事になり、自分達はウィズダムグリントのニンエイさんと言う方のパーティーに入れてもらう。
いつものようにうさ子とペン太は人気ものだ。それに加えて今回はレイアにも男どもが群がっている。
「おい、ルーク。あの
「元ギルドの受付嬢です」
「マジかよ! どうやって口説いたんだ? NPCを仲間にできるのは知ってたが、大抵、むさいオヤジ達だぜ。ギルドの受付嬢は反則だろよ。うちのクランの受付に来てくんねぇかなぁ」
「すみませんが、他の娘探してください。大事なパーメンなんで」
「ほう。それだけか?」
「な、何ですか。そ、それだけですよ」
「まあ、そう言う事にしといてやろう」
「セイ。そろそろ行くわよ」
「おう。ニンエイ、了解だ」
ウィズダムグリントが最初のようだ。その後にシルバーソードが続いて入って来る。
迷宮に入ると、モンスターだらけになっていた。前にやったトレインを思い出す。やったら怒られるだろうな。
「よし。最初に俺達のパーティーが一撃入れる。その後スイッチしてニンエイ達が攻撃。これの繰り返しだ。わかったな」
「了解だ」
セイさんのパーティーの魔術師が、魔法(土)の全体攻撃魔法ストーンシャワーを使った。モンスター達の頭上から石つぶてが降り注ぎ、その隙にセイさんと戦士風の二人がモンスター達に近づきアーツを放つ。このアーツも全体攻撃のようで、モンスター達が吹き飛んで行く。因みにセイさんは直剣の二刀流だ。二刀流スキル、男のロマンだな。
「流石。トッププレイヤーだ。すごいの一言だな」
「そうですね。私もあんな風になれるのかしら」
レイアは、今の状態でも充分あのレベルに達してると思うよ……。
「関心をしてる場合ではないぞ。そろそろスイッチするぞ」
「スイッチ後の一発目は自分達にやらせてくれませか?」
「ほう。あれを見たうえで、自信があるんだろうな」
「無理言って参加させた頂いたのですから、少しは役に立ちますよ」
「良いだろう。最初の一撃は君達に任せる。その後私達が追撃する」
「自分が魔法を唱えたら、すみませんが目を瞑ってください。レイアはあれを頼む。うさ子はニンエイさん達と一緒に追撃な。さくらは適宜、魔法で攻撃よろ」
「わかりました」
「キュッ!」
「ミャッ!」
「クェッ!」
ペン太はおとなしく、うさ子のリュックに居なさい。あぶないからね。
「準備いいか! スイッチ!」
セイさんの掛け声に合わせスイッチする。
「フラッシュバースト!」
普段は声を出さないが、即席パーティーなのでみんなに聞こえるように唱える。モンスター達の前で強烈なフラッシュ効果が起きて、モンスター達の視界を奪う。
「アローレイン!」
フラッシュバーストに続いてレイアのアーツが発動し、矢の嵐がモンスターを襲う。矢の嵐が収まるとそこには数える程のモンスターしか残っていない。
俺も追撃に出るか? と思ったが、やめておく。残ったモンスターはフラッシュバーストの効果で暗闇状態になっていて、既にうさ子が動いていた事から行くだけ無駄だろう。
「レイア。ナイスアタック」
「ルークが敵の動きを止めてくれたおかげです」
「なにをしている! まだ戦闘は終わっ……って。あら?」
「ニンエイ。ウサギっ子が最後のモンスターを仕留め終わったぞ……」
「……」
うさ子がいつものように何事もなかった如く、悠然と歩いて戻って来る。
「うさ子。ご苦労さん」
「キュー」
「お前らいったい何者だよ……」
そこにシルバーソードの連中が入ってきた。
「流石だな、セイ。トップスリーの一角だけの事はある。既にあれだけ居たモンスターを倒しているとはな。見たか屑どもこれが攻略組の実力だ。お前ら如きがかなう相手ではない事がわかっただろう。ハッハッハッ!」
「あー、はいはい。頭の悪いお子ちゃまは黙りまちょうねぇ。また怖いGMさんが来まちゅよ」
「き、貴様! 言わせておけば!」
「やめろ! ふたりともいい加減にしろ!」
「「……」」
ケインとか言ったか、ムカつく野郎だな。セイさんがやめろと言うからやめるんだからな。いつかぜってぇボコボコにしてやる。
「ふん。私達シルバーソードは先に進ませてもらうぞ。貴様などに構っていられんのでね」
「さっさと行って。死に戻れエセ勇者!」
「貴様という奴は……」
「ルーク! ケインお前もいちいち挑発に乗るな!」
「チッ、行くぞ!」
「ルーク。お前PKの的にされるぞ。あいつはそう言う事を平気でやる男だぞ」
「望む所だ。ああ言う奴は絶対に表だっては行動しないない。だが、必ず表に引きずり出して本性晒してやる。俺達に喧嘩売った事後悔させてやるよ」
「お前、それが素か? 結構怖奴だな。だが気を付けろ。本当に何するかわからん奴だ。実際に黒い噂があるからな。何かあれば手は貸すぞ」
「ありがとうございます。そうなった時は遠慮なく声をかけますので」
この後、実際にシルバーソードの連中が死に戻った事により。威力偵察が中止され監視のパーティーと護衛のパーティーを残して、一旦ルグージュに戻る事になった。
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