64 魔女っ子のお得意様になる

 元気一杯の魔女っ子は俺達に気付いたようで



「あっ、こないだのお兄さんにうさちゃん達だ」


「こんにちは、今日は貯金をおろしてきたから大丈夫だよ」


「本当ですか……じゃあ、何にします?」


「その前に質問して良いかな」


「なんでも聞いてください!」


「こちらの彼女も資格あるかな」


「はい。ありますよ」



 ビンゴ。前にGMがうさ子はNPC扱いになると言ってたので、パーティーにレイアも入れればスキルを買えるのではと思っていたのだ。



「魔法(聖)はあるかな」


「お兄さん、ごめんね。魔法(聖)は中級スキルだから買えないよ」


「マジっすか……いっぱい買うからまけてちょうだい!」


「ごめんなさい。でもねいっぱい買ってくれるなら、良い事教えてあげる。魔法の中級スキルはね、大抵初級の魔法スキルから発生するんだよ」


「ふむ。進化じゃなくて発生って事は条件があるのかな?」


「うん。誰でも発生する訳じゃないよ。得意不得意もあるしね」



 成程、となると必然的に魔法(聖)は魔法(光)からの発生だろう。条件は情報ギルドで調べて見るか。



「うさ子は魔法スキル欲しいか」



 うさ子は少し首をかしげてからコクンと頷く。



「となると、魔法スキルの闇、光、火、土、水、風がふたつかな」


「お、お兄さん。本当に大丈夫? 全部で七つだから金貨四百九十枚だよ」


「問題ないな。こないだの俺とは違うのだよ。今回はパトロン付きだからな。ワッハッハ!」


「お兄さんも苦労してるんだね。そんな歳で体売っちゃうなんて……」



 いやいや、この子は何か勘違いしてると思うぞ。それとも腐女子の類か? ヘンな本の読み過ぎは危険だぞ。良い大人になれなくなるからな。まぁ何を言っても、牛に対して琴を弾ずだろうから敢えて何も言わない。


 後はレイアのスキルを考えないとな。この後、レイアと魔女っ子を交えて検討した。


 結果、弓術、体力UP、回避力UP、集中力UP、魔法発動短縮、気配察知、隠蔽。自分用に回避力UPで金貨二百七十枚。



「合計で七百六十枚になります?」


「あってるよ。じゃあこれ。頑張って数えてね」


「うにゅにゅ~」


「はい。うさ子はこれね。さくらはこの三枚だよ。これは自分の。残りはレイアね」


「キュッ!」


「ミャッ!」


「本当に良いのでしょうか……」


 各々、スキルを追加した。大幅な戦力UPになるだろう。課題だった遠距離攻撃にレイアが加わった事によりだいぶバランスが良くなるはず。後、レイアが魔法(聖)を覚えれば回復も充実する事だろう。


 他にも欲しいスキルがあったが中級スキルの為買えなかった。



「確かに受け取りました。今回、お兄さんいっぱい買ってくれたから、これサービスね」



 魔女っ子は紙切れ十枚を寄こした。くじ引き券と書いてある。



「それはね。店主と仲良くなると偶に貰えるの。どこかにあるくじ引き所でくじが引けるんだよ」


「それどこにあるのかな?」


「わかんなーい。それから、もう一つおまけね。迷宮を七つクリアすると中級スキルが買える資格が貰えるらしいよ」


「七つか、厳しいな。でも情報ありがとう」


「どういたしまして。お兄さんには頑張ってもらって、またいっぱい買ってもらわないといけないからね」


「ハハハ……頑張ります」



 スキル屋を出て、大通り沿いの喫茶店でお茶を飲んでいる。



「武器防具類は降魔神殿にもあるからそれを見てから決めようか」


「あのう……本当に良いのでしょうか。何から何まで」


「気にしないで良いと思う。言い方が悪いけどこれは先行投資だから」


「先行投資ですか」


「レイアがパーティーに入ってくれるとバランスが良くなる。うちのパーティーに入ってもらう条件が厳しいでしょう。だからその厳しい所を補てんする意味で先行投資すると考えれば良いんだよ」


「私、頑張ります!」


「明日からまた当分の間来れなくなるから、その間は自由にしてくれて良いから」


「みゃ~」


「ごめんな。さくら」


「ルークの居ない間は、私がさくらちゃんと一緒に居るので安心してください」


「ミャー」


「うん。よろしくお願い」



 転移ゲートの場所まで来てレイア以外は降魔神殿に帰した。


 レイアに王都のゲートの登録をしてもらい、ルグージュに俺の転移で飛ぶ。同じように登録してもらい、ついでなので港街イーリルと蒼流神殿にも飛んで登録を済ます。


 せっかくなので、蒼流神殿でオーロラ達にレイアを紹介しといた。休息日にレイアを連れて、皆でまた泳ぎにこよう。レイアにも水着を買ってあげないとな、さぞかし目の保養になる事だろう。ぐふふ……。


 楽しみが増えたな。リゾートサイコー。



 妄想はさておき、降魔神殿に戻る。オメガにレイアの事を頼まないといけない。本音は任せたくない。レイアが危ない扉を開いてしまったら……それはそれで良いかもな? うむ。


 とにかく、オメガに事情を説明しよう。



「承知しました。ですが私の訓練は厳しですのでご覚悟を」


「望む所です」


「レイアに合う武器、防具はないかな?」


「そうでございますね。実戦用と訓練用を用意すべきかと」



 オメガが言うには、強い武器や防具を装備して訓練するとスキルレベルが上がり難くなると言っている。なので訓練では身の丈の装備にして、実際の戦闘の時はそれ用の装備にした方が良いという事らしい。


 うーん。俺の時、何故それを言わなかったのかな? オメガくん。



「ルーク様の時は、相手が倒す事が不可能と思われる程の格上でしたので、問題ないと判断しました。実際、装備されてた盾が一撃で粉砕されましてございます」



 そ、それわかってたんなら最初に言ってほしかった……盾が天に召されたじゃないか。



「それで装備はあるのか?」


「実戦用はご用意できるかと。練習用は最近、死者の都に新しく武器防具屋ができたと報告を受けておりますので、そちらでご購入された方がよろしいかと」


「そういえば、オールがそんな事言ってたな、おそらくプレイヤーだろう。行ってみる」



 レイアを伴って迷宮のセーフティーエリアにやって来た。この前来た時より更に発展してるのが見てとれる。



「これが、迷宮の中なのですか……」


「確かに迷宮の中だけど、ここはセーフティーエリアになっていてモンスターは出てこないようにしてある」


「それを管理してるのが、オメガさんなのですね」


「自分がいつでもここに居れれば俺がやっても良いのだけど、無理だし面倒なので任せてる」


「でもどうして、迷宮の中に街なのですか」


「ツヴァイスは別としてどこの迷宮も交通が不便だろう。だからハンターは長く迷宮に居られない。なら長く居てもらうにはどうするか? 彼らに長く探索するのに、必要なものを揃えれば良いと考えた訳」


「それで街ですか」


「もうすぐ、ハンターギルドの出張所もできるみたいだし、駅馬車も通るようになる。そうなれば、更に人が集まる」


「人が集まれば魔力が集まる訳ですね。でもその分さくらちゃんが危険になるのではないですか?」


「対策はしてある。まず、さくらの居る場所までこれる奴は居ない。居るとすれば、本物の勇者ぐらいかな。それにちゃんと退路も作ってるから」


「さっきの蒼流神殿ですか」


「そうだよ。あそこみたいな場所を複数作っておけば、ひとつくらい失っても問題ないしね。まぁ、そうならないようにするつもりだけど」


「私もお手伝いします!」


「よろしくね」



 レイアと話をしてるうちに新しくできた店についた。


『食い倒れ屋』武器防具屋と聞いていたが、何かの間違いだったみたいだな。それとも他にも店があるのだろうか。


 取り敢えず、美味しそうな物でもあれば買って行こう。粉もんがあれば良いな。



「いらっしゃい! サービスしまっせ!」



 怪しい大阪弁で声をかけてきたのは、ルグージュで会った舞姫でした。



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