66 レイアの初陣

 ログインした。


 さくらとのスキンシップをしながらソファーに座る。前よりフカフカで座り心地の良いソファーだ。アルファがクリスタルから配置したのかな。



「おはようございます。ルーク」


「おはよう。レイア」



 訓練が終わった後のお風呂上がりだろうか? 妙に色っぽい。



「訓練は順調?」


「はい。ですが、オメガさんには全く相手にされていません」


「アハハ……俺もそうだよ。実戦はまだだろう。今日行ってみる?」


「はい。行きたいです」


「ルグージュの西の森にある迷宮に行ってみようか」


「はい」



 その前に、みんなで朝食を取る。朝食後、うさ子が自分に紙切れをピラピラさせて渡してきた。なんだろう? くじ引き券が五枚ほどある。



「うさ子、これどうした?」


「お嬢様がルーク様が居ない間に、レイア様とご一緒にお買い物に行かれた際に頂いたそうでございます」


「野菜おばさんか……確かに好感度MAXだな。うさ子がお金払ったのか?」


「キュッ!」


「レイア様がお嬢様にお渡ししたそうでございます」


「それは盲点だった。ごめんな、気がつかなかった」



 さくらとうさ子に金貨五枚と銀貨十枚を渡した。ぺん太は持ち歩けないからさくらかうさ子に奢ってもらいなさい。



「ミャー」


「キュー」


「くぇ~」


「レイア、悪かったね。いくらかかった」


「気にしないでください。いつも出してもらってばかりいるので、たまには出させてください」


「済まない。ハンターの報酬は自由にして良いからね。後、足りない時はオメガに言えば出してくれるから」


「そ、そんなに使う事ありませんので大丈夫です」



 遠慮する事ないのにな、資金は豊富にある。あるのだけどオール達には乗るより担げ……もとい、祈るより稼げと言ってある。まぁレイアは別格だからね、良いのだ。



 クリスタルの部屋でオメガに実戦用の装備を用意するよう頼んだ。


 銀色のブレストアーマーに細かい目のチェインメイル、サークレット、装飾のされたレイピアに宝石が埋め込まれた弓、指輪と白いブーツとウエストポーチを渡された。見るからに普通じゃないのがわかるよ。オメガくん。


 ミスリルブレストアーマーとミスリルチェインメイルは、ミスリル製のアーマーなので魔法使いでも装備できる防具。重ね着が可能なので各々防御力が高いのに更に防御力がUPする。


 エニグマチックサークレット 防御力も高いが、稀に何かしらの付与を与えてくれるみたいだ。


 ウインドルーンレイピア 風属性付きのレイピア、固有アーツ【ウインドスラスト】がある。


 友愛の弓 エルダートレントから授けられた枝から作られた弓。周りに木があるほど攻撃力とクリティカル率が上昇する。


 静音のブーツ 足音が静かになる。これ俺も欲しい。


 ルーンリング 魔法の指輪、杖がなくても魔法が安定して使えるようになる。


 最後のウエストポーチは空間拡張がされている品物で、矢筒を入れておくように用意したもの、1メートル四方位の大きさにらしい。


 どこの姫騎士様ですか……オメガくんやりすぎじゃない。オメガが言うにはこれでも選んだそうで、更に上のランクの装備もあるそうだ。レイアも綺麗な顔を引きつらせている。


 まあ準備は済んだから行きますか。


 ゲートでルグージュに行き西の門を出る。今日の衛兵さんは何も言わず、すぐに通してくれた。目指す西の森の迷宮は半日程歩いた場所にある。街道を歩いたせいか、うさ子のせいかはわからないが、一度もエンカウントしないで目的地に着いてしまった。



「街の外は危険だと聞いていましたが、余りモンスターは居ないのですね」


「いやいや、たまたまだから。勘違いしちゃ駄目だから」


「そうなのですか? わかりました」



 レイアは素直で良いね。


 取り敢えず、本番前にお昼にしようか。迷宮の入り口付近に敷物を敷いてお昼にする。この迷宮は人が多いと聞いていたが、未だに誰とも会っていない。既に第四陣のプレイヤー達もこの場所では狩場としては物足りなくなっているのかもしれないな。邪魔されずにやれるので助かる。



「あんた達、この迷宮に今から入るのか?」



 迷宮から出てきた一組のパーティーが声を掛けてきた。



「ええ。初心者向けの迷宮と聞いてきたので」


「この迷宮の話はギルドで聞いてきたか」


「いえ。自分はハンターじゃないので」


「生産組か……なら尚更入らない方が良いぞ」



 勝手に生産組と勘違いしてるけど、面倒なのでスルーでいく。



「何かあるのですか?」


「五日前位からボスが変わってな、雑魚の中に強力なモンスターが混ざるようになったんだ。リアルの今週末に攻略組が来る事になってる。俺達はその斥候だ」


「だからプレイヤーが居ないのですね」


「そうだ。この辺りのプレイヤーでは雑魚すら相手にならない。瞬殺だよ。悪い事は言わんから君達も他でレベル上げした方が良いぞ」


「わかりました。ありがとうございます」


「あぁ、じゃあな」



 そう言ってパーティーは転移石を使ってどこかに帰っていった。



「ルーク。どうしますか?」


「もちろんやる。初回撃破報酬が出るかもしれない。逆にラッキーだ」


「そ、そうなんですね……」


「大丈夫だって。自分はあてにできないけど、さくらとうさ子がいるから、安心してレベル上げができる。自分もスキルレベル上げするつもり」


「ミャッ!」


「キュッ!」


「フフフ……みんなよろしくね」



 という事で迷宮に入ってみますか。


 うさ子と自分が前衛でレイアが後衛。うさ子は基本静観してもらい、自分とレイアが捌ききれない場合に参戦。さくらはレイアの白うさマントのフードの中で待機。ぺん太は定位置のうさ子のリュックの中。


 本来なら自分が斥候役になって索敵なのだが、今日はレベル上げなのでサーチアンドデストロイで良いだろう。さぁ、経験値よ出て来いや!


 最初に出てきたのは、自分の嫌いなワーカーアント。後ろにひと回り大きなソルジャーアントなるものも居る。



「レイアは後ろのでかいのけん制して」


「わかりました」



 自分はワーカーアント三匹を相手にしよう。


 精霊王の腕輪を使ってみる。自分の周りに三つの光の玉が浮かんできた。得意属性が光なので光の精霊なのだろう。ふわふわと自分の体にまとわり着く感じで、なんかくすぐったい。


 試しに攻撃しないで守りだけお願いと心の中で念じると、『是』という可愛らしい感じの思いが伝わってきた。やはり、やりとりができるようだ。


 さぁ、オメガとの訓練で新しいスタイルの攻撃方法を練習してきた成果をみせてやろう。


 スキル【内功】により全身に気を巡らせる。両手両足に硬気功を張り、蟻供にダッシュ。ほんの一瞬で10メートルを詰め、手前に居たワーカーアントの頭を殴る。風船を割ったように頭が消し飛ぶ。流石にワーカーアントではオーバーキルのようだ。


 隣のワーカーアントも蹴りの一撃で消える。更に残りのもう一体に攻撃しようとしたが、レイアの矢が頭に刺さり消えていく。あれ? ソルジャーアントはどうなった?



「けん制のつもりで放った矢で、倒れてしまいました」


「……」



 どんだけだよ。オメガくん、やっぱりやりすぎじゃないか?


 みんなの所に戻ると自分の周りに居た光の精霊たちは、レイアとうさ子の周りにまとわりついている。闇属性が得意なさくらには全く近寄らない。



「ミャッ!」



 さくらがレイアに近寄る光の精霊に肉球パンチを喰らわせようと必死な姿は、癒されるねぇ。


 それにしても、レイアのファーストバトルが自分と違い無事終了して良かった。


 このまま順調にいって欲しいものだ。


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