55 反魔王クラーク勢力

 結局、あのふたりはなにしに出て来たんだろう。面白かったから良いけど。まぁ、あのふたりがいなくても決着つきそうだけどな。


 サハギンキングはいつの間にか、見る影もなくボロボロ状態、左手も無くなっている。対して、こちらの英霊は後二体残っている。


 残りの二体はうさ子と同じ姿の白黒コンビ。


 うさ子が白黒コンビに目で合図を送ると白黒コンビがサハギンキングにダッシュで距離を詰める。既に水の塊も無くなっており、打つ手なしの状態で片手でガードしようとしている。が、そこに無情にも黒うさのアッパーカットが決まり宙を舞い、いつの間にか上空にジャンプしていた白うさが渾身のオーバーヘッドキックで地面方向に蹴りつける。


 最後の最後に美味し所を持っていくのはうさ子の様で、全身に炎を纏い落ちてきたサハギンキングに左手ストレートのメガトンパンチか炸裂した。


 ジ・エンド。


 サハギンキングは一言も発する事もなく消えていった。


 白黒コンビはメジャーリーガーの様に片腕をぶつけあってお互いに健闘を称えあう。うさ子もそれに加わる。まさか! うさ子のリアクションはコイツらから教わってるのか?


 キングの消えたサハギン軍団は蜘蛛の子を散らすかの様に居なくなった。はえーよ! まだ、言う事あったのにさぁ。



「うさ子、ご苦労さん」


「キュッ!」



 どや顔というより、まだまだだねって感じ。うさ子姐さんハンパねっす。後でたっぷりご褒美にブラッシングしてあげましょう。アルファがね。


 うさ子がストレージに何か送ってくる。サハギンキングのドロップアイテムの様だ。後で確認しよう。



「当初の予定と違いますが、こうなった以上仕方ない。今後の事を話合いましょうか」


「お、終わったのでしょうか」


「あー、逆に始めちゃった? のかな」


「「「……」」」




 取り敢えず、クリスタルの場所に戻ってきた。



「ルーク様、お見事な宣戦布告でございました」



 その冷ややかな目で見るのはやめろ。オメガ。わかってる、わかってるよ。やっちまったなーって事は。



「それでこれからどうするので」


「どうするのでって、ここまでやったらやれる事はひとつしか無い」


「全面戦争ですか」


「事が飛び過ぎ。オメガ。はーい説明会開くんで主要メンバー集まってー」



 うちのメンバーに人魚族からオーロラとクリスタルを任せるアリーナとエリーナ、オーロラ、二人はオーロラの娘らしい。そして、人魚族の戦士長と爺やが席に着く。


 当初の予定と今の状況の違いを説明した。穏便に済ませ、名前だけ第十三魔王を出すはずがサハギンキングの登場によりそれができなくなり、どうせ宣戦布告になるなら少しでも相手の勢力を削っておく、井戸を掘るなら水が出るまでである。



「こうなった以上、早急に反クラーク勢力を立ち上げなければならない。今まで手を組んできた勢力をこちら側に引き込むしかない」


「どの様にでしょうか」


「人魚族の回復を待って、他勢力へ援軍を送って貸しを作ってもらう」


「我々に血を流せと言うのか!」



 人魚族の戦士長が気色ばんで言ってきた。



「人魚族は恩義も知らないのか。誰が今回お前達を助けた。俺達にお前らを助ける義理など無かったんだぞ」


「くっ……」


「承知しました。援軍の件は我々人魚族がお受け致します」


おさ……」


「助けた種族にも恩を着せて、他の種族の援軍に行く様に説得を頼む。もちろん、第十三魔王の名前を出して良い」


「ルーク様、第十三魔王様のネームバリューを出すのは裏目に出るのではございませんか」


「オメガの言いたい事はわかるが、今回は大義名分があるから隠さず言った方が良い。我々は侵略では無く、逆にクラークと言う魔王により侵略を受けている種族を助けるという名分がある」


「詭弁ですな」


「下策を打ったお前に言われたくないな。誰のせいでこうなっている。何度も言うがお前らが滅んでもどうでも良いんだよ、勘違いするな」


「……」


「向こうの魔王の勢力を追い払った後に代表を集め、反クラーク勢力を立ち揚げ相互協力できる体制を作る。何か質問は」


「無所属の勢力は兎も角、海竜王側の勢力が従うでしょうか」


「従う事はないかも知れないが、協力はするはずだ」


「理由をお聞かせ頂いても宜しいでしょうか」



 オーロラの娘のアリーナとか言ったけ、美人だな。正真正銘のマーメイドプリンセス、まだクラスチェンジしてないけどな。



「海竜王が目覚めるのが近いからだ」


「目覚めが近いなら逆に、こちらに手を貸さないのではないのですか」



 エリーナだっけか、こちらも美人だ。見た目おっとりの癒し系。



「近いと言うだけでいつ目覚めるかわかっていない以上、彼らは何もできない。海竜王派は海竜王がいて始めて機能する組織と俺はみている」


「何故ですか」


「現状を見てみろ。魔王が勢力拡大してるのに何も手を打ってない。いや、打てないんだよ。余りにも巨大なカリスマが居るせいで二番手、三番手が育っていないからこうなる。海竜王が目覚めれば全て上手くいくってな」


「尚更、手を貸してくれない様な気がするのですが」


「じゃあ海竜王が目覚めるまでやらっれぱなしでいると思うか? 奴らにだってこざかしい知恵を使う者だっている。敵の敵は味方ってな。味方と言いつつ利用する気満々のやつらが」


「……」


「それに利用されるのですか?」



 どうもこの子達は柔軟性に欠けるなぁ。



「海竜王派と手を組むのは反勢力を作り相手をけん制する事にある。海竜王が目覚めるまでの繋ぎでしかない。本当は海竜王派の雑魚には興味がないんだ。本当に手を組むのは海竜王とだ」


「海竜王様とですか?」


「他の魔王達の事は知らないが、第十三魔王であるさくらは支配や権力に興味がない。只、障害になるであろう他の魔王は邪魔だから勢力を削いでいるだけ」


「ミャー」


「海竜王と話がつけば、そのまま反勢力を引き取ってもらう予定だ」


「我々はどうなるのでしょうか」


「好きにすれば良いさ。成り行きでこうなっただけだしな」


「ミャッ!」



 さくらの頭を撫でながら、そうなれば良いなと考える。


 現実はそんなに簡単にはいかないだろう。




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