63 魔法屋のばあさんとレイアとテンプレ

 始めてハンターギルドに言った時は、ひどい目にあった。今回はそんな事が起きない事を祈りたい。



「ルークは何故、ハンターギルドに入れないのですか」



 レイアが聞いてきたが、レイアの銀髪が太陽に反射して本物の銀糸のように輝きもともとの美しさもあり、その神々しさに見とれてしまっていた。



「ルーク、聞いてますか」


「あっ、ご、ごめん聞いてなかった」


「もう、どうしてもハンターにならないのですか」


「うーん。職業ってあるよね。レイアは職業って何かついてる」


「ギルド員がついています」



 そんな職業あるんだ。NPC専用かな。



「職業がつくとステータスに補正が入るよね。四つの値に十づつ補正が入る職業って聞いた事ある? 守秘義務とかあるだろうから。ある、ないで良いよ」


「ありません」


「おそらくはレア職業なんだと思うけど『旅人』って職業を持っている。これがハンターになると消えるみたいなんだ」


「『旅人』ですか。初めて聞きました」


「能力が良くてね。Jobセット中はフィールド上にてHP回復速度上昇(小)、スタミナ減少軽減(小)、空腹度減少軽減(小)の補正も入るんだなこれが。消すのもったいないでしょう?」


「はい。取得条件はわからないのですか」


「おおよそではってところかな。確信はない位で良ければ思い当たる事は幾つかある」


「そうだったんですね。残念です。一緒にハンターになりたかった」


「大丈夫。ちゃんと手伝うから」


「あの……そういう意味じゃないのですが(ルークさんのバカ……)」


「ん、何か言った?」



 何故か、さくらに肉球パンチされている。うさ子も人の足蹴るなよ。



「くぇ~」



 な、なんなんだよ、そろいもそろって……ギルドの中に入るぞ。


 流石、王都のギルド、一階フロアだけでルグージュのギルドが入ってしまうのではないだろうか。


 レイアだけ受付に向かい、俺とさくら達は併設されている食堂に向かう食堂の席に着くと、ウエイトレスさんがやって来た。



「可愛い子達ですね。ご注文はお決まりですか?」



 と聞いてきたが、メニューはどこにも見当たらない。そんな様子を見て気付いたのか



「ギルドの食堂にメニューは無いのよ。こんなのが食べたいで良いのよ」


「そうなんですか、初めてなんで知りませんでした」


「あら、お兄さん。ハンターじゃないの」


「えぇ、悠久の旅人です」


「お兄さん、面白いね。それで何にする?」


「お茶とミルクふたつに野菜ジュース。あとクッキーみたいのがあればお願いします」


「わかったわ。少し待っててね。フフ……」



 お昼には時間が早いせいか、店内は閑散としている。ギルドの方もそれほど人はいない。一番、ハンターが少ない時間帯にきたらしいな。


 少し待ってるとウエイトレスさんが頼んだ物を持ってきた。何故かひとつコップが多い。そして自分達がいる場所の空いてる席に座る。



「丁度、休憩時間なの」



 どうやら、モフモフが目当てのようだ。さくら用の皿にミルクを少し入れてさくらの前に置くと、チロチロと飲み始めた。ぺん太はそのままくちばしをコップに突っ込んで飲む。うさ子も短い手を器用に使って飲んでいる。



「触っても良いかな」


「この子は人見知りするんで無理ですが、そっちの子達は大丈夫ですよ」



 言うか言わないかという一瞬のうちにうさ子に抱きついたよ、この人。


 さくらがびっくりして自分にしがみつく。うさ子は抱きつかれようがモフモフされようが平常運転で野菜ジュースを飲んでいる。流石、うさ子姐さん。


 当分この状態は終わらないと思い、ハンターギルドにどんな依頼があるか見てみようと思い、さくらと依頼が掲示されている所に行ってみた。


 凄い量だな。王都内での雑用からモンスターの討伐依頼まで、これ全部捌けるのだろうか。中に死者の都と珊瑚に囲まれし島のモンスター分布調査もある。レイアに受けてもらおうか。楽勝だからな。


 俺以外にもなんパーティーか依頼を見ている方々がいる。プレイヤーのようで、今から依頼を受けるのだろう。などと思っているとギルドの受付の方が騒がしくなっている。どうやらお約束が発生したようだ。レイアが五人組の男に絡まれている。


 フフ……ここで颯爽と助けに入れば自分の株が上がる。男たちのレベルも自分より低い、これは朝、見にこい……もとい、浅みに鯉状態では!


 一歩踏み出そうした時、自分の目の前を疾風が通りすぎ去る。


 レイアに絡んでいた男達が、床に這いつくばってピクピクしているではないか……その横では天に右手の人差し指を掲げたうさ子が居る。お、俺の見せ場が持ってかれた!? ガクッ……うさ子さん。



「ギルド内でのハンター同士の争いは厳罰ですよ!」



 受付の奥にいた女性が叫んでいる。理不尽な言いぐさだな。一言言わねば。



「すまないが、俺達はハンターじゃないんで適用外だ。そもそもこうなる前にギルド側が止めろよ」



 一旦、ウエイトレスさんがいる所に行き代金を払い、ぺん太をリュックに入れてレイアの所に移動してうさ子の頭を撫でてやる。



「登録終わったの」


「はい。終わりました。後、初級の技能講習を受けるように言われました」


「それは、受けなくても良いと思う。必要なら後日でお願い」


「わかりました」


「じゃあ、行こっか」


「行っても良いのでしょうか……」



 良いのです。まだギルド職員がワーワー言ってるが、気にしない。非はこちらに無い。それに、さっきも言ったが、うさ子も俺もハンターじゃない。これ以上面倒事に巻き込まれる前に、さっさとギルドを出た。こう言うイベントは願い下げだ。



 時間は少し早いがお昼にしよう。本当はギルドの食堂で食べようと思っていたが予定変更。


 スキル屋のある裏路地にあった食堂に入り食事をする事にした。自分とレイアはおすすめ定食、さくらとぺん太に焼き魚を、うさ子に野菜サラダを頼んだ。


 おすすめ定食は煮込みシチューにちょっとしたサラダにパン、良く煮込まれておりフォークで簡単にほぐれるくらい柔らく煮込まれていた。パンをつけて食べると最高だった。焼き魚は川魚の干物でさくらもぺん太も満足そう。うさ子の方は可もなく不可もなくだたようだ。十分に合格点が出せる店だった。


 食事も終わり、スキル屋に行く前に魔法屋に最初に寄る。



「なんだい、またあんたかい。何度見ても変わらないよ」


「今日は、彼女を見てもらいに来た」


「ふん。突っ立てないで、こっちにおいで」


「は、はい。お願いします」



 魔女ばあさんは何故かじっとレイアを見ている。あまりの美人に驚いたか?



「子猫といい、この娘といい。ヘンな客ばかりつれて来るねぇ」



 こんな可愛いさくらと、こんな綺麗なレイアをヘンなとは失礼なバァバ……バンッ! 後ろで何かが壊れるた音がした。何度も言うがその杖をこっちに向けるんじゃない!



「だ、大丈夫ですか」


「心配要らないよ。良からぬ事を考えたバカ者に対する警告だよ」



 やはり、この魔女ばあさん人の心を読んでいる……何者だ?



「しがない魔女だよ。聖、風、土が得意属性だね。闇以外は適正属性だ。流石、ゾディアックの一族だね」


「ど、どうしてそれを!?」



 レイアが何か慌てているな。知られると不味い物なのだろうか? ゾディアックの一族が何か知らないけど、実はパーティー画面で見ると種族固有スキルにゾディアックブレイブというのがある事は知っていた。魔女ばあさんもこれを見たんだろう。見られると困るスキルであれば、隠蔽スキルも必要になってくるな。


 俺が考え事をしているうちに、なんかこっちを置いてけぼりにして話が進んでいる。



「成程、あ奴らの娘か、どうりでな」


「おばあさんはもしかして……」


「私はしがない魔女だよ」


「……」



 それ以上は何も話してくれないので、代金を払い店を出た。



「ルークは何も聞かないんですね……」


「ゾディアックの事?」


「はい……」


「うーん。今更でゴメンだけど。パーティー組んだ時点でレイアのステータス見えちゃうんだよね」


「えぇーえっ! じゃあ知ってたんですか?」


「ゾディアックが何か知らないけど、ゾディアックブレイブの事なら知ってた。ゴメン」


「聞かないのですか」


「話したくなったら話してくれれば良いと思う」


「……わかりました」



 スキル屋の扉を開る。



「いらっしゃいませー。どんなスキルが必要ですか!」



 今日も魔女っ子は元気一杯のようだ。



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